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アンナの旅  作者: mega
30/61

招待

 会議が終わって、就寝の時です。

アンナは「もう終わり。終わりだから一緒に寝ましょ」

そういって、トリーのベッドに潜り込んできます。

トリーはこういう所は昔のアンナ様と変わらないのですがと思っていると

と突然「アルク大公、メーセン宰相の招待には、トリーもついてきてね」

と無邪気に言いだします。

また爆弾が落ちてきました。


「わたしはまだ聖女でもありませんし、競技会のただの付き添いですから」と尻込みしますが

「ダメダメ、トリーが行かないと話にならないから」

「ですが」

トリーは尻込みしますが

「駄目、命令よ」

容赦しません。

「ハイ」

としかたなくトリーは答えます。トリーの主人はアンナなのですから

「悪いようにしないから」 アンナはまだトリーをこき使うつもりのようです。

「あーーそれから近いうちに聖女昇格試験をうけてもらいます」

2発目の爆弾が落ちてきました。

「えーーーまだ見習いになって10日くらいじゃありませんか」

「期間は能力と関係ナシ、トリーがなにをやったか覚えているでしょ」

「ハイ」

その声は心なしか弱々しくか細い返事です。

鬼教官が動き出しています。


トリーはベッドで仰向けで、これからどうなるのかしらと天井を見上げいますが

その隣ではそれだけ言って、仕事が終わったかのように先にすやすやとアンナは寝てしまっています。

その寝顔を見て、かわいいお顔をして いつもとんでもないことをアンナ様は言われる。

嘆息しつつも(ついていきます。ついていきますとも)と思いながら、トリーも寝入ってしまいました。


 そして表彰式式翌日の朝になります。

「おはようございます」

「朝食の準備ができております」その呼ぶ声に、ベルとノルとサンディは、身支度を整えてから食堂に行きます。

アンナとトリーは、すでにテーブルについて待っていました。

「みなさん、今日は早いですね」

とベルは眠たそうな疲れた声で挨拶しました。

「ちょっと早く起きちゃったから」

アンナは少し照れた感じで答えます。

そういう いつもの朝の会話をしながら聖女達で朝食を始めていると、クロノ司祭がやってきます。

その手にはいっぱいの手紙がありました。


「皆さん、大変申し訳ない。昨日の話が予想以上でして、もう私一人では対応できません」

「これはまだ一部なのですが、招待状が届き始めています」

「皆さんにも手伝っていただきたいのです」

「特にアンナ様には、最優先で片付けなければならないのがあります」

「メラノ侯爵よりの招待状です」


 アンナがその手紙をあけると、メラノ邸に聖女様一行は来て欲しいとのことなのです。

王様の招待や二大巨頭の招待ともなると、この東地区宿舎はただの宿泊設備なので、設備も人手も不足しており、全面的にメラノ家が後援支援となれば、もう旅行装束などで出してはメラノ家の名誉に関わるからです。

衣装はどうするとか、小物はいるだろう、などなど もう恥ずかしくない格好で送り出さないと

メラノ家が恥じをかきます。聖女達を磨けとメラノ家のメイド達に大号令がかかっているのです。


 東地区は3位ながらも、前回の競技会優勝者を上回る成績の聖女様は北部アルク大公は1名、

南部メーセン宰相は1名ですが、メラノ侯爵は4名の有力聖女(正確には秘密のトリーを入れると5名)を抱え込んだ事になっています。メラノ侯爵が張り切るのも当然なのです。


「メラノ様がみんなにメラノ邸に来てほしいと書かれています」

「メラノ邸はここからそんなに遠くはないですね」

「招待の為の準備をメラノ邸で行いたいということですよ」

クロノ司祭は混乱するこの状況で

「これはメラノ様のご厚意にお願いするしかないです」

「アンナ様 皆様方、よろしくお願いいたします」

と話しました。


「わかりました。」

「メラノ様のご招待に喜んでうかがわせていただきますとお伝えください」とアンナは答えます。


「ありがとうございます。これで安心しました」とホッとした顔のクロノ司祭です。

さあみんなで移動ということになりました。

メラノ侯爵はわざわざメラノ邸の玄関まで迎えにきていて、聖女達の到着を待っていました。

デント執事もメラノ家のメイド達を引き連れて大勢で出迎えています。


「メラノ様、お招きありがとうございます」とアンナは挨拶します。

「こちらこそ、急な招待に応じていただき感謝しております」メラノ侯爵は機嫌の良い顔です。

「いえ、ありがとうございます」とアンナは謝意を述べます。


つづけてデント執事が進み出て

「皆さんのお部屋は用意しております。まずお部屋にはいっていただいてその後、いまの状況を説明いたしますので 応接の間にお集まりください」


「昼食などは準備ができ次第、ご用意いたします」

「では失礼します」

デント執事はそういうと、全員をひき連れて屋敷の中に案内していきます。

アンナ達はメラノ邸の中を進んで行くと

「わー広いわね」

「こんなところでお泊まりできるなんてすごい」

さすがにメラノ侯爵邸です。前の東地区宿舎とは大きな違いです。

廊下の左右には花が飾られ、絵画がかけられ、壺などがおいてあり、調度品が並んでいます。

「あの絵は有名な画家が描いたもので、あれは有名な職人が作ったものよ」

などと聖女達は興奮しています。


アンナ達の部屋は特別室が用意されていました。

「うわぁ、すごく素敵だわ」

「ここでお泊りができるなんて夢みたい」

「ほんとうに凄いわ」

聖女達はもう大騒ぎです。トリーもその豪華さに目を丸くしています。

さて各部屋に荷物が運び込まれた後、聖女達一行は部屋にお付きのメイド達に導かれて応接の間に集まりました。

そこにはメラノ侯爵、デント執事が待っており、付き添いのクロノ司祭、ケルンもいます。

全員が着席するとメイド達がお茶とお菓子などを用意していきました。

それが終わるとまずデント執事が話し始めます。


「メラノ邸までわざわざお越しいただきありがとうございます」

「ここまでお越しいただいた理由は、ご存じの通り大きく状況が変化しております。クロノ司祭様からの相談もあり、もう王族や大貴族との対応となると、手に余る状況となっております」

「そのことはメラノ様もよくご存じであり、後援者として恥ずかしくない対応をしたいとのご意見をいだだき、この次第となったわけです」


「今回の件は望外の結果となり、続々と招待状も届いているとのことで、メラノ家の全力を挙げて後援します。聖女の皆さんは心配せず我々に任せていただきたい」

とメラノ侯爵は胸をドンと打ちやる気満々です。


「メラノ様、ご好意に感謝申し上げます」クロノ司祭はもうそう答えるしかありません。


「では今の状況について、簡単に述べさせていただきます。多数の招待状が聖女様達にとどいておりますが、まず優先すべきは両巨頭の招待です。王様からのご招待はまだ時間があるとおもいますので

まずこのお二人のご招待を済ませるべきモノと思います」


「直接のお話ではベアトリス聖女様、キラ聖女様がお会いしたいということでしたので、その他の招待状とはすこし意味が違うように感じられます」

「しかしこのお二人は大変重要な方ですので、これを差し置いて他の招待をうけることは、いかがかとおもわれるからです」

とデント執事はそこまで言ってメラノ侯爵のほうをむきます。


メラノ侯爵は、うんうんと頷きながら

「わざわざ私の所まで出向かれたわけだから、それはそうすべきであろうと思うがいかがかな」

とアンナの方を向きました。

やはりこれはアンナが絡んでいるだろうとおもっているからです。

(投石機で巨岩をぶち込んだ本人だから)


アンナはその問いに平然と

「それでよろしいとおもいます 同時には訪問できませんから、午前はアルク様へ午後はメーセン様ではいかがでしょうか」

「遅れれば、王様からの招待が来るでしょうから、急がねば、そうなりますな」

とメラノ侯爵は同意しました。


「その方向でお手配の方よろしくおねがいいたします」とアンナは答えます。

「そしてお願いがございます」

「なんですかな?」とメラノ侯爵

「招待に付き従う人数の中に、私と3聖女の他に私の付き添いとして見習い聖女のトリーと、護衛騎士としてケルンを参加させていただきたいのです」

その言葉にトリーは前夜言われていたので、やっぱりと言う顔でしたが、びっくりしたのはケルンです。

「えーーーわたくしですか!!!」

「そうです。あの話がでるでしょうから、来てもらいたいのです」とアンナは命令します。

「あの話というのは、例の弓の聖女(女神)の件ですな」

とメラノ侯爵は答えます。

「はい、あの話が間違って広まっていますので、弓を射たのはこのケルンです。間違いなく話がでるでしょうから」

ついにアンナはケルンの上にも爆弾を落としました。





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