表彰式
表彰式が始まります。
まず進行係が開会を告げます。
「これより競技会の表彰式を執り行います」
まず聖女達が、進行係に導かれて、控え室より聖女席の所まで誘導されます。
聖女様達は開会式と同様の正式な聖女の服装をしています。
開会式の時と同様に北部は黒色、東部は青色、西部は白色、南部は赤色のリボンを胸につけています。
全員がそろったところで、聖女達は次の王族の入場を迎えるために、席の前で立っています。
その準備が整ったところで儀式の進行係が大きな声で告げます。
「国王陛下ご夫妻が入場されます」
其の声で、会場にはピリッとした空気が流れます。
待っていた貴族達も話をやめ、玉座の方を注視していきます。
そして王様と王妃をはじめ王族の面々が、護衛騎士などを引き連れて入場し着席しました。
進行係はその着席を確認して
「聖女様着席ください」と告げます。
その声をきいて聖女達は着席しました。着席を確認したところで進行係より
「今より今回の競技会の成績の発表と競技の結果について説明を行います」
「順位について、一位 北部地区代表ベアトリス聖女様」
その声を聞いて ベアトリス聖女が立ち上がります。
北部地区の貴族達より大きな拍手があがります。
王より目録が下げ渡されます。
「二位 南部地区代表キラ聖女様」
キラ聖女が立ち上がります。
同じく南部地区の貴族達も負けじと拍手します。
おなじく二位の目録が送られます。
「三位 東部地区代表アンナ聖女様」
アンナ聖女が立ち上がります。
同じく三位の目録が送られます。
メラノ侯爵達もがんばって拍手をしてくれましたが、やはり上位2地区に劣るのは しかたありません。
「四位 西部地区 代表カリーナ聖女様」
カリーナ聖女が立ち上がります。
最下位だったのでやはり拍手はまばらでした。
四位の目録が送られます。
それが終わると進行係より
「次に競技会の結果について説明いたします」
「今回の競技会において、最終日の競技審査を完了終了されたのは、北部、南部、東部の代表聖女様
3名でした。」
「この3名の順位をもって、各地区の順位と致しました」
と審査内容を発表します。
「特にこの3名の方につきましては、王様より直々のお言葉をいただけるとのことです」
「3名の聖女様、王様の前にお進みください」
進行係に促されて、ベアトリス聖女、キラ聖女、アンナ聖女が王の前に進み立ちます。
王はこの3名を前にして
「今回は遠くより各地区を代表する聖女達がここに集まることができ、そして今回の競技会においては 優秀な成績を上げられ、注目すべき聖女が3名も出たことは、王国において望外の喜びとなったことを皆に知らせたいと思う」
(前回の競技会においては、最終まで完遂出来た聖女は無く、もっと低レベルの競技会であったためです。)
続けて王は
「この結果をについては、私の曾祖母であるマルゴット大皇太后が、この3名に是非とも会いたいとの
話がでているので、用意をするので必ず合ってもらいたい」
この言葉を聞いていた傍聴の貴族達より「おーーー」と言う声が聞こえてきます。
この大きなどよめきが湧き上がったのは理由があります。
このマルゴット大皇太后は、もう引退したが聖女でもあり、この王国の中興の大聖女とも言われている人物で100歳を超える長寿者であります。
さすがにこの年では身体も弱り寝込むことが多いと言われ、公の席に出ることは長年なかったのです。
彼女の出身は聖女ではあったが貴族などではなかったのです。
しかしそのたぐいまれない力によって、当時の王太子を助け、結ばれたと言われています。
当時はこの王国は弱小の小さな王国に過ぎなかったのです。
それらの困難を王太子と共に切り抜け、ここまで作り上げた立役者でもあります。
その二人の冒険は、伝説のように伝えられているのです。
またこの聖女システムをここまで作り上げた人物でもあり、それ故大聖女とも言われています。
もはや長年その聖女の力を見る人は無く、また伝えられるその力は伝説のように言われています。
またその異常なほどの長寿により、夫であった王、その息子の王、その孫の王すらも今は亡く
彼女の存在は、その近親者であるひ孫の王のみ知るという状態でありました。
この時代の寿命は短く、この年齢はある意味化け物クラスと言って良いでしょう。
しかし多くの侍女達にかしずかれてはいても、それを知る人はすでに亡く、一人で長い年月を
暮らしてきた寂しい存在でもあったのです。
続けて王は閉会の言葉を述べます。
「今回の競技会では素晴らしい結果を見せてもらえたと思う。今回参加の聖女様はじめ、多くの関係者ご苦労であった。今後もより一層の向上をお願いしたい」
その言葉が終わると進行係より
「以上をもちまして、表彰会を閉会いたします」
「まず国王陛下が退場されます」
その言葉とともに国王一族が退場していきます。
「次に聖女様が退場されます」
その声とともに聖女達は傍聴の貴族達の拍手に送られるなか
各地域の控え室に下がっていきました。
これで散会となったわけですが、残された貴族達の話題はもっぱらマルゴッド大皇太后の件です。
まだ生きていたのか、とか、会えるくらいの体調なのか、いままで聞いたことが無いなど
表彰会後の一番の話題となっていました。
表彰式が終わり東地区の控え室に下がったアンナと三聖女、そこにはトリーが待っています。
部屋にたどり着くと
「あーーー緊張した、疲れたーーー」といってサンディは椅子に座り込みます。
「でもこれで無事に終わったわ」終わってほっとした顔でベルは話します。
「でもアンナ、あの王様の最後の言葉なんだけど」と不思議そうにノルは言います。
「行かなきゃならなくなったみたい」
「でもマルゴット様と言えば、もの凄いご高齢で伝説の大聖女とも言われ、見た人はほとんど無い方ですよ」マルゴット様について知っていることをサンディは話します。
「アンナには仕事がふえちゃったですよね」ときずかうようにベルは言います。
そういう話をしていると、ノックの音がして扉をあけクロノ司祭が控え室に入ってきました。
「皆さんに伝えたい事が色々出て来ております。この場所では詳しい話ができないので、東地区宿舎でお話したいと思います」と相当困った様子です。
東地区宿舎は王城からすぐ近い所にあります。表彰式を終えて宿舎に帰り着きました。
聖女達は表彰式の正式な衣装から、普段の服装に着替えていつもの食堂に使っている部屋に、集まりました。
そこには、クロノ司祭、ケルン、そしていままで表彰式に出ていたデント執事も待っています。
アンナ、トリーとサンディ、ベル、ノルの5人が集まると早速クロノ司祭から話がはじまりました。
「聖女の皆さん表彰式ご苦労さまでした。お疲れとは思いますがお伝えしたいことが多々あります」
「いま聖女の皆さんに招待状が来だしています。続々とです」
「それどころではありません。これはデント執事様からお話ください」
「今回の一位北部アルク大公様よりの招待がご本人から直接うかがっております。それどころか二位の南部メーセン宰相様も同様に直接本人からのご招待との異例の形で来ております。正式には招待状が参るとはおもいますが、異例の招待です」
「これをデント様から聞いておおごとになったと思っています」
「招待は色々来るだろうとは思っていましたが、よりによってまさか王国の両巨頭からの招待とは」
クロノ司祭は困惑した顔で報告します。
「招待は色々来るだろうというのは、どうしてなんですか?」
とのんきな顔でベルは質問します。
その問いに
「最終日に残ったのは、3人では無く6人、その3人は三聖女の皆さんなんだ。この地点で参加16人中の上位6人に入っているんだよ」
とケルンはルーツに昨日教えてもらった事を得意げに話します。
「前回の競技会では最終日まで残った聖女はなく、その時点でもう三聖女の皆さんはそれ以上なんですよ」とクロノ司祭は説明しました。
「それに加えて両巨頭の招待状それも本人から」
「そしてトドメはあの王様の異例の招待です」
デント執事は、さらに説明を加えます。
「アンナ様だけで無く、三聖女様にやってくる招待状はもの凄いことになります」
「それはどういうことでしょうか?」とサンディはとっぽい質問してます。
「わかっているだろうけど、つまり聖女一人に婿100人の求婚ラッシュになるということだよ」
とケルンは昨日の慰労会の時の話を披露します。
「この交通整理をどうするか、デント様よろしくお願いします。としか」
「どこに出て、どこに出ないかなど順位をどう付けるかなど」
「服装はどうするかなどなど」「返信はどうするか、断り状はどうなるか」
もうクロノ司祭は、この事態に困惑しているのです。
「そちらの方はメラノ侯爵にお任せください。あるいみ張り切っておられますから」
(張り切りを通り過ぎて驚き、呆れるくらいですけど)
「全力で支援いたします」
とデント執事は請け負いました。
三聖女は気がつきました。
三人は同時にアンナの方を向いて、
(だからあのことは秘密にしておいてくれ)という別の意味に気がついたのです。
アンナは黙って用意されたお茶を飲みながら、軽くうなずきながら無言でみんなの話を聞いているだけです。
「招待状は来るだろうとはおもっていましたが、あの両巨頭はなぜ?ベアトリス聖女が、キラ聖女がそう言っているからと言っていましたが」
「東地区4人の聖女全員の招待ですから」
とクロノ司祭は、招待の説明です。
この言葉で三聖女とトリーは気がつきます。
(助けた事が関係している、バレたかも)
また三聖女とトリーは、同時にアンナの方を向きます。
アンナは、その言葉をきいていますが、無言でなにかフフフと笑っているかのようにみえました。
デント執事は全員の視線がアンナに集まっていること見て
「アンナ様はこの事態をどうされますか?」と問うのです。
「どうすると言っても、王様のご招待、アルク大公、メーセン宰相のご招待は遅らせる訳にはいかないと思います。まずこれを急いで終わらせる事が大切では?」
「それはそうです。おっしゃるとおりまず両巨頭の招待は急いでおられたので、すぐにでもやってくるとおもいます。それを終わらせる方向で用意いたしましょう」
とデント執事は、スケジュールの調整を始めました。
「ではよろしくお願い致します。メラノ侯爵様にもよろしくお伝えくださ。」
とアンナはメラノ侯爵に全てをおまかせする事を伝えました。
こういう話でこの会議はおわりました。
三聖女にはモテモテコースが待っているようです。
第二部 マルゴットの章