【8:僕のキャンパスライフ】
8:僕の好きな人が清楚系ビッチだった件について
【8:僕のキャンパスライフ】
「結局、好きでやってるんだろう。」
前畑が口をはさんだ。
「俺ともたまにヤってくれない?」
入江まで、何を言ってるんだ。
三島がスッと立ち上がり、2人に近づいた。
「嫌よ」
ジュリはキッパリと断った。
「仕事は仕事、私生活は私生活でしょ?」
「ギャアアアア…」
入江の悲鳴が聞こえる。
「入江君は、男優の仕事を増やせばいいんじゃないの?」
ヒメがそう言うと、入江がハッとした。
「確かに…ギャアアアア~」
三島が入江を離すと、前畑が焦り始めた。
「そういえば、セクシー女優のせいで就職が不利になったりしないの?」
「映像加工で顔が変わってるから平気。」
「えっ、本当に?」
「別人ってほどじゃないけどね。」
あれ…それならキャバクラの方が身バレしやすいのか?
「イタイイタイイタイ!」
声がする方を見ると、入江が三島と一緒に前畑を締め上げていた。
「奨学金は早く返すと安くすむし、就職しても最初は給料が安い可能性もあるでしょ?」
「そうだね」
「グスッ…」
ヒメが静かだと思ったら、静かに泣いていた。
「もう、お母さん…。」
ジュリはマイクの電源を切ってテーブルに置くと、母に寄り添った。
「ごめんね…ごめんね…」
謝るヒメを、ジュリは優しく抱き締めた。
それ以降、前畑と入江はジュリにつきまとわなくなり、前畑とも友達に戻れた。
入江が離れたせいか、少しずつだがジュリにも友達が出来始めていた。
キャンパス内の空気も、噂が広まった頃より良くなっていた。
「はぁ…」
「どうした、前畑。」
「資格試験の自己採点が低くて…」
「僕も、合格しているか怪しい。」
男女グループの笑い声が聞こえる。
あれが現実のヤりサーか…いや、偏見はよくない、落ち着け、僕。
廊下を歩いていると、ジュリの声が聞こえた。
「嫌です!」
他の女子の声も聞こえる。
「やめなよ!」
近づいてみると、一人の男がジュリの腕を掴んでなにか言っている。
「いいじゃ~ん、お金払うからさぁ~。」
おいおい…入江がいなくなった弊害か、変なやつが寄ってきているな…。
「やめとけ」
「松坂君…!」
「何だよ、お前。」
「あのさ…」
僕はそっと耳打ちした。
「えっ…マジ!?」
男は、みるみる青ざめた。
「うん」
僕は、深く頷いた。
男はサッと掴んでいた腕を離すと「今のなし!」と苦笑いをしながら言った。
「え…?」
ジュリと周りの女子たちは驚いていた。
その男は「誰にも言わないでね!」と、言うと走り去った。
「大丈夫だった?」
僕の心配をよそに、ジュリは興味津々で聞いてきた。
「どうやって追い払ったの?」
「えっと…」
僕は小声で「拉致されて、男と絡む撮影させられるぞ。」と言った。
ジュリと女子たちは、笑い出した。
「それいいね、今度からそれで追い払おう。」
「それじゃあ…」
僕が立ち去ろうとすると、ジュリが袖を掴んで言った。
「ありがとう松坂君。あの…」
「うん?」
「ライムのID教えて!」
「うん…」
僕は、にやけるのを我慢した変顔で、彼女と連絡先を交換した。
そういえば、前畑はどうしたんだろうと思ったら、少し離れたところで空気のように気配を消していた。
三島と入江がプロレス技をかけたのが効いたのだろうか、ジュリに関わりたくないようだ。
「松坂氏は、どの問題にする?」
ジュリや三島たちと関わらなければ、前畑はいつも通りだった。
「1と5と8かな…」
僕は、掲示板に張り出された前期試験の問題を見ながら考えた。
大学の試験は論文形式で、例えば10ある問題から好きなものを3つ選んで書く。
講義の内容に沿っていれば、他の文献や自身の経験、最近のニュースや考察を書いても加点される。
僕はこのテストの形式が、結構好きだ。
そんなことを考えていると、三島からライムが来た。
「マイシュガープリンセス…」
シュガープリンセスって何?
「どうしたの、松坂氏。」
「いや…何でもない。」
すぐに三島からライムが来た。
「すみません、間違えました。」
お、おう…。
「ハッ!」
サトウヒメだからシュガープリンセスか!
「松坂氏?」
「大丈夫」
何やってるんだ、あいつは。
次は入江からライムが来た。
「今日、三島と松坂の家に行っていいか?」
「何で僕の家?」
「アメフト部の先輩が来ないから。」
「別にいいけど。」
「じゃあ、夕食作ってやるよ。」
「ハイハイ」
僕は、適当に返事をして会話を切った。
前畑は来ないと言うので、四人分のお茶を買って帰った。
ピンポーン♪
僕は、玄関を開けた。
「ォイーーッス!」
「声がでかい」
僕は、近距離で大声を出されてうんざりしながらマッチョ2人を招き入れようとした。
「あれ?」
双璧の後ろに誰かいる…。
「松坂君、こんばんは。」
そこにいたのは、佐藤ジュリだった。