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【1:入学式の清楚】

【1:入学式の清楚】


「ハッ!」

あれは高校が同じだった入江と三島!

入学式が終わって皆が移動するなか、清楚な彼女とその母親と思われる巨乳美女に挟まれている。

あのアメフトコンビめ、ちょっと人よりマッチョだからって……


「三島!」

僕は、テメェなに女と話してるんだよ?という顔で睨んだ。

ヒョロガリの僕が睨んでも、怖くないだろうけど。

「おう、松坂。」

三島は満面の笑顔で答えた。

デレデレしやがって…!大学でもモテる気だなこいつ。


「あら、お友達?」

隣の巨乳美女が、たわわな胸を揺らしながら僕の方を向いた。

でかい…いや、そうではなくて。


「同じ高校だった…」

三島が僕を紹介してくれた。

「松坂一彦です、よろしくお願いします。」

僕は、胸ではなく彼女の目をみて挨拶をした。

はっきりとしたメイクに、緩く巻かれた茶髪が目に入る。

「よろしくね。私は佐藤ヒメ、あっちが娘のジュリよ。」


ジュリと呼ばれた娘の方を見た。

間違いない、さっきまで僕が横目で見ていた清楚な女の子だ。

そして、その傍らには彼女を必死に口説いている入江の姿があった。

「何してるんだよ、入江。」

食いぎみに話しかける入江の肩を小突くと、彼女は助かったという顔をした。

「あれ?松坂?」

女に集中しすぎだろ。


僕が呆れていると、母親のヒメが娘のそばに駆け寄った。

「それじゃ、また連絡するわね。」

そして、手を振りながら娘のジュリを連れ去っていった。

「連絡、待ってます!」

三島が元気な声で、そう答えた。

お前…いつの間に?

母に手を引かれながら、ジュリは僕に軽く会釈をした。

僕は、ニヤけそうな顔を必死にこらえた変顔で会釈を返した。




あれから2週間

彼女とは学科が違うため、会うことはなかった。

男女グループの楽しそうな声が聞こえると殺意がわく大学生に、僕はなった。

もともと、素質はあったけれど。


「松坂氏!」

僕の後ろから胸…ではなく腹を揺らしながら走ってくるのは、大学で友達になった前畑だ。

「前畑、お疲れ。」

「松坂氏もお疲れ。」

「はぁ…大学生になれば、ああいうキャンパスライフをおくれると思ったのになぁ。」

前方には、楽しそうな男女グループが歩いている。

「はぁ…良いですな。女子と話せる毎日…」

「はぁ…」

2人でため息をついたその時、僕のスマホが震えた。


メッセージアプリのライムには、三島から

ヒメジュリとの合コン開催が記されていた。

「よっしゃああああ!」

僕の雄叫びとガッツポーズに、前方にいた男女グループはビクッとし、「何あれ~?」と言いながら去っていった。

その声を聞いたせいか、僕は急に冷静になった。

ヒメジュリとの合コン?

「どうしたの?松坂氏。」

「ちょっと待っててくれるか?」

「うん…」


三島にライムを送った。

「母親同伴で合コンするのか?」

まさかな~と思っていたら即答で「そうだよ?」と帰ってきた。

いやいや、何で?!母親の前で娘を口説くの?

「娘さんを、僕にくださーい!」って?

三島はおかしいと思っていないのか?

「母親はいない方がよくないか?」と三島に送った。


腕を組んで右足をタムタムさせながら待っていると、スマホを見ていた前畑が何やってるの?という顔でこちらを見てきた。

暇潰しに、前畑の前で右往左往すると、小声で「えぇ~?」と言われてしまった。

ちょっと面白くて笑っていると、三島から返信が来た。


「俺は母親狙いだよ。」

そういうことか三島ぁ!

「大丈夫?」

頭を抱える僕を、前畑は本気で心配しているようだった。

「うん…あ、前畑は合コン行く?」

「合コン…?!」

「一人で行くのは怖いから付き添ってください、お願いします。」

早口でお願いする僕に、前畑はソワソワしながら「松坂氏が一緒なら、いいよぉ~?」と、斜め上を見ながら言った。




僕たちは安い服だが、できる限りのおしゃれをして合コンに挑んだ。

彼女に会うのが楽しみだ。

入学式では偶然となりに並んだが、別の学科。

入江と三島は同じ学科だが、グループが違う。

今日は、アメフト部の先輩2人をあわせた2対6の合コンだ。

2対4でもおかしいと思っていたが、マッチョが4人もいると恐ろしく、ヒョロガリの僕とデブの前畑は少し離れて歩いた。

不安に感じ始めたのは、くたびれた服を着た無精髭の男が案内役として合流したときだった。

そいつが誰なのか、これからどこへ行くのかも分からなかったけど、早く彼女に会いたかった。


しばらく歩くと、雑居ビルに入った。

部屋に案内されると、そこは撮影スタジオのようだった。

彼女だ!淡いピンクのワンピースに白いカーディガンを羽織っている。

かわいい、やはり清楚だ。


となりには母親と髭に分厚いメガネをかけた60代くらいの男性が立っていた。

「ここでお待ちください。」と、案内役の男が両手を広げて立ちふさがった。

彼女はもじもじしていて、こちらを気にする様子もない。

母親のヒメは、ニットのセーターで大きな胸をより一層大きく見せている。

胸を注視していると、となりの男性に「どうですか?監督。」と言った。


え、合コンじゃないの?監督ってなに?

少しずつ生じていた不安が、一気に広がった。

「4人は合格、2人は失格。」

突然、失格と言われた僕たちは固まった。

「それではご案内します。」と、案内役の男がマッチョ4人を奥へと連れていった。

監督と呼ばれた男性は、彼女と何か話し始めた。


「ごめんね~!」

佐藤ヒメは、大声で謝りながらこちらへ走ってきた。

「これ、御車代。」

「あの、これって何ですか?」

「ジュリは今から、撮影なの。」

「撮影って……」

交通費の入った封筒を受け取らない僕に、母親は諦めたように言った。

「ジュリは、セクシー女優なの…。」


……嘘だ!

「うっ…」

僕は嗚咽をもらした。

それとは裏腹に、男達の歓声が聞こえてくる。

何をするのか知ったのだろう。

彼女は入学式と同じように、僕に軽く会釈をした。

僕は会釈を返すことなく、ただ泣いていた。


悲しそうな顔で僕の手に封筒を握らせると、母親は足早に戻っていった。

前畑の鼻をすする音が聞こえ、顔を見ると少し泣いていた。

彼は、僕の背中をポンポンと優しく叩いてくれた。

「よし、はじめよう!」

「ハイッ!」

監督の号令で、清楚なセクシー女優の撮影が始まった。


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