【11:不変と変化】
11:僕の好きな人が清楚系ビッチだった件について
【11:不変と変化】
結局、前畑は僕の前ではいつも通りだった。
気持ち悪いので、僕は距離をおきたかったが、向こうはまだ、友達だと思っているようだった。
彼氏のゲイトと一緒に暮らしていて、仕事ではマユミとも共演していた。
「二人に取り合われて困ってる。」
と言っていたが、いつも自分から連絡していた。
入江と先輩二人は、ジュリがセクシー女優だと言いふらしたり、ジュリにセクハラしたりしていたが、監督が男性だけの撮影会をちらつかせたので静かになった。
それからは、飽きたのか考えが変わったのか、全員落ち着いていた。
考えが変わったのは、他の学生達も一緒だった。
ジュリが秀才だからか、女子グループが彼女の味方になった。
三島は、相変わらず母親狙いだった。
ヒメの方も、三島に惹かれているが、ジュリがいる手前、付き合うわけにもいかないらしい。
ジュリは別の学科だが、時々一緒に勉強会をしている。
今日も、何故か僕の部屋で勉強していた。
「ジュリさん…」
「なに?」
「僕たち付き合ってるの?」
「何で?」
「ふたりっきりだし…」
ショートパンツから、大きく見える素足に視線を向けた。
「今は、彼氏とか欲しくないな。」
「僕は、友達ってこと?」
「嫌なら、もう会わないわ。」
入学式のとき、勝手に清楚だと思っていた女の子はそう言い放った。
「そこまで恋人を作りたくないの?」
「松坂君だって、資格試験で忙しいでしょう?」
「そうだけど、仕事意外にプライベートでそういう相手が欲しいとか、純粋な恋愛をする相手が欲しいとか思わないの?」
「そういう仕事をしているからこそ、私生活では一人になりたいの。純愛とかどうでもいいから、放っておいて欲しいわ。」
女子は、みんな恋愛が好きで相手を求めてるのかと思っていた。
「しっかりしているね。」
「仕事でよければ、共演する?」
「遠慮しておく。」
セクシー女優だとわかったとき、ビッチと言われた女の子は、ほっとしたように笑った。
彼女は清楚でもビッチでもない、自立を目指す勤勉な女性だ。
「ふふっ…」
僕は、自分で作ったイメージに、振り回されていた自分を笑った。
あらためて彼女を見る、やっぱり好きだと思った。