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カースト最底辺ぼっちの俺が、カースト最上位の彼女に嫌われた結果  作者: 男子校でも恋がしたい!
第二章 陰山黒人は犠牲を払う
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第二三話 「意味不明な感情」


 中野さんから陰山君の過去の話を聞き、それから一夜過ぎた火曜日。


 私は、朝からあまり気分が優れなかった。

 その理由は、寝不足というのもあるだろうけど、やはり大きいのはずっと気にかかっていることがあったからだと思う。


 気にかかっていることとは、もちろん陰山君のことだ。

 陰山君がどうして私を助けてくれたのか?あの日――中野さんが語った過去の中で、どうして陰山君はあんな行動にでたのだろうか。


 考え始めれば、疑問は尽きることはない。

 でも、その疑問一つ一つについて深く考える時間も私にはなかった。


 それは、私が何もしていなくても、私の友達がどんどん寄ってくるからだ。

 こんな言い方をすると私が嫌がっているように思えるが、そんなことはない。私はみんなと話せてもちろん嬉しいし、楽しい。


 でも、なんだか一人の時間があってもいいかな、とも思う。今も一人ぼっちでいる陰山君に比べたら、こんなのは贅沢な考えなのかもしれないけど。


 そんなこんなで休み時間には友達と喋って、授業が始まればノートを取りながらも別のことを考える、を繰り返すこと四度。

 時刻は正午を回り、昼休みの時間が訪れた。


 昨日みたいに陰山君のところへ行こうか、とも一瞬考えはしたが、その考えは自分ですぐに却下する。

 陰山君に、用もないのに毎日話しかけてくる面倒くさい奴とは思われたくないからだ。


 ……あれ?なんで私、そんな風に思われたくないんだろ?


「白乃、学食行こー」


「ん?」

 そこに立っていたのは、青海だ。

 今日はお弁当だけど、向こうで食べてもいっか。

「うん、行こっ」


 お弁当袋を片手に、私は青海の後ろをついて、食堂まで歩いていった。



 昼休みが終わり、午後の授業が始まる。

 しかし、午後も授業の内容は頭に入ってこず、頭の中ではずっと他のことを考えていた。

 気付けば授業は全部終了し、HRが始まった。


 私は、思わずため息をついた。

 なんだか、今日はとても無駄な一日を過ごしてしまった気がする。

 それもこれも全部、ずっと陰山君のことが気にかかっているからだろう。


 こんなことならいっそのこと、直接彼に色々気になっていることを聞いてしまおうか。

 でも昨日、水曜日に何かをやったことすら陰山君は否定した。だから、直接聞きにいっても意味はない気がする。


 ああでもないこうでもない、とうんうん唸っているうちにHRも終わってしまった。

 クラスのみんなは、各々立ち上がって帰る準備をし始めた。


 私も帰るか、と思った時に、

「白乃、帰ろ」

 とクラスの女の子に誘われ、私はすぐに頷こうとした。


 でも、それは途中で止める。

 ある姿が視界に入ったのだ。それは、中上が陰山君の胸ぐらを掴み、どこかへ連れて行こうとしている姿だった。


「あー、ごめん。また今度っ!」


「う、うん。オッケー」


 中上に引きずられて出て行く陰山君を見て、「また明日!」という声に右手をあげるだけして、私は考えなしに教室を飛び出して後を追った。


 中上と陰山君が、そのまま階段を上がっていくのが目に入る。

 私は、ついて行くかどうか少し迷った末に、音を立てないように階段を上がっていった。


「お前さぁ、自分がやったこと分かってる?」

 中上の声だ。とても不機嫌そうなのが、声だけで分かる。


「陽川とのあれか?」

 対する陰山君は、どこか落ち着いている様子だった。


「そう。体育館に流したことも、ツイッターにアップしたことも、全部お前でしょ?」


「両方直接やったのは俺じゃないけど、まあ俺がやったよ」


「何で?」


「え?」

 陰山君は戸惑ったみたいで、変な声をあげた。


 私は中上のことが嫌いだけど、でも今だけは彼女のことを応援する。彼女の聞いたことは、私が聞きたかったことそのものだったから。


「だから、陽川を助けたのは、何で?」


 暫しの沈黙。しかし、それは陰山君の声によってすぐに破られた。


「そ、そりゃあ、間違ってるから。陽川が、お前にいじめられてることが」


 陰山君はちゃんと答えを返したが、それは私の望んでいる答えじゃなかった。この答えは、先週の水曜日に中野さんとの会話の中で聞いた。


「間違ってる?そんなこと言うけどさ、この学校の中だけでも、いじめられてる奴なんて他にもいる。なのに、何で陽川だけを助けんだよ?」


 中上の言うことにも、一理ある。


 なんで私だけを助けたのか?

 私のいじめは、自分が直接の原因だったから?それとも、私の境遇が中野さんのに近かったから?


 それとも、私が特別だったから?

 もしかして、陰山君は、私のことを……


 いやいやいやいや、そんなはずないって!

 それに、もしそうだったとして、私になんの関係があるっていうの?


「俺は、別に俺が知らない人がどうなろうと知ったこっちゃない。ただ、多少なりとも知り合った人がいじめられてたら、夢見が悪いだろ?」

 その答えを聞いて、なぜか落ち込んでいる自分がいて、それが本当に不思議だった。


「ならさ、あたしのこと助けろよ」


「は?」


「あたしとも、お前は多少は関係があるだろ?それで、あたしは今いじめられてる。どうだ?助ける理由は十分だろ?」


 中上が言っていることも、確かに筋は通っている。

 ならば、陰山君が何と言い返すのか、それがとても気になった。


「いや、それは違うだろ。お前がいじめられるのは、間違ってないからな」


「何が間違ってないから、だ。ふざけんなよ!あたしはなぁ!お前のせいで、お前のせいでぇ!」


 ゴツッという鈍い音が聞こえる。


 え?何?殴られたの?

 どっちがどっちに?中上が陰山君を?

 どうしたらいいの?止めに入るべき?それとも、先生でも呼ぶべき?


 意を決して間に入ろうと階段を上り始めた時、上からも下がってくる音が聞こえた。

 どうやら、私が考えていたように喧嘩には発展せず、ただ一方的に陰山君が殴られて終わったようだ。


 中上への怒りが湧くより先に、大事に至らなくて良かった、と安心した。しかし、それと同時に焦り始める。


 どうしよう。陰山君か中上か知らないけど、どっちかが階段を降りてくる。

 不自然でもいいから急いで階段を駆け下りるか、ここに留まるか。


 相手が陰山君なら別に鉢合わせてもいいけど、中上なら私の顔を見て怒るかもしれない。それはかなりまずい。

 どうするか、と考えすぎて立ち止まっている内に、足音は近づき、足音の主が現れる。


 それは、殴られたせいで頬が赤くなってしまっている、陰山君だった。


 私は、その姿を見た途端、全速力で階段を駆け下り、そして教室へとダッシュで走り出した。


 助けてくれてありがとう、だとか何でそこまでしてくれたの?とか、痛くなかった?とか聞かなければならないことが多すぎて、混乱したのだ。



◇◇◇



 変に思われてないかな?

 急に走りだしちゃったけど、大丈夫だったかな?


 新たな悩み事を胸に、私は水曜日を迎えた。


 悩み事が増えたので、もちろん私の気分はさらに落ち込んでいる。


 それは周りから見ても分かるようで、今日は昨日ほど私の周りが騒がしくなかった。

 とはいえ、他のグループに比べれば、一番うるさかったけど。


 私は、友達の話を聞きながら、適当に相槌をうち、陰山君の方を向いて、考え事をしていた。

 そして、しばらくすると授業が始まる。でも、授業の内容なんて集中できるはずもなかった。


 中野さんの話、陰山君の言葉が次々に思い出され、私の思考を乱していく。


 本当に、わけが分からない。


 すると、突然陰山君がこちらの方を向いてきた。

 私は、自分でも理由は分からないけど、バッと顔を逸らした。そして、それは「ど、どうした、白乃?」と周りに戸惑いながら心配されるほど、俊敏な動きだったらしい。


 はぁー。

 私は心の中でため息をついた。


 自分で自分が分からなかった。


 私は一体、どうしたいのだろうか。


 私は、無意識の内に陰山君の方を向いていたらしく、ふと陰山君と目が合った。

 そして、これまた無意識に顔を背ける。


 あー!やってしまった!

 すぐに、私は後悔する。


 さっきのは陰山君に気付かれてなかったかもしれないけど、今のは完全に目があってから顔を背けてしまった。

 それは、あまりに不自然だ。


 変だと思われてないだろうか?


「もう、やだ……」

 私は、そう周りに聞こえるか聞こえないかくらいの音量で言って、机に突っ伏した。


 その時、チクリと胸を刺す痛みを感じたが、それは無視した。


 それを認めるには、私が臆病すぎたのだ……


明日で陽川目線の話は終わりです。

陽川目線の話が長引いてしまい、申し訳ありません。


ブクマと評価と感想をありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] いやもう...なんというか... この状況でなお、最優先される情動が主人公への恋愛感情なんですか... 彼に興味を抱くなとは言わないが、それより現状優先すべきことはいくらでもあるでしょ…
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