山田陽一の場合
俺の名は山田陽一。なにも取り柄のない男だ。
そんな俺がトラックに引かれ、異世界に転生した。
田舎に転生、可愛い幼なじみ。将来冒険者になって頑張ろうと誓い合った。
俺は思う。
きたんじぇね・・・・・・と。
今はやりのあれだ。
追放系! 主人公。
案の定幼なじみにはすばらしい才能があり、俺にはなにもなかった。
よぉーしよしよし。
俺の野望に一歩近づいた。
これで下手に中途半端に才能があったら詰むしな。
そして噂を聞きつけた勇者が来て、俺は荷物持ちという形でパーティーに無理矢理入った。
俺が思うに、勇者は俺が疎ましく、塵をみるような目だな。
いいぞいいぞいい感じだ。
勇者の前では情けない表情をしながらも、内心にやにやしていた。
幼なじみも、だんだん俺を汚物をみるような目で見ていた。
ふっ、今はそれでもいい、最終的に良い想いをするのはこの、お・れ・だ。
勇者、はぁざまぁでもされろ。追放系主人公はこの俺だ。
聖女や聖騎士も加入していよいよ現実味を帯びてきた。
そして・・・・・・。
~SS級ダンジョン五十階~
「すまないが、お前は追放だ」
「何でだよ! 俺がなんかしたのか」
勇者が我慢ならないといった表情で言い、俺は反発する。
とうとうきたぁ~。
内心はうきうきしていたが。
「なぁみんなはどう思うんだ。俺がいたほうがいいよなぁ」
懇願するように俺は言う。
「いらない」
「あなたを見てると虫酸がはしります」
「そうよ、あんたなんかくその役にも立たないしいらないわよ」
そういって勇者一行は去っていく。
「待ってくれよ、行かないでくれ~~」
内心高笑いしながら、俺は慟哭する。
くそ勇者め、今に見てろ、俺が追放系主人公としてハーレムでざまぁな展開にしてやるぜ。
ここで、新しい仲間が来るか、俺の秘められた力が覚醒するのか、さぁどっちだ。
俺は高々に手を広げた。
~一時間後~
あれっなにもない、そんなはずない、きっとここにいるのがいけないんだ、ダンジョン帰還系だったんだ。
俺はダンジョン帰還を目指し・・・・・・。
最後に見たのは・・・・・・。
ドラゴンの・・・・・・。
口だった。
森本○オさんのナレーションが聞こえた気がした。
~冒険者ギルド~
「ようやく、ヤーマダさんを追放したのですね。うちのギルドとしても困っていたのです。高圧的な態度に、職員や女冒険者への卑猥な言動。勇者様のパーティーじゃなかったら、とっくに追放しているところでした」
受付嬢が喜んでいる。それはもう爽快に。
周りの冒険者も手を叩いて歓迎している。
「でも、あそこに置いていって良かったのかな。今頃死んでいるかもしれないし」
勇者は普通に良い奴だった。
今まで、悪評だらけの山田を見捨てず、きっと改心すると見守っていたのだ。
「いいのよあんな奴、幼なじみだけど、いつもにやにやしてずっと気持ち悪かったし、色目使ってくるし、視線は胸ばっかみてるし、ほんときもかったの」
「私はお風呂を覗かれました」
「尻触られた」
居なくなって心底良かったと言わんばかりの三人。
「そうだね、この話題はここまでにしようか。これからの冒険楽しみだね」
「うん」
「ええ」
「はいっ!」
そして、勇者一行は無事魔王を倒し、仲良く暮らしましたとさ。
山田陽一
失敗原因:追放系ざまぁと決め込んで好き勝手やったこと。