会食
さてメラノ侯爵との会食の場所です。
「さあどうぞお入りください」とデント執事がうながします。
大きな扉が開き、豪華な部屋が見えます。
クロノ司祭を先頭として、聖女の先頭はアンナが立ち、その後をサンディ、ベル、ノルの3聖女が従い
最後はトリーがつづきます。
特に3聖女は経験がないので、ぎこちない歩き方になっています。
まず執事さんとメイドさんにうながされて席に案内されました。
1人用の椅子にそれぞれ6人が座っていきます。
一番奥にメラノ侯爵が座っていました。またその横にはその町司祭が控えていました。
メラノ侯爵から横にいるこの町のメント司祭を紹介されます。
「ご無理いただいて会食にお呼びしたのは、このメント司祭から報告がありまして、ぜひ一度お目にかかりたいと思いご招待いたしました」
と非常に友好的な雰囲気で この会食がはじまりました。
食事に先立ち、ここには二人の司祭が同席していますので、メント司祭の食事の感謝の祈りから、会食がはじまります。
「今日の食事をいただくことに女神様に感謝していただきます」
「いただきます」
この流れは聖女たちには、いつもの流れですから緊張していた聖女にとっては、その言葉で力みがとれたようです。
食事を始めるとメラノ侯爵から、さっそく話がでてきました。
やはり弓の聖女に感心があるのです。
「この方が弓の聖女様ですか?よろしければ紹介していただきたい」とクロノ司祭に問います。
クロノ司祭は、その時の状況についてアンナを紹介して話しだします。
アンナはその紹介に
「相当大げさに伝わっているようですが」と困惑した顔をして答えます。
「おおげさと言いますと?」とメント司祭は問います。
「魔物を倒したのではありませんし、また矢を撃ったのは私ではなく従者であるケルンが撃ちました」
と答えます。
「ほほう、なるほど」とメラノ侯爵は話をつづけます。
「しかし天をつらぬく音の矢で、魔物の襲撃を除いたというのは、いままで聞いたことがありませんが」と問います。
「我が家に伝わる古い伝承に、あの魔物はこの音の矢を恐れるという事を聞いておりました」
(実はそんな伝承はありませんが)
「また、この矢にはここにいる4聖女の祈りが大きな力となりました」(これはホント)
アンナは4聖女の祈りが大切であると強調します。
「4人の祈りの力なのです」と強調して4聖女を持ち上げ、
これは、教会の祈りの教えが大切であるという事をメント司祭にしめしているのです。
「それにしても、矢を撃たれたあと、天の加護を得たといえる光に包まれた姿はすばらしいと聞いております」
「それも偶然そのようになっただけですから」とサラリと答えます。
4聖女の祈りと聞き、メラノ侯爵は一人違う服装のトリー聖女(みならい聖女のガウン)に気がつきます。
「ひとり違う聖女の方がおられますね、競技会は4人のはずですが?」
「このトリー聖女は、元々アンナ聖女の従者ですが、実は数日前に聖女であることが見出されたのです。このアンナ聖女によってです」とクロノ司祭は説明しました。
このことをメラノ侯爵は聞いて、やはりこの(弓の)アンナ聖女はただ者ではないと感じるのです。
「それにしてもあの危険な状況で、馬車の屋根に上がられるとは、大変な勇気をお持ちだ」
と感嘆します。
「聖女の役目は皆の苦悩と共にあるようにと、このクロノ司祭さまからいつも教えいただきました」
とアンナは教会とクロノ司祭を持ち上げます。
「なにが出来るかわかりませんが、まず一歩前に踏み出すようにと両親から教えてもらっています」
トリーはそれを聞きながら(お嬢様ってこんなかただったの?)と思うのです。
このやりとりにメラノ侯爵は感銘をうけたようです。
「素晴らしい」
さて会食のほうも、最後のお茶の時間となり、おいしそうなお菓子が出てきました。
だいぶん聖女達も緊張がほぐれてきており、お菓子をみて目がキラキラしています。
やはり甘い物には目がありません。やはり王都に近い邸宅です。地方では手に入らないものばかりです。
「今日のために用意したものです。是非召し上がってみて下さい。」
「ありがとうございます」と聖女たちはうれしそうに食べ始めます。
「美味しい」とみんな喜んで食べています。
(やはり若い女性だ、甘い物には目がないなとメラノ侯爵は考えています)
それを見て、
「今後の聖女競技会において、皆さんを後援させていただきたい」とメラノ侯爵は申し出ます。
「ありがとうございます。それはありがたいお言葉です。今後もよろしくお願いします」とクロノ司祭、やはり有力者の後援があれば なにかと役に立つからなのです。
今回の聖女競技会は、北部地区(王妃派)と南部地区(宰相派)はライバルとして、この競技会でも
角をつきあわせており王国の2大派閥といえます。
しかし、メラノ侯爵としてはこの中に分け入る手段として、東地区の聖女達が使えるのでは無いかと
考えているのです。
メラノ侯爵は、今回の会食でメント司祭を招いたように、教会とつながりがあります。
教会派とでも言う所でしょう。また北部と南部の勢力が王家をないがしろにしている状況を
なんとかしたいとも考えているのです。
そして今回のこの会には、密かに王太子の結婚候補を探すという意味が隠されています。
それがわかるメラノ侯爵は、ズバリ、アンナ聖女が使えるのでは無いかと、見定めたのです。
今回の会食で、アンナ聖女達を自分の陣営に引き入れるために、このような行動に出たのです。
メラノ侯爵は、聖女達を味方にできれば、自分の領地に隣接する東地区勢力も押さえることができるとも考えたのです。
「今後ともよろしくお願いします」とクロノ司祭は頭を下げます。
「こちらこそ、色々と協力させてください」
そういう思惑はおくびにも出さずメラノ侯爵は笑顔で答えます。
そのような会話の中で会食は終わりました。
アンナは東地区の伯爵とはいえ、開発領主という立場の田舎の貴族で領主と言うより東地区のまとめ役という立場の伯爵家の末娘です。
ベルは東地区の商家の娘です。田舎の小さな商店というような立場です。
サンディは東地区ではちょっと大きな農家出身の娘です。
ノルは工房などをもつ職人達を束ねる家の出身の娘です。
トリーは一番の年長ですが、小さい時に両親を次々となくし、アンナの家にメイドとして住み込みで
働いていました。アンナと長くいっしょに暮らしていたので、アンナはトリーの主人ではありますが
最もトリーの事を頼りとしかつ伯爵夫妻からも大切にされている使用人なのです。




