【4:〇〇〇〇〇パンツ】
4:僕の好きな人が清楚系ビッチだった件について
【4:○○○○〇パンツ】
「誰から聞いた?」
僕は、廊下をずかずかと歩き、エレベーターのボタンを押した。
前畑はのんびりと歩きながら答えた。
「さっきのマユミって人。」
「監督じゃなくて?」
「うん。」
エレベーターが到着したので乗り込んだ。
前畑はため息をついてこう言った。
「はぁ、共演できないなら普通にヤるしかないか…。」
「いや、もうやめとけよ!」
「何で?」
「何でじゃないだろ。」
「セクシー女優なんだからいいじゃん。」
「よくないよ!」
「ただのビッチだろ!」
開き始めたエレベーターのドアを叩いて、前畑は出ていった。
ガコンッ!と大きな音がして、僕はよろめいた。
「はぁ…」
疲れた僕は、近くのハンバーガー店に入り、暗くなった街を見ながら夕食を済ませた。
コーラを飲みながら、三島のライムを開いた。
見たくない文章を素早くスクロールする。
下の方に「ヤバい、ヒメさんが悩んでる。」と書いてあった。
こいつ、良くても悪くてもヤバいって言ってるな…。
「先輩が言いふらしたせいで、ジュリちゃんが大学で孤立してる。それでヒメさんが悩んでる。」
噂を広めたのはアメフト部の先輩か…。
原因は分かったが、対策が分からなかった。
とりあえず、その日は帰って寝ることにした。
朝、大学の講義室で僕は三島を探した。
「三島?」
三島は髪を切って明るい色に染めていた。
それよりも、5月にピチピチのTシャツ一枚なのが気になった。
「松坂!ライム見た?」
「最後の方だけな。なにそのピチピチ。」
「これヤバくね?」
すごい筋肉だと思うけど、お前の語彙力の方がヤバいわ。
「今日、撮影なんだ~。」
あ、ヤりサーの夏合宿。
「そういえば入江は?」
前畑は僕を無視して遠くの席に座っていたが、入江の姿は見えなかった。
「あいつ、ジュリちゃんのそばに居たいからって…」
「違う学科の講義を受けに行ったのか?」
「うん…」
三島が目をそらせたまま、気まずそうに答えた。
「単位を落とす気か?」
「資格試験も申し込んでなかったよ、あいつ。」
「取っとけよ…!就職で有利だろ。」
2人で渋い顔をしていると、教授が入ってきた。
僕と三島は近くの椅子に座り、そのまま講義を受けた。
昼、僕は学食で日替わりランチを食べながら三島と話した。
前畑には避けられ、入江は連絡したけど見つからなかった。
「さっきも話したけど、今日撮影だから松坂も来て。」
「何で?」
「一緒に入江を止めて欲しいから。」
大盛りカツカレーが似合うな、こいつ。
「どうすれば良いのか分からないんだけど?」
「とりあえず、入江をジュリちゃんから引き離す。」
「どうやって?」
豪快に飯を食う三島とは対照的に、僕はそっと唐揚げを箸で持ち上げた。
「今日、ヒメさんが大学までジュリちゃんを迎えに来るから、合流して…」
「うん。」
「スタジオに入るまで、ひたすら説得。」
「すごい作戦だな…。」
雑すぎないか?
「先輩達が大人しくなっただけマシだよ。」
「三島だって、僕にライム送りまくったじゃないか。」
「ゴメンって~!」
三島は手を合わせて謝ったが、スプーンは持ったままだった。
「松坂は事情を知ってるから、話しても大丈夫だったんだもん。」
「僕が噂を広めたら、どうするんだよ。」
「言ったらダメって送ったぞ?」
メッセージの中にあったんだろうな、読んでないけど。
「前畑のことは知らないけど、松坂はそういうこと言いふらすタイプじゃないだろ?」
「そうか?」
高校でクラスが同じだったこともあったが、三島とは別に仲良くなかった。
「高校同じだったし、わかるよ。」
「友達が少ないからじゃないのか?」
僕がむすっとして答えると、三島は笑いながら「違うよ。」と答えた。
夕方、大学前のコンビニに、佐藤ヒメがいた。
ジュリと入江が来ると、三島が入江の肩をがっちりと掴んで引き離してくれた。
挨拶と、買い物を済ませて移動した。
アメフト部の先輩達は現地集合らしい。
「先輩達は諦めたみたいだけど、俺は諦めないから!」
入江は終始うっとうしかった。
僕と三島は、ちゃんと講義を受けるように説得した。
入江は「うーん…」としか言わず、効果があったのかは分からなかった。
スタジオに着いた。
中に入ると、なぜかブーメランパンツの前畑が待ち構えていた。