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『おもちゃの宿命』

お題  青空 車 人形



 わたしは廃棄されたごみ人形。

 人形としての役目を終え、棄てられた。

 もう、わたしが生きている価値は、意味は、ない。

 そもそも人形の魂になんて、ならなければ良かった……


 わたしの周りにもたくさんの、わたしと同様要らなくなったおもちゃ達が棄てられています。

 その中でも一際大きなおもちゃがあります。わたしよりも大きく、人の子程の大きさのおもちゃです。


「……あの、大丈夫……でしょうか?」


 わたしはそのおもちゃに声を掛けてみました。


「……そう言うあんたはどうなんだい?」


「え?」


 話しかけた方向ではないところから声が返ってきたのでびっくりしました。すかさず声がした方向に顔を向けるとダンディなおじさまの人形がいました。


「まあ……格好いいですわね……」


「よせや。こんな廃れたじじいに気を遣う必要なんぜ要らねぇよ」


 確かに見た目はボロボロですが……それは服や持ち物の話、顔には汚れしかついていませんの。

 わたしはおじさまに問いました。


「おじさまも……棄てられたのですか……?」


「そうだよ……そんないいもんじゃないけどな。ははっ……」


「……後悔は、ありませんの? ご主人に大事にさ――」


「後悔はねぇよ……おれたち人形は主人を選べない。一度買われたら、子どもを笑顔にさせるために全力を注ぐだけだよ……それがおれたちおもちゃ(人形)の役目であり、宿命だ」


 おじさまはわたしの言葉を遮ってまで、買われて良かったと言葉を尽くして語ってくれました。

 わたしはおじさまの言葉を聞き、感動してしまいました。


「そう……でしたわね。わたしもあの方々に拾って(買って)頂いて幸せ……でしたわ!」


 お、思わず涙が……


「はしたないですわね……レ、レディが……涙を、殿方に見せるなんて……」


「泣きたいときは泣いて良いんだぜ……おおっとお別れの時間が来たようだ」


 プー、プーという車のバック音が聞こえてきました。恐らく次のおもちゃが焼却されるのでしょう。空に一瞬影が落ちました。


「そんなっ! わたし、もっとあなたと――」


 ザザッ


 ショベルカーがおじさまの居た空間ごと掴み、拾い上げました。おじさまと距離がどんどん離れていく。


「おじさまー!」


「……あばよ。お嬢ちゃん――」


 それきりおじさまの声がわたしに届くことはありませんでした。

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