表彰式前
アンナはその夜手紙を書きました。
お父様お母様 ご連絡遅れました。
競技会がおわりましたのでお知らせします。
3聖女とトリーやケルンの助けもあり、東地区は3位の好成績を収めることができました。
前回より1つあがりました。
道中で思いがけないこともあり、競技会も色々な事があり手紙が遅れてごめんなさい
でも思いがけないことがあって
旅の途中でメラノ侯爵様が後援していただくことになり、クロノ司祭様もたすかりました。
メラノ様のご助力がありこの成績を上げられたと思います。
また旅の途中で、魔物におそわれたのですが、ケルンの弓で追い払い、事なきを得ました。
ひょんな事から私は弓の聖女と呼ばれるようになりました。
お姉様の具合はいかがですか、心配しております。
あ、それからトリーは旅の途中で、聖女の力があることがわかって今見習い聖女です。
でもトリーはいままでと全くかわらず、私をよく助けてくれています。
明日は表彰式で3位ということで、王様よりお言葉もいただけることになりました。
この後、お礼のなどのご挨拶に回らなければならないとはおもいますので、もうしばらく帰るのは遅れると思いますが、競技会は無事に終わりましたので、まずはご連絡と思いお手紙をお送りいたします。
みなさん身体には気をつけてくださいね
あなたのアンナより
このような手紙をしたためて、アンナはやっと長い競技会を終え就寝しました。
明日は表彰式です。
夜が明けて今日は表彰式の日です。
表彰式を祝福するかのように、朝から良い天気です。
「朝から良い天気でよかったですね」
「今日なら、気持ちよく表彰式が迎えられますね」
クロノ司祭とデント執事が話しています。
表彰式が始まります。場所は開会式と同じで
王城の玉座の間で行なわれ、一段高いところに王と王妃の席があり
開会式と同じように聖女達の席も、その御前に地区4人を一組として4地区(北、東、西、南)の
合計16人分の椅子が同じように並べられています。
まだ開会には時間があるのですが、この会を後援する貴族達はもう集まっており、
各地域ごとにかたまって談笑しています。
まず玉座より向かって右側の北部アルク大公と取り巻きの貴族達が談笑しているのです。
しかしどうも様子がおかしいのです。
「大公様、今回の優勝おめでとうございます。やはり大公様のご推薦のベアトリス聖女様が
勝ちましたな、いや大公様のお力のたまものです」
とご機嫌を伺いながら、大公を持ち上げて言っているのですが
大公の返事は
「まあ、予想通りの成績が上げられて良かったとおもう」
などといつもの大公を知る者達はその差に違和感を感じます。
「???」
普段の大公であれば、
「そうだ そうであろう、ベアトリスの前ではだれも勝てはせんわ」
ガっはっはと大笑いなどしているのが、いつもの北部アルク大公なのです。
それを見ながら、ゴマをする取り巻き貴族がへつらいの言葉を、延々と述べていると言うのがいつものパターンなのです。しかし、まったくそれが見られないのです。
やけに元気がないのです。
同じ事が玉座左側の南部メーセン宰相の取り巻き達も、同じ事を感じています。
「北部の連中、今回の一位は、なにか裏で手をまわして不正でもしていたんじゃないでしょうか
キラ聖女様とは甲乙つけがたいとの意見もありましたから」
などと宰相に行っているのですがこの不正という言葉でビクッとしてはいるのですが、流石に政治家である宰相、そのことはおくびにも出さず
「いや、この結果は決まったことであるから、一位を称えようではないか」
などとやけに愁傷なことを言っています。
じつはこの両巨頭じつは内心は、不安いっぱいなのです。
北部アルク大公
(この競技会の結果は助けられたモノだなどと、あのベアトリスなら言い出しかねない。そうなったら、この結果はもうめちゃくちゃで、それこそこれがあの宰相にでも知られると大変な事になる)
同じ様に
南部メーセン宰相も
(キラ聖女に不正があったなどと知られたら、競技会結果だけでなく、宰相の地位すらもあやうくなる、それこそあの大公にでも知られると大変になる)
二人とも同じ様な事を考えています。両巨頭いつも大きな顔をしているのですが、実は内心は小心者なのがまるわかりなのです。
それだけではなく、この二人が考えることは、
(これを知っているアンナたちの東地区聖女をなんとか今のうちに抱き込んでしまわないと マズイ)
という事で両者は期せずして、東地区後援者の中央のメラノ侯爵に向かうのです。
そして、両者はメラノ侯爵のまえでばったりあいます。
メラノ侯爵は目の前での二人の偶然の出会いで、(またまずい事が)とおもっていますと
その前で繰り広げられたのは意外な光景でした。
まず宰相から口を開き
「ベアトリス聖女一位さすがですな」と意外な言葉から始まりました。
それに対応するアルク大公
「いやいや、そなたのキラ聖女紙一重で、そちらが一位でもおかしくなかった。さすがだと思う」
など今までのこの二人からは信じられない態度です。
そして、同時にメラノ侯爵に向かうと、ほぼ一緒に「東地区の聖女皆さんを招待したい」
と言いだしたのです。
「ベアトリスが会いたい」と「キラが会いたい」などと、言っていると
メラノ侯爵は「はいはい承りました」とは答えたのですが、それだけ言うとこの二人は、自分の心を見透かされたくないかのように、自分たちのグループにさっさと帰っていきました。
残されたメラノ侯爵はこの光景に、唖然として立ちすくんでいます。
我に返ると、そこに控えていたデント執事に
「おい、なんだこの事態は?あの二人が直接やってきて、それも聖女達を招待したいなどと???」
「招待にしても、普通は招待状を送るとか、お付きの者が連絡してくるくらいのもんだ」
「ただでは終わらないとは思っておりましたが、まさかあの両巨頭がそれも直接やってきて招待とは想定外です」
「両巨頭、本来であれば3位など無視するくらいが当たり前で、相手の悪口陰口の言い合いを聞かされるのが、今までのことを考えれば普通だ、おかしい!!!おかしすぎる!!!」
「とすれば、こんなことをやらかしたのは」
驚きのメラノ侯爵のその問いに
「あのかたですね おそらく はあーーー何という」
もうわかったかのように、デント執事は嘆息するのです。
「期せずして両巨頭を引きずり込んだことになった。それも向こうから、馬鹿丁寧にそれも来てくださいなどと」とメラノ侯爵は困惑の表情です。
「なにされたんですかね」とデント執事の問いに
「オレにわかるわけないじゃないか、聞くな!!!一番近くにいたデントがわからんと言ってるくらいなんだから」
「あいつ(アンナ)は投石機で巨岩を北部と南部の城にぶち込みやがったんじゃないか?そのくらいだぞこれは」
「デント、一応アンナ聖女様がもうすぐ来るから、両巨頭から招待が合ったことを伝えといてくれ」
メラノ侯爵、いつの間にかアンナ聖女様と様付けになっています。
表彰式の準備が行われており、今回の競技会の聖女達は、控え室に集まってきています。
デントは、控え室に座っているアンナを見つけると、こっそりと近づいて、耳元で小声で他に聞こえないように「アルク大公とメーセン宰相より直々に東地区の皆さんに招待が来ております」
と伝えます。「聖女様達が会いたいからとの事で」
それを伝えると、アンナはにっこりと微笑んでうなずきます。
人目があるので、デント執事は急いで控え室をでて、メラノ侯爵のところに戻り報告しました。
「アンナ様が来られたようなので、先ほどの件を内密に伝えました」
「どうだった」とその状況をメラノ侯爵は知りたがっています。
「それが驚きもせず、ただにっこりと微笑んでうなずかれていました」
「なにか、もう全部知っているかのように見えて、ずっとその後ニコニコされていました」
「はあーーーーーー」とメラノ侯爵は嘆息して一言
「どうも我々はこの会と東の聖女達を使って色々とやって行くつもりだったのだが、どうもうまいこと転がされていたのは我々の方じゃなかったのか?」
「でもメラノ様、なにもこちらにはまずい事もなく、いや両巨頭がメラノ様に頭を下げてきてるんですそれこそ望まれていたことではありませんか」
とデント執事はメラノ侯爵をたしなめますが
「だから、ある意味面白くないというか、ありゃ魔女だぞある意味とんでもないタマだ、全部見透かされている」
「坊ちゃま、これはどうしようもありません。流れについて行くしか、これに竿をさすなんてことを
やるとろくな事にはならないものです」
「わかってる。こいつについて行くと、おいしものがボロボロ落ちてくるからな。それにしてもまったく………」
アンナは聖女として、ただ人を助けると言うことしていっただけです。
ある意味メラノ侯爵もたすけられました。
これが智慧というものでしょうか
メラノ侯爵は最後に
「あいつは人を助け、色々なものを与え、譲って損しているように見えて、最後はおいしいところは全部独り占めして、そしてだれも文句を付けられないというか、それすらも気づかせない、そんなことをやらかすやつだ!!!おそらく」
「そこまでのことは、考えすぎですよ」とデント執事はそう言ったのですが……
その様な話の中、表彰式がはじまります。




