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植えてもいない紫蘇が生える不思議な庭である。
今年も紫蘇が湧いて出た。わたしが紫蘇ぎらいなことをわかっていやがらせにでも来ているんだろうか。紫蘇好きなひとのところへ行き給えよ。
わたしの好きなどくだみの合間にぽつんぽつんと紫。
どくだみの繁茂能力に立ち向かうとは、おそるべき胆力の紫蘇である。
そういえば、連作に向かないだのなんだのといわれる三つ葉が、庭にたっぷり生えている。紫蘇はまだ、かつて(もう本当に遠い昔だけれど)植えていた時期があった筈なので、そのこぼれ種だろうと憶測しているのだが、三つ葉に関してはどこからどう紛れ込んだのかとんとしれない。
毎年々々、張りのある茎をぐいぐいと伸ばし、自慢げに葉を茂らせ、誇らしそうに茂みをつくる三つ葉。
ちらし寿司、すまし汁、茶碗蒸しに炒飯、蒸しパン、ジェノベーゼもどき……申し訳ないけれど君達の使い途はこれくらいしか思い付けない。
なんにせよ、植物の旺盛な「生きる力」とでもいうべきものに、頭が下がる。
――
BL・GLに耐性のないひとはここから次の「――」までは読まないことをおすすめする。
愚痴強めなのでそれがいやな場合も飛ばしてほしい。
オメガバースを書こうと思って挫折中だ。
知らないひとに簡単に説明すると、男でも妊娠できる「可能性のある」世界設定である。くわしいことを知りたかったら各自調べてほしい。そもそもわたしは他人に講釈をたれることのできるほどにこれを理解していない。
その設定がいいか悪いかは一旦措いておいて、わたしが挫折しているのはオメガバース成立の背景にどうしても「欧米の宗教観」を見てしまうからだと思う。
キリスト教にしてもイスラームにしてもユダヤ教にしても、同性愛はよろしくないものである。イスラーム文化圏では未だに同性愛者を死刑にする国もある。
何故同性愛がよくないのかといえば、諸々理由はありつつ一番大きなものは、彼らの価値観での「無駄な性行為を伴うから」だろう。
同性では子どもができない。それがその宗教の信徒の間では「無駄」なのである。
誤解されては面倒なので一応書くが、わたし自身は無駄だとは思っていない。他人の色恋沙汰なんて知らんがな、なので、男女だろうが男同士だろうが女同士だろうが当人達がしあわせそうであれば眺めてにやにやする。
ボール球に手を出すな……くらいの話なのではないか。「無駄」と断ずるひと達にとっては。
あたる(子どものできる)可能性が低くとも男女ならばもしもはあるが、同性にはそれがない。
しらんがな。大きなお世話の一番厄介なやつみたいな、内政干渉のラスボスみたいなやつである。内心の自由の侵害じゃないのか、それは。大体、子どもつくろうがつくるまいがひとの勝手だろう。
オメガバースがその宗教観を反映した設定であるように思えてならないので、手をつかねている。
それを意識していたか無意識なのかは知らないが、「同性だと子どもができないからこのキャラは罰当たりだ」というのがあったのではないか。
なら、同性でも子どもができることにしてしまえばいい、ということだ。
受け攻めを固定するのが差別的だという声に固定厨が対応策として打ち出した設定だという話も聴いたことがあるが、彼らのなかには同性愛というものに対する「うしろめたさ」みたいなものがどこかに残っているのではと疑ってしまう。
勿論創作物と現実とを混同はしないが、そもそも現実世界に生きている人間が考えることなのだ。なにかしらの影響はあるだろう。
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BLの話を読みたくないひとは飛ばしてほしい。
BLは抑圧された女性の男性への復讐だという言説を読んだことがある。
それならば男性向けのエロまんがはもてない男の復讐だろうか。
そんなばかな話があるか?
殺人事件を描いたら殺人をしたいんだろうか。
魔法を描いたらそういうものが本当に存在すると信じているんだろうか。
そういうことをいうひとはよほどこりかたまっているか、なにかの不満があるんだろうから、反論しても聴かないだろうが。
とりあえず、腐女子はBLにしか興味がないというのは間違いだ。わたしは雑食である。ある程度ならいける。
最近とんでもない地雷ができてしまって雑食の自信が揺らいでいるが、まあそんなものである。
――
アイスクリームを食べたい。
ヴェジタリアンに食べられるアイスなんて限られているし高い。
冷凍フルーツと豆乳をフードプロセッサーにぶちこんで撹拌するだけでいいのだが、起き上がりたくない。
間取りのために冷蔵庫が遠い。
冷凍庫は下の段なのでかがまないといけない。
つらい。
この間ひとに手伝ってもらってチョコレートもどきをつくった。
カシューナッツとメープルシロップと豆乳と塩をフードプロセッサーで撹拌し、ココアをまぜるだけだ。ひと晩おいたほうがおいしい。
凍らせたらアイスっぽいかな。
ヴェジタリアン用のアイス、食べてみようかな。
そう初めて思って二年くらい経っている。
――
ハーレクインに限らず恋愛もののヒーローって、もの凄くマイルドなスクルージのような気がする。
地位も名誉もあるけど、精神的に充たされていない。心がつめたい、傷付いている、みたいな。
氷の女王みたいな、が近いのか?
クリスマス・キャロル、ちゃんと読んでないけどさ。
書くのが面倒になってきた。
自分はちゃんとやってるんだ! 会社を潰さないように頑張ってるんだ!
でも評判最悪。すぐに首切るし家庭も持ってないから。
欧米の価値観なんか?
「評判回復の為に便宜結婚」ヒーロー、多いぞ。
自分の評判の為に女利用すんなよと思うけど大体作中でそのことで罵られるので別にいいのです。設定としては。
ヒロインだけじゃなくて親兄弟にぼろくそいわれるヒーローはなかなかに憐れを催す。
要するにハーレのヒーローは常識人なのじゃないか。孤高の一匹狼をきどっているくせに社会常識から外れてるのがこわくて結婚する。
なかには「家政婦雇うよりも楽」で結婚する場合もあるけれど、それは「家事は女の仕事」っていう価値観から外れないようにしているのだろう。
どうでもいいでしょ? タイトル通りでわたしは満足です。
――
恋愛ものの醍醐味って反骨精神だと思う。
「結婚しないとそろそろまずいからしよう。僕には財産もあるし地位もあるから結婚したら苦労はさせないよ(ほんとは好きだけど好きっていったらよくないもんね!)」
「一昨日来やがれ(要約)」
この件多い。
ちゃんと読んでないけれど、オースティンとかの影響なのかしら。
これを受け容れて結婚するとしても
「便宜的な結婚だから子作りには協力いたしません!」
みたいなのあるな。
ちなみに幼なじみからこれいわれたら大体そいつ当て馬。
超人ヒーローが「ちょっとまった!」するフラグ。
たまーに、ヒロインがお金持ちパターンある。
ちょっと「ん?」ってなったけど、その後パターン的な「お金持ちで心がすさんでるヒーロー×経済的に苦労しているけれど心は豊かなヒロイン」の作品を幾つか読んでわかった。
ハーレでは「愛」が大切なのだ。
ほかすべての事柄より愛が優先される。
だから金持ちは財産を投げ出してでもヒロイン(ヒーロー)を求める。
社会常識から外れてもいいんだ! 愛があるもんね! の反骨。かっこいい。
――
ハーレクインあるある、ヒーローはなかなかヒロインを好きだといわない。
1.恋愛はクソだと思ってる タイプ
恋愛はひとをばかにさせると思っているとか、過去恋愛で大失敗して女にいいようにつかわれたとか、もの凄ーくバイアスがかかってるやつ。好きっていったらヒロインが調子にのると思ってる。
2.便宜結婚したらほんとに好きになっちゃった今更いえないよ/からかってたらほんとに好きになっちゃった今更(ry タイプ
理由があって可及的速やかに結婚しないといけない。だから手近なヒロイン(秘書とか、お手伝いさんとか、ベビーシッターとか、パーティで一番最初に目についた女性とか)で手を打ったところ、「これが……恋……?」的な展開になり「こわがられるのでは/彼女はそんなのもとめてない/どうせ夫婦だしあらためていわなくてもいいっしょ」と尻込みする。
1と複合してると「釣った魚に餌はやらない! 女は調子のるから好きなんていうか!」というこじらせもある。
3.え……通じてないの!? タイプ
物質的に豊かな暮らしをさせておけば愛が通じると思っている。
このタイプはもの凄い亭主関白である。「金と宝石と服以外に女が欲しがるもんてなに?(。´・ω・)?」
凄くね?
これは扱いにくい設定みたいで、もの凄い癇癪持ちの厄介なヒーローになりがちな気がする。
ほかにもあるだろうけど思い付かん。
――
面白い話を母から聴いた。
母が若い頃の友達に、十代で出産したひとが居た。
十代で妊娠して右も左もわからず検診にもまともにいかなかった。いざ陣痛が始まって病院に担ぎ込まれたら、しばらくベッドに寝かされていたらしいのだが(陣痛の間隔の為にだろう)、とにかくもの凄い痛みなのでのたうちまわった。
夫や両親も来てくれなかったみたいで、彼女ひとりきり。
脚を上げていると少し楽だからその姿勢にして、でもやっぱり痛い。
「そのまま回転したって。ぐるぐるって」
フロアトラックスやん。
――
わたしは帝王切開でうまれた。
以前活動報告で帝王切開のその後を教えてくれたかたが居て、母に訊いて驚いたものである。
母は食事を断たれることを苦にしないタイプなので、その話をしても面白くないと思っているらしい。一切聴いたことがなかった。かわりに、わたしが生まれた時のことを面白おかしく話す。
「これがあなたの骨盤、これが赤ちゃん、自然分娩してもひとっつもいいことはありません」
産婦人科医ににこやかに告げられたそうだ。
母は小作りである。
わたしの頭は大きい。
物理的に出る訳がない。
もの凄く腕のいい医師で、わたしは死にかけてたけど元気に出てきた。
母はわたしを抱いて、頭があまりにでかいので心配になったそうだ。
このように基本的にわたしの頭の話しかしない。帰結が「あんたの頭は大きすぎる」なのだ。
この話をはじめて聴いた時の感想は
「ボトルシップだってその形のままとりだそうと思ったら壜を割るしかないよなあ」
だった。
――
動きを制限されるというのはいらいらする。
――
木はいつまでも元気ではない。
ちゃんと手入れして、ちゃんと様子を見て、ちゃんと剪定をしていないと、倒れる。
枝が落ちるだけでも通行人が怪我をする可能性、下手したら死ぬ可能性がある。
――
最近代替食品、「肉もどき」「魚もどき」みたいなものがよくTVでとりあげられてる。
あれっておいしいのかな。
一回肉もどきを食べたことあるけれど、さほどお肉っぽくはなかった。
でもおいしい。
物の本に書いてある「お肉っぽい」というたかきびは別にお肉っぽくはなかった。
でもおいしい。
リソースがかかるんだっていうのはわかるけど、食べたいひとは普通にお肉でもお魚でも食べればいいのにね。
――
海辺の人間は海鮮丼をありがたがらないんではないかっていう自説がある。
すききらいあるから、何種類ものっていることに魅力を感じない。
それぞれに好きなたべかたがある。
お刺身はぶりか鯛。
お寿司ならえび、いくら、うに。ひかりもの。鯛。
炊き込みご飯は鯛か鰹。
煮付けははげ。にんにくがはいってるやつ。
つけ焼きはぶり。
りゅうきゅうならまぐろ。
焼きなら鯖。
干物は太刀魚のみりん干し。
南蛮漬けならきびなご。
フライならあじかマグロ。
てんぷらはきびなご。
海鮮丼、好きなものだけのせられるなら嬉しい。
――
蜂。
どうにかしてくれ。
――
芋虫の時は可愛いのに蝶はこわい。
乱舞するあげはちょう。
近付いてこられる。
逃げる。
夏の光景。
――
「体がやわい」の基準ってなに?
どこからやわいんだろう。
家族のほとんどが開脚できるので感覚がバグっているんだろうか。
三桁まで生きたひとを間近で見ていたので、子どもの頃は人間というのは百歳までは生きるものなんだと思っていた。
――
祭りに行きたい。
どうでもいい屋台のおもちゃを買って、お神楽を見て、芋飴を買って帰る。
あんまり歴史のない祭りが地元にある。
四百年続いてないくらいでたいしたものではない。
祭りの期間は雨が降らない。
雨の予報は外れるし、台風も避けて通る。
千年前後続いているらしい祭りもあるが、見に行ったことはない。
屋台にあるちゃちなビーズを買いたい。
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締め切りを設けると焦る。
基本がのろまでぐずな人間なので、自分のスピード感のなさを突きつけられてきらいなのだ。
それなのに「今日中に仕上げよう」を考えるからよくない。
せっかちでぐずは最低のとりあわせでは。




