メラノ侯爵
クロノ司祭は、ケルンと乗車中に相談です。
次の宿泊地にこの地区の領主である有力者のメラノ侯爵が、招待したいという連絡がありました。
「噂に上がっている弓の聖女に一度お会いしたい」との事
メラノ侯爵は貴族の中でもかなりの実力者で、国の重要人物の一人でもあります。
クロノ司祭やケルンとしては、ぜひ会ってみたい相手ではあるのですが、アンナ達の意見を聞きます。
アンナは、あまり気が進まない感じですが
ベルは、貴族ってなんか苦手だなあという印象です。
ノルは、あまり関わりたくないような表情です。
ルーツは、メラノ侯爵は女性に人気で、特に若い女性に人気があると教えてくれます。
サンディは「私は別にかまわないわよ」と言います。
結局こうして、一同はそのメラノ侯爵邸の招待を受けることになりました。
メラノ侯爵邸は、領地の中心にある大きなお屋敷でした。
敷地は広く、建物も大きいものでした。
ケルンは、門番に招待状を見せて、案内係を呼んでもらいました。
箱馬車はメラノ邸の玄関に通されます。
そこには使用人らしき女性と執事らしい男性がまっており
こちらですといって案内してくれます。
クロノ司祭と、4聖女(アンナ、サンディ、ベル、ノル)と見習い聖女トリーが中に通されます。
ケルンと護衛の人たちは、男性の使用人が別の宿舎に案内していきます。
二台の馬車は別の馬車小屋に運ばれていきます。
広い庭を抜けたところに、屋敷の入り口があり、中に入り応接間のような部屋に通されました。
執事の男性が自己紹介します。
「メラノ侯爵家の執事をしております。デントと申します」
「まずはお座りいただければと思います」着席をうながし、お茶の用意をするように指示をだしています。
「旅の途中でお忙しいとは思いますが、当主のメラノ様が今回のお話を聞きつけ、無理を承知で是非お会いしたいと申しまして、おこしいただいた次第です」
とクロノ司祭にこのように説明しました。
「次の宿泊地を用意しなければならないと思っていましたが、ご招待いただけることになり、
当方としてもありがたくおもっています」と返答しました。
今回の招待は聖女競技会において、メラノ侯爵として思うところがあるようです。
簡単な紹介が終わった後、
「まずはお疲れでしょうから」と本日宿泊の客室用の部屋にめいめい通されました。
その部屋にはさすがに侯爵家、メイドが各部屋に控えており、お風呂などもあり、いままでの教会の宿泊所とは段違いの豪華さです。
トリーは聖女でもありますが、このたびのお世話係でもありますので、アンナと同室ということになりました。
聖女たちも旅行装束から、用意してある正式な衣装に着替える必要があります。
その手配にトリーは馬車から衣装をとりだして、聖女達に着替えを用意していきます。
しかし各員にメイドがついていますので、着替えもスムーズです。
着替えの前にお風呂ができましたので、この入浴で各聖女は久しぶりに綺麗になりリラックスすることができました。
旅の途中で入浴は無理ですから
すこし時間を遡ります。侯爵邸に向かう馬車の中で
ベルから「侯爵様の招待だと、会食になるんでしょ」
「たぶんそうでしょうね」「そうね」「そうですね」「はい」
会食ではどういう対応をしなければならないか経験が無いベルは心配なのです。
4人の聖女たちは、食事についてはある程度予想していました。
侯爵家の招待ですから料理長の自慢の一品が出てくるかもしれません。
まあ、出されたものを食べればよいのですが、マナーを知らないと恥をかきます。
どんな人がいるかわかりませんし、失敗して恥をかかないか心配しているのです。
聖女達は普段は教会、それも貧乏教会なので、質素な食事が普通なのです。
こういう点では、アンナは東地区の小さいとは言え、有力な伯爵家出身なのである程度の
対応はわかっています。
ある意味今回のアンナが選ばれた理由の一つに、王城へ行くと有力な貴族などの社交が
ついてきます。
やはり東地区代表として、ある程度の対応ができないと、今後の立場が悪くなっていくのです。
聖女達はある意味東地区外交官という側面があります。
公的な会食というのは、外交であり、静かな戦争です。
立ち居振る舞い、会話などが試される場所なのです。
そういう対応もあるていど見込まれているわけで、トリーがお付きとしてついてきた意味も
そのような場面にも 立ち会っている経験があるので、ある程度期待されているわけです。
会食の姿勢、給仕の人がつきますので、席にすわる作法や、食器の扱い、などを話します。
食事における基礎的な作法などをアンナは話していきます。
話し方などは聖女の基礎的な教えがあるので できています。
「あとは、食べる順番ですね」とか「スープを飲むときは音をたてない」だとか「パンをちぎって食べましょう」なんてことを話しています。
もちろんノルも知っていますし、サンディも基本的なことはできます。
心配していたベルはやはり自信なさそうですが
「基本は大丈夫ね」と言います。
あとは臨機応変にということでした。細かいマナーを知らなくても、どうにかなるのです。
3聖女達が初めての会食を心配しているので、クロノ司祭はこのような話をしました。
「まったくマナーを知らない人たちが使節として、初めての国で、歓迎会の会食に招待されたのです。相手の狙いはあきらです。出された料理に我先にかぶりつくような態度をみせると、どの程度の国か人物かと値踏みされるわけです」
「しかし、その使節の人たち、しばらく食事をはじめた人達の仕草を観察して、同じ様に食べ始めたということです。小さなマナーの間違いはありますが、相手にその人たちのその根底にある高い教育された姿を感じさせたといいます」
「そういうことですから、わからなければ、よく見てまねる。そして聖女はその大切な事をにいつも知らずに訓練されてきたから、心配しなくても大丈夫ですよ」と勇気づけます。
ということで緊張の会食の時間になりました。




