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アンナの旅  作者: mega
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宿舎到着

 王城の宿舎に到着しました。

この宿舎は東地区の合同大使館という扱いの館です。

当然北部アルク公国や南部メーセン公国の広大な館からみれば、こじんまりしております。

こじんまりとはいえ、やはり王城の館です。小さいながらも庭園などもそなえたりっぱな宿舎です。

今後聖女達はこの館に宿泊し、競技会の会場に馬車で移動するという事になります。


馬車から多くの荷物を館に運び込みます。ケルン達や護衛の人たちもここに一時宿泊することになります。

またルーツは王城へ到着しましたので、まずは自分の店に 無事に着いたと連絡する為に帰っていきました。

クロノ司祭は、王城の教会へ到着の報告をするため出て行きます。


 すこし時間が遡ります。

メラノ侯爵の邸宅を出発して箱形の馬車の中です。

馬車にはアンナ、トリーと3聖女の5人が乗っています。


「お菓子のお土産いただいて、これって昨日おいしかったからホントうれしい」

「でもこれから競技会、大変になったですよね」

「後援していただけるんですから、責任重大ですわ」

と3聖女の会話です。


「トリーにも助けてもらわないとね」とアンナは話します。

「わたしは聖女とはいえ見習いですし、候補でもないので今回の会には出席できませんが?」

「責任重大だから、トリーさんにかわってもらいたいくらいです」

とベルは弱気になっています。


「聖女ベルあなたたちは、ホントはもっと凄い聖女なんですよ」とアンナは話し始めました。

「でも自分の力はどのくらいかはわかっていますから」

「北部や南部の聖女様は、相当凄いと聞いています」とサンディは自信がありません。


「わかっています」

「実はトリーが聖女になれたのも、じつはあることが出来るようになったからなの」

とアンナは話します。

「そんなものがあるんですか?」とノルは食いついてきました。

「アンナ様からこうしなさい言われたことがあるんです」

そういって、トリーはアンナの顔をみました。


アンナは、トリーの目をみてうなずきます。(OK)

「気をつけていなさいということなのです」とトリーは秘密を明かします。


「気をつけて??????って」「何を?」とノルは訳がわかりません。

「からだのうごきです。それを気をつけて観るように」とトリーは説明します。

「それってだれでも簡単にできることでしょ」とサンディは簡単そうに言います。

「そうでしょうか?」とアンナはトリーを見ます。


「アンナ様が言われたのは、いまのこの馬車に座っている状態なら、例えば呼吸をしているでしょ。

この呼吸を観るということなんです」とトリーは説明します。


「呼吸ですか?」とノルはよくわからない顔つきです。

「じゃあやってみましょうか、言うよりやってみるほうがわかりやすいですから」

「じゃあ目を閉じてみて」とアンナは指示を出しました。


3聖女は目をとじました。

「呼吸する空気が、鼻から出入りしているでしょ。

出て行く息、入ってくる息をその鼻先で追いかけていくんですよ」

「では始めましょう」


3聖女は馬車に座りながらずっと目をとじていましたが

1分くらいでしょうか

「これが何になるんでしょうか?」と目をあけてサンディは言いました。

ノルもベルも目をあけました。

「つづかないでしょ」「できないでしょ」とアンナは問います。

「目を閉じて息をずっと観ていました。けど、しばらくすると色々な考えがでてきて、いつのまにかそっちの事ばかりをかんがえていました」とノルは答えます。


「これってお祈りをしているとき、今日のご飯は何かなと考えたり、お祈り長いなとか思ったりとおなじです」とベルは話します。

「これって誰もそうなんですよ。からだの痒みとかも気になるでしょう」とアンナは話します。


「じゃあ、次は同じ様に始めます」

「息を観ているときそういう考えが出てきたら、それに気がついてまた息に戻ってください」

「まただわ、もーーーなんて思わず、外れたらそれに気づいて、慌てずそっとまた戻ってください」

「では始めましょう」


それを聞いて3聖女は目を閉じます。

1分、2分、3分くらいでしょうか

今度は誰も目をあけません。

「では目をあけてください」

どうでした?と問います。


「なんとか、戻り戻りやっとできました」

「難しいもんなんですね」

「トリーさんはこれをしたんですか」

3聖女は口々に話しました。


「途切れ途切れでしたけど、気がついたときはやってました」とトリーは答えます。


「聖女の力は、心を集中させることから出来ているんです」

「聖女の皆さんは、そうしてるでしょ」

「でも聖女であっても、それを邪魔されるんです」

「トリーが出来るようになったのは、その邪魔を完璧ではなくても取り除く事ができたからなんです」


「やっていくと、たしかにこの邪魔がへってきます」とトリーは同意します。

「邪魔がなくなってくれば選ばれた聖女の皆さんなら、もっとできるはずなんです」

とアンナはみんなを励まします。


「でもアンナさんはなぜこれを知っているんですか?」とベルは不思議そうに聞きます。

「古くから伝わる言い伝えにこれがあるんです。でもどういう意味があるかわからなかったんです。

気を付けているようにとだけありましたから」(ホントはそんな言い伝えはないのですけど)

「トリーにやってもらったら、聖女の力が出てきましたので披露してるんです」


3聖女は言われて、やり続けてみました。

「言われることなんとなくわかります」さっそくにノルはこつをつかんだようです。

「そうしばらくつづけてみます」ベルは不思議そうに答えています。


「やってみるということで、その前にいただいたお菓子の時間にしませんか?」

サンディは、それよりお菓子の方が気になっているようです。

「いいですね、お菓子の時間にしましょうか」それをみてアンナは休憩を提案しました。

当然ですが全員賛成です。

「お菓子を食べているときも、この気を付けていることはできるんですよ」

とアンナは言います。


「アンナさんは怖い教官みたいです」

とサンディは茶化しているみたいですが、冗談を言える余裕もあとわずかであることに3聖女はこの時はまだ知らないのです。そしてこの事こそが今から起こる全ての始まりだったのです。


 東地区馬車が王城に到着したくらい頃、 王城の南部メーセン公国出の宰相の部屋では、宰相の大きな声が上がっています。


挿絵(By みてみん)


「今回の競技会は、絶対勝つ必要がある。これ以上北部をのさばらせるわけにいかない」 

と宰相は怒りの表情です。

「まだ到着していないのか!キラ聖女達はどうなっている!」と宰相は怒鳴ります。


側近の一人が報告します。

「予定より遅れております。本日夕刻までにはなんとか到着するはずです」

宰相は、地図を広げながら考えています。

出発地はここ王都から馬車で5日のところで、通常であれば急げば3日から4日ほどで着く距離であるにもかかわらず、すでに10日近くたっているのです。


「まさか途中で何かあったのではあるまいな?」と今度は心配顔になります。

「しかし、なにをしとるんだ」とまた怒鳴っています。


そのときドアがノックされ一人の兵士が入ってきて、伝令の報告を始めます。

宰相はその兵士の言葉を聞きますと、驚きの顔になり、急いで部屋を出て行きました。

(この遅れには重大な意味があることは、後にわかることになります。)


 こちらは北部アルク公国、王妃派の部屋です。


挿絵(By みてみん)


「今回もこの競技会は、我々北部アルクの有利で進んでいますな」

「やはり最有力聖女様はわれら北部代表のベアトリス様だ」

「王妃様の薫陶もあり、われわれの絶対有利は動かんだろう」と北部アルク公国の大公とその取り巻き達は自信満々です。


「いくら宰相ががんばったところでな」

「南部の聖女達はまだ着いていない様じゃないか、怖じ気づいたのか」

アルク大公は悠然と構えています。

「そうですな、わがベアトリス聖女様がおられる限り、こちらに分がありますから」

と取り巻き達は自信たっぷりに答えます。

もはや東地区の聖女が到着したという報告などは眼中になく、優勝は決まったという勢いです。

明日は王や王妃臨席による競技会開会式とセレモニーが予定されているのです。




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