旅立ち
金髪のアンナ: セイント(聖女) 競技会に姉の代わりに東地区代表として出場することになった伯爵家の末っ子
おでこのノル(聖女)
お下げ髪のサンディ(聖女)
赤毛のベル(聖女)
3人はアンナと共に4人で東地区代表として競技会に出る仲間のセイント達 金髪のアンナと同年代
クロノ司祭 東地区の4人のセイント(聖女)を引率する役目
トリー アンナの侍女、付き添いとして競技会について行く アンナより年長
ケルン 伯爵家の使用人今回競技会の護衛係として同行する トリーと同年代
マリー アンナの姉 本当であれば代表として出場の予定が、病気により出場できなくなった
競技会は北南東西の4地区の代表が王宮で行なわれるのです。
明日は出発という夜に、それはおこったのです。
明日からの旅の安全を女神様に祈り、眠りました。
その後です。急に全身が締め付けられるようになり、全く動くことが出来ません。
そして、どこからともなく
(あなたですね) 優しい声でした。
(ようやくここに戻ることができました あなたとともに)
声でしょうか、そうではないかもしれません。
まばゆい大きな光がわたしの上から降りてきて、私の身体と一体となり、そして消えていきました。
これは夢かもしれません。これが全ての始まりでした。
出発の朝です。
教会の前では引率のクロノ司祭様が2台の馬車の前で出発の挨拶をしています。
「皆さま方、今日はようこそおいで下さいました」
「本日からよろしくお願いします」
教会の前の広場には、見送りに多くの人が集まっています。
「おお、あの子が出るのか」「また見れるとは思わなかったなぁ」
などと声が聞こえてきます。
「アンナ、アンナ起きなさい。もう朝よ」
目が覚めます。
あれ?ここはどこでしょう。
(えっと確か昨夜は………そうだ女神様に祈っていたんだっけ)
(そのあと眠くなって寝てしまったような気がするけど)
「お母様おはようございます」
「さあ支度をして、朝食に行きましょう」「わすれものをしないようにね」
「はーーーい」
食堂に行くとお父様もいらっしゃいました。
「おはようございます」
「おおアンナよく眠れたか?」
「はいぐっすりと」
「旅は初めてだから心配だな」
「そろそろ出発の時間だ、馬車がやってくるからその前に2階で寝ているマリー姉さんにひとこと言ってから馬車に乗りなさい」
「はーい」と言って 2階にかけ上がっていきます。2階のドアをノックして
「アンナです入ります」といってドアを開けます。
そこにはずっと寝ていたマリー姉さんが上半身を起こして待っていました。
その顔は具合が悪いことを示しています。
「無理に起きちゃだめよ」
「だいじょうぶ せっかく私の代わりに出発するんだから、せめて見送りだけでもさせてちょうだい。玄関まで降りて見送りたいけど、この2階から送らせてね」
そういって近くにいるアンナの手を取って、引き寄せ体をぎゅっと抱いて
「無理しないでね、体に気をつけて」と病身の体で心配してくれます。
「だいじょうぶだから、お姉ちゃんこそ大事にね」とアンナは元気づけるように答えるのです。
それに答える姉の顔は何かしら疲れた顔をしてうなずいています。
そうしていると下の方で声がきこえてきます。
「馬車が来たよ」
立ち上がって、ドアの方に向かおうとすると
(時間がかかるけどこれでだいじょうぶ)という声が聞こえます。
キョロキョロと振り返ってみても、だれもいません。 (そら耳かしら)
じゃあ行ってくるねと元気に行って姉の部屋をでていきました。
「ドアを閉め忘れているわよ」
「ハーーーイ」
(ほんとに大丈夫かしら。おっちょこちょいだから)とマリーは疲れた顔で苦笑いです。
外には競技会の王城へ向かう箱形馬車と荷物馬車がやってきており、アンナの乗車を待っていました。
そして階段を降りて箱形馬車に乗り込みます。
「わすれものは、ありませんよね」と母は言います。
「もうーーー大丈夫だから!」
馬車に乗り込むと、2階で見ている姉にそして見送る両親に手を振ります。
さあ いよいよ出発です。そしてこの旅は思う以上に長い旅となることを 今の時点ではだれも予想はできませんでした。
競技会会場である王城到着までには7日程度はかかる距離です。
「それじゃ行ってきます」
「気をつけて行くんだよ。無事に帰ってくるようにね」
「大丈夫ですよおとうさま」
「アンナ様、くれぐれもご無理なさらぬように」同行する侍女のトリーは心配顔です。
「ありがとうトリー, 大丈夫だから」答えだけは元気なアンナです。
「トリー何か忘れていないか、アンナの用意はいつも何か抜けているから」
「一応私も確認しましたので、大丈夫と思います」とトリーは答えたのですが
送り出す両親は、心配ばかりです。
予定外の代理なのですから
出発するまで、なにかドタバタしています。
「それでは行きますか」と御者の人は待ちくたびれた様に言います。
「はーーーい、出発よろしくお願いします」とアンナは元気に答えました。
こうしてわたし達の競技会への旅が始まりました。
同乗者は東地区代表聖女サンディ、ベル、ノルの3人と世話係のトリーの合計5人です。
動き出すと馬車の窓から見える景色は、ところどころ雪が積もっており、王国の東北地域であることを教えてくれます。
家を出たあとは、それほど多く無い農地の間を抜ける道を通っていきます。
途中小さな村もあり、そこで食べ物を補給していきます。
特にベルはこの辺りの出身なので、この地域の話で盛り上がっていきます。
「このあたりは、チーズの生産が盛んな所なの」とベルは知識を自慢します。
「おいしいの?」とサンディは聞きました。
こう言って今度はサンディが
「これも美味しいですよ。そうですねこれとか」
といってサンディは持参の大きな袋から干し肉のようなものを取り出しみんなにわたします。
口に入れてみると少し酸味のある味で不思議な香りです。
でもすごく美味しかったのでそのまま食べちゃいました。
こういう和やかなおしゃべりの雰囲気の中での旅が続きました。
一日目は野宿になりました。
馬車を円形にして、たき火をします。護衛の人たちとトリー達が夕食の用意をします。
簡単な夕食を取った後、くつろいでたき火を車座で座っていると、急に歌声が聞こえます。
アンナが立ち上がり急に歌い出すのです、それは聞いたことも無い言葉で、ゆっくりとひびきわたるようになにかやさしく語りかけるような歌声です。
みんな誘い込まれるように聞き入っていきます。歌い終わると拍手をする人もいます。
「アンナすごいじゃないの、わたし感動しちゃったわ。こんな歌聴いたこと無いもの」
と聞いていたノルは驚いて言います。
聞いていたクロノ司祭が、不思議そうな顔をしてアンナに尋ねるのです。
「この歌は何の歌だね?」
「わかりません。なぜか急に歌いたくなり、歌いました」
とアンナはなぜかわからず、そう答えるのです。
「この言葉はもの凄く古い言葉だよ 自分もよくはわからないけどたしかそうだよ」
「たしかこの言葉を使っている人はもういないはずで、だと聞いてる」
「たしか神聖な言葉といわれてるものによく似ている」
「でもなぜこの様な歌を知っているの?」とクロノ司祭は再度問います。
「わかりません。司祭様」そのアンナの答えにクロノは不思議な顔をしています。
「もう良いじゃ無いですか、夜も遅いし、なにかホントに良い歌でしたよ。」
伯爵家付き添いの護衛係で同行するケルンが話します。
「まあ、それもそうだね」とクロノ司祭はもうこのくらいにすることにしました。
「さあそろそろ寝ましょうか。見張りの順番はどうしますか?」侍女のトリーは
次の事を心配しています。
この物語は、皆に光輪があることを知ってもらう為に書きました。
聖女達と同じようにしてみてください
それがわかるとおもいます。そしてまだ先があります。