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アンナの旅  作者: mega
2/62

トリー

 

挿絵(By みてみん)



護衛の人たちは6人いますので、3人を一組として3時間で交代です。

アンナ達は馬車の中で2人で交代するので2時間と少しくらいです。




5人で担当すると時間の短縮も出来ますし、お互い気が許せて楽だとアンナは思っているようです。

アンナとトリーが見張りの番をしています。他の3人は眠りました。外は護衛の人たちが交代でたき火の周りにいます。

焚き火の光がほのかに馬車のなかを照らしています


挿絵(By みてみん)



突然小声で「トリーはセイントのテストは受けたことがあるの?」とアンナは聞きます。

小さい頃テストは受けたようですが、女の子は一応みんな簡単なテストを受けることになっています。


「何も有りませんでしたよ」とトリーはにこやかな顔で答えました。


挿絵(By みてみん)


「ふーんそうなんだ」そういってトリーの顔をずーっとのぞき込みます。


挿絵(By みてみん)


「トリーちょっと降りてみて」とアンナは馬車のドアを開けました。


ポンと馬車を降ります。トリーもそれに続いて降ります。

お嬢様は、いつもなにかとっぴょうしもない事を時々するので、心配なのでついていきます。


近くには見張りの人達がたき火の周りに座っています。


挿絵(By みてみん)


ちょっと離れた所に、切り株があったので、二人はそこに座ります。

満天の星のもとでアンナは話しかけます。


挿絵(By みてみん)


「ところでトリー、あなたには本当の名前があります」

「なんのことですか?アンナ様」


挿絵(By みてみん)


「わたしは知ってます、あなたはセイントです」

「お嬢様、え~、ちょっと何言われてるのかわかりませんが? 」

トリーは困ったような顔です。


しばらく沈黙の時間が続きます。

(トリーは気がついていない 当然だと思うけど)


アンナは彼女の手を両手で握ります。そして少し間をおいて、言葉を紡ぎ出します。


挿絵(By みてみん)


「私には いいえ、誰の心にも女神様がおられます。女神様はいつも皆の幸せを祈っております」

「はい?!」(どういう意味なの?)


挿絵(By みてみん)


「そこで私のお願いがあります。あなたの力を貸して下さい。

あなたにしか出来ないことをして欲しいのです」

「私の力ですか?」トリーはアンナの言葉に困惑して答えるだけです。


トリーは少し考えた後でこう答えます。

「お嬢様のためなら、いくらでも協力はいたしますが」

「そう言われても何をしたらいいかわかりませんわ」

(急に突拍子も無い事をいわれますよね)


(そうですわね こんなことを言われたらね)とアンナは思います。

「では、今から言うことをしてみてください。それが第一歩になります」

アンナは不思議な事を言い始めたのですが、なんなんだろうといぶかしがりながらも、

まあお嬢様の命令だからということで、言われたことに従うことにしました。


挿絵(By みてみん)


「こんなことで良いのですか?」とトリーは不思議がっています。

「そうです、それが第一歩になります。簡単に見えますけど、大変ですよ」とアンナは

しっかりした口調で話します。

しばらくの時間 二人で何かが行われていました。


挿絵(By みてみん)


 そのうち夜がだんだんとふけて、寒くなってきました。

「もうそろそろ交代の時間なので、馬車に戻りましょう」

そう言って二人は馬車に乗り込んで、寝ることになりました。

護衛の人やケルンもいますし、その後何事も無く朝を迎えました。


挿絵(By みてみん)


第一日目はこれで終わりました。


 夜が明けて朝日が昇ってきました。

次の街はもう少しだから頑張って今日のうちに着いてしまいましょうということで、

簡単な朝食を用意して食後、急ぎ出発することになりました。


挿絵(By みてみん)


2日めは場所を交代することになり、アンナとトリーは後ろの馬車に乗り込みます。

後ろの馬車の前には御者係と護衛の人たちが乗り込み、荷台には色々な物資を積んでいます。

前は荷物で誰も居ない最後尾の所に2人は乗り込んだのです。


挿絵(By みてみん)


ガラガラと馬車の車輪が回り始めて次の町を目指して動き出しました。


挿絵(By みてみん)


そうすると早速トリーが話しかけてきました。

アンナの顔をじっと見て

「昨晩の話の事ですが、なぜ平凡な私がセイントであると言われるのですか?」


挿絵(By みてみん)


アンナはその問いに自信をもった笑顔で答えます。

「それはトリーをずっと見てきたからですよ」

その言葉に続いて、ゆっくりと答えます。


挿絵(By みてみん)


「あなたが嘘をついたと言うことを見たことがありません。」

「悪口や中傷する言葉を聞いたことがありません」

「いつもまじめに誠実な仕事をしている姿を見ています」

「むだ口を言って作業をしている姿を見たことがありませんし、

どんなことを任せても間違いがありません。」

「浮ついた話も聞いたことがありません」

「貧しく困った人が来たとき、自分の物を与えて助けてあげましたね」

「丁寧な言葉使いで、怒ったような言葉や乱暴な言葉を聞いたことがありません」


挿絵(By みてみん)



「前にこんなことがありましたね

虫が部屋に入ってきましたが、それを殺そうともせず

そっと包んで、もうはいっちゃだめよと優しい言葉を加えて外に出してやりましたね」

アンナはそう話すのです。


挿絵(By みてみん)



「それは当たり前の事じゃないんですか、そこまで褒めていただくとは恥ずかしいです」

トリーは恐縮したように答えました。

アンナは続けて話しました。


挿絵(By みてみん)


「よく見て欲しいのです。それってセイント(聖女)の姿ではありませんか?」


挿絵(By みてみん)


「昔の大賢者様は、その一番根底に必要なのが、この部分ですとおっしゃいました」

「そしてその上に積み上げるのが、昨晩言ったことなのです」

「そしてその結果あらわれるものを今から見ることになります」

アンナはトリーの目をじっと見て自信を持って話すのです。


挿絵(By みてみん)


「そうなんですか?」

「でもなにか出発してから、いままで知っているアンナ様とはまったく違う人の様に見えます。

どうされたのですか?」とトリーはアンナの話に困惑しているのです。

アンナはまたにっこりと微笑んで、なにも答えませんでした。


挿絵(By みてみん)


そしてトリーにやさしく

「昨晩話したことは、どうです できていますか」

「途切れ途切れですが、できるだけやっています」とトリーは答えるのです。


挿絵(By みてみん)


「それでいいんです。飛んでも構いません、できるだけで十分なので続けてください」


挿絵(By みてみん)


「あなたはそれができると見ていますので、このように言っているのです」


挿絵(By みてみん)


「トリー、あなたはきっと私の考えていることに応えてくれると思います」

とアンナは迷いも無くしっかりと話すのです。


挿絵(By みてみん)


 昼ごろになってようやく街に入ります。ちょっと大きな街でした。

宿も大きいところを選んだので安心です。


挿絵(By みてみん)


まずは予定通り馬車は預けて、護衛の人たちはそこに留まり、クロノ司祭と4人のセイントそしてトリーの6人がその足で教会に向かいました。


小さな教会の前には礼拝の人が集まっていましたが、中に入って司祭様に面会を求めるとすぐに通してもらえました。

普通は教会の関係者でなければ受付で待たされてしまいますが、競技会の地区代表が来るという連絡が入っているので簡単に奥に入ることが出来ました。


椅子を勧められて聖女達5人は後ろで座っている間、クロノ司祭とその町のマーチ司祭が挨拶を交わしています。


挿絵(By みてみん)


「ようこそお越しくださいました」

「従者の方々は宿を取られたという事ですので、聖女の皆さんは今日はここで休まれればよいと思います。クロノ司祭とは、昔からの知り合いなので、今宵は色々と話もしたいとも思っていますので」

その教会のマーチ司祭はその様に話しました。

クロノ司祭も

「それならそうさせてもらえれば」と返答します。


挿絵(By みてみん)


それを聞いていたトリーは、立ち上がって、

「ではそういうことでしたら、私は帰って宿の方で休むように致します」と話すのです。


挿絵(By みてみん)


それを聞いていたアンナは急に立ち上がり、マーチ司祭とクロノ司祭の元に歩み寄ります。

「おねがいがあります」と元気よく声をあげます。

「はい何でしょうか」とマーチ司祭は驚いたように返答します。


挿絵(By みてみん)


立っているトリーの方を向き直って、グイグイとその手を引いて司祭様の前に連れてきます。

トリーはびっくりしたような顔をして引っ張り出されてマーチ司祭の前に立たされます。

そして

「名前はトリーと言います。わたしと長く暮らしてきたものです」

「お願いがあるんです」とアンナ


「はい?」といぶかしそうな顔のマーチ司祭

「トリーにセイント判定試験を行ってほしいのです」驚くべき話をアンナは始めるのです。

「このものはたしか判定はされなかったはずだが」とクロノ司祭は言うのですが

それを遮るかのようにアンナは


挿絵(By みてみん)


「このものは***************だからです」また不思議な言葉を発します。


二人の司祭はその言葉に顔色が変わります。それは神聖な言葉として伝えられてきたモノで、

普通のセイントレベルでは知り得ない言葉だからです。

なぜ、それを知っているのかとは思いましたが、判定自体はそんなに難しいモノではありません。


挿絵(By みてみん)


そうであるならと町の司祭はその判定道具の前に、トリーを連れて行きその前に立たせました。


「トリーさん、それをじっと見てみなさい。何があるか?」とマーチ司祭は質問します。

トリーはしばらくして、

「ハイ*******があります」と答えました。


挿絵(By みてみん)


二人の司祭は、顔を見合わせて、反応が確かにあり聖女の可能性がある。

この年代で発見される事は、無いわけでは無いが、まれと聞いているがと首をかしげています。


セイントの能力は、非常にまれなのでその力が弱いモノであっても貴重なのです。

もちろん能力が消えてしまうセイントも多くあります。

でも、トリーは反応が出ているみたいなので、当面は見習いセイントだろうと言う事になりました。


挿絵(By みてみん)


「ではクロノ司祭様、一応トリーは見習いとはいえセイント候補なので、ここに一緒に泊まっても良いですよね」とアンナはしてやったりと言う顔で言います。

貴重な候補生をみつけたわけですから、マーチ司祭もそれならと、宿泊は1名追加となりました。


一応候補生なので、正式なセイント服装ではなく、それを表す候補生である簡単な黒いベールを与えられます。

教会の関係所に出席をするときは、今の服装の上にこれをつけることで、その関係者であるという立場を 皆に知らせることができるからです。

トリーはその黒いをベールをつけました。

挿絵(By みてみん)

アンナはトリーの手を取って喜んでいます。

「トリーもセイントになったわ!!!」

同行の3人のセイントもそれをみて、

「トリーはセイントで私たちの仲間だったのね」と喜んで迎えます。


挿絵(By みてみん)


4人のセイント達が喜ぶ姿をみて

「たまたま反応が出ただけの見習いですから、今後どうなるのかもわかりませんし、皆さんの様な代表のセイント様からみれば、何もできませんのでよろしくお願いします」と年長なトリーは恥じ入った様子で頭を下げます。


挿絵(By みてみん)


「これでセイントは5人ね」とニコニコしてアンナは言いました。


挿絵(By みてみん)


「でも見習いでも、皆さんの世話係として同行させていただいたのでその仕事はしっかりさせていただきます」とトリーはしっかりした口調で答えました。自分の立場と仕事は心得ています。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


教会での簡単な夕食を聖女たちと会食後、皆は用意された寝室に下がりました。

明日は早く出発です。

アンナはトリーの手を引いて、「よかった、よかった」とセイント達と一緒に部屋に下がります。


挿絵(By みてみん)


「やっぱり思った通りだった」とアンナ

「どうしてわかったの」とサンディは部屋の中で聞きました。


挿絵(By みてみん)


「カンがピンときたのよ」と答えます。


挿絵(By みてみん)


「さあみんな一緒に寝ましょう」とノルは言います。

もはや仲間がふえて5人は楽しい修学旅行気分です。


戒( śīla)

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