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カースト最底辺ぼっちの俺が、カースト最上位の彼女に嫌われた結果  作者: 男子校でも恋がしたい!
第二章 陰山黒人は犠牲を払う
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第二一話 「扉越しに聞こえた声」


 最低、最低、最低!

 あんな人だなんて思っていなかった!


 私は教室を飛び出し、あてもなく走り続けた。


 でも、陰山君は確かに間違っていない。

 いくら陰山君の悪事を私が知ることになったところで、私にはどうすることもできないんだ。


 こんなにも自分が無力だとは……。


 少し前までは、学校一の美少女だなんて渾名をつけられて、色んな人から()()()()されて……

 なのに、気づけば周りには誰もいなくて、私はただただ無力で、何もできなくて……


 私は、どうすればいいの?


 だから私は逃げた。


 考えることから、認めることから、立ち止まることからひたすら逃げて走った。


 でも、私の体力には限界がある。


 私は、荒い息をつきながら、倒れるように廊下に寝転んだ。

 この姿を他人に見られたらどう思われるか、なんてそんなことは考えもしなかった。


 正直、もうそんなことはどうでもいい。もう悪足掻きするのもやめよう。

 友達はみんな離れた。私を助けようとしてた人には裏切られた。


 だから、もう全てを諦めよう。

 学校一の人気者にならなくたって、私は生きていけるんだから。


 友達がいなくたって、別に私は……


「白乃?なに、してるの……?」


 私は、ハッとして起き上がり、立って相手の顔を見た。そこにいたのは、さっきも会った青海だった。


 どうしよう……。

 話そうか?


 でも、怖かった。

 話して、また信じて、また裏切られるのが怖かった。


「ごめん……」


 青海に聞こえているのかどうかすら分からない位の音量でそう謝る。『待って……!』という制止の声に耳を塞ぎ、私は再び走り出した。


 そうだ、もう帰ろう。

 帰って、全て忘れてしまおう。


 でも、下駄箱を見て私は思い出した。


「そっか。私の制靴、まだ体育館に……」


 しかし、体育館は今合唱コンクールの最中であり、そこへ靴を取りに行けば、強制的に合唱コンクールに出させられるだろう。

 とはいえ、校内履きのまま帰るというのは、なんだか気が引ける……。


 あれ?そう言えば、青海はなんで廊下に……?

 合唱コンクールは中止になったのだろうか。


 よし、と心を決めて、偵察がてら校舎の裏を回って体育館へと向かう。その時に、大勢の体育館から出てくる人を見かけたため、合唱コンクールは中止になったんだと私は確信した。


 私は、少し急ぎ足で体育館に戻った。


 ちょっと乱れた息を整えながら、今日だけで二回目、体育館の扉を開けようとした……。


 でも、その時何かが聞こえてきて、扉を開けようとする私の手は止まった。


 それは……中野さんの声だった。


 男子女子両方から人気はあるのに、人と話しているところはあまり見かけない、いつも大人しい中野さん。

 その彼女が………激怒していた。


 しかも、その内容は……


「どういうこと……?私を助けようとした?黒人……って、陰山君が?何を、言ってるの?」


 意味不明だ。

 中野さんは、陰山君が私を助けようとしたことに激怒していた。でも、陰山君は私のことを助けようとなんてしてない。

 なら、なんで?



『だって、間違ってるだろ。間違った情報に踊らされて、そのせいで陽川がいじめられて。こんなの、間違ってるだろ』



 ふざけるな。

 私は、無意識の内に扉を殴ろうとしていた手を止めた。それほどまでに、私は多分今、人生で一番苛立っている。


 なにが間違ってるだ。

 陰山君は、この男は、私がいじめられることが間違いだと、そう言った。

 でも、私がいじめられたのは、全部この男のせい。三週間くらい前、この男が私のリコーダーを盗んだ所から全部始まったというのに!


 そして、次に聞こえてきた言葉に、私は再び耳を疑った。

 陰山君が、傷ついた?何を、言ってるの?


 ああ、そっか。


 多分、こいつは、中野さんに嘘をついたに違いない。

 私を助けようとして自分が傷ついたとか、そんな嘘を……


 パチン!

 そんなことを考えている間に、乾いた音が響く。


 私自身がさっき聞いた音だったからか、私はすぐにそれがビンタの音だと気付いた。


 そして、中野さんが体育館を出て行こうとしていることを察して、私は小走りで、柱の陰に隠れた。

 案の定、中野さんは体育館から出て来て、私には気付かずにどこかへ行ってしまう。


 これで、中にいるのはあの男ただ一人なはずだ。


 私は、中野さんに何を吹き込んだのか、と問い詰めるため、意を決して扉を開こうとし……そしてやめた。


 中から、何かが聞こえてきたのだ。


 それは、鼻をすする音で、床を叩く音で、悪態をつく声で、すすり泣く声で……


 なんで?

 なんで、陰山君が泣いてるのよ?


 私はその日、男の人が泣くのを初めて聞いた。



◇◇◇


 結局、水曜日は校内履きで帰路についた。


 そして、驚くべきことに、なぜかその日の夜、たくさんの人からラインが送られてきたのだ。

 そのラインは、大体の人が三日か四日振りくらいで、内容は他愛のないことだったけど、とても嬉しかった。

 でも、私にはなんで今日になって、みんながラインを再びくれたのかが分からなかった。


 そして、次の日の木曜日。


 私が学校につくとすぐに、里美と梨花が話しかけてくる。二人とも、しばらく話していなかったはずだ。それどころか、二人に続いて男子女子問わず、次々に人が話しかけてきた。

 しばらくすると、私の机の周りは、二週間くらい前のように、すっかり騒がしくなっている。


 でも、私が『なにかあったの?』とみんなに尋ねても、『思い出したくないでしょ?いいんだよ、別に言わなくて』なんてことを言って、はぐらかされた。


 ますます、わけがわからない。



 その日の昼休み、私は久しぶりに青海に誘われて、二人で昼食を取っていた。

 昨日、私が廊下で寝転んでいたことを聞かれるかと思ったのに、青海が言ってきたのは、まるで別のことだった。


「どういうこと……?それじゃあ、昨日の陰山君と私の会話は全部、全校生徒に聞かれてて、しかもツイッターにもあげられて……」


「……うん」


 ああ、そういうことか。


 なぜか昨日の夜から急に話しかけてくれるようになった友達。


 つまり、私が陰山君をいじめた、という噂がデマであると全校生徒のみんなが理解して、しかもそれがネット上でも知られた。

 なので、私と話したらいじめられるとか、ネットで晒し者にされるとか、そういう恐れがなくなり、私と話してくれるようになった、というわけだ。


 でも、そんな都合のよいことが起きるのだろうか。


 これは、あまりにも私に都合が良すぎる。

 あの会話一つによって、私が失ったもの全てが戻ってきたのだ。


 まるで、これじゃあ……


 その時、校内放送がかかった。


「あれ?白乃、教員室に呼び出しだって。なんだろね?」


「う、うん。なんだろう?」



「え?返してもらえるんですか?」

 私は、素っ頓狂な声を出した。


 それほど、これは意外だった。


「あ、ああ。すまなかったな、陽川。いやー、君を疑うような真似をしてしまって、本当に悪かった」


「い、いえ。それは別に構わないのですが……」


 教員室。

 青海と別れてすぐに向かい、私は先生にある鍵を返してもらっていた。


 その鍵とは、あの噂が出回ってから、先生に回収された、屋上の鍵のことだ。

 それが、今日返ってきたのだ。


 これまで酷い目に遭ったぶん、戻ってきているのだろうか。

 まるで、神様がいるみたいだ。


 私は、どこにいるとも知れない救世主に感謝の言葉を頭の中で告げた。



◇◇◇



 金曜日。

 この日も、朝から私の周りに人が集まって騒がしかった。


 しかし、なんでだろうか。

 望んでいたはずなのに、いざ友達が急に戻ってくると、反応に困る。


 ここ一週間で、一人の時間に慣れすぎたのだろうか。


「ごめんね。ちょっとトイレに」


 そう告げて、『あ、私も行くよ』という声を聞かなかったことにし、一人で教室の外に出た。


 そして、そのまま屋上へと向かう。


 私は、昨日返してもらった鍵を使って扉を開け、屋上に出た。


 最後に来てから一週間くらいしか経っていない。

 だというのに、なぜかとても久しぶりなような気がした。


 ふぅー、と深呼吸する。


 そうして、眼下の光景を眺めながら時間を潰していると、声が聞こえてきた。


 誰の声だろう、と耳を澄ませば、聞こえてくるのは陰山君と赤音ちゃんの話し声。


 なんでこの二人がここで話してるの?


 なんて疑問に思っている間に、赤音ちゃんが『屋上の方がいいんじゃない?』なんて言って、屋上の扉を開けようとしてきた。


 私は、なんとかドアノブを掴み、赤音ちゃんが開けるのを阻止した。

 一瞬、開かれそうになったし、赤音ちゃんは訝しがっているけど、大丈夫だったみたいだ。


 私は、ほっと息を吐く。


 二人は、なにかを話し始めたようだ。

 私は、人の話を立ち聞きするのはよくない、と思いつつも、耳を扉にくっつけて二人の会話に耳を傾けた。


 陰山君の作戦?

 赤音ちゃんが体育館履きと制靴を交換したの?

 青海が、あの会話をツイッターにアップしたの?


 次から次へと、耳を疑うような情報が流れ込んでくる。


 これも嘘?

 中野さんにしてたみたいに、これも嘘なの?


 でも、なんか違う。

 二人が話してることが本当なら、赤音ちゃんの方も、陰山君の作戦に加担してる。

 なら、嘘じゃないの?


 私を助けたっていう、一昨日の言葉も嘘じゃないの?


 あの会話自体が私を助けるためっていうなら、あの会話一つで、私が失ったものが全て戻ってきたことにも納得がいく。


 でも、でも、でも!


 一昨日、あんなに怒鳴り散らして私を傷つけて、リコーダーを盗んだのは自分だって自白して……あれが全部作戦だったって言うの?


 そんなの、有り得ない。


 それに、そんなことしても陰山君には利益はないし、むしろ傷つくことに……


『あなたが傷つくのは、間違ってないの?』


 陰山君に向けられた、中野さんの言葉がフラッシュバックする。


 え?本当なの?


 全部が全部、本当に陰山君が私のためにしたことなの?


 分からない。分からない。分からないよ!


 ああ、そうだ。


 陰山君と赤音ちゃんの会話の中で、ある人の名前が出てきた。

 確かに、彼女も一昨日はおかしな行動をしていた。なら、彼女も一枚噛んでるのだろうか。


 うんうん、そんなことを考えるくらいなら、聞いた方がいい。

 彼女は、私が一番信頼してる親友。だから、きっと嘘はつかないはず。


 そんな思いで、私は昼休み、青海を呼び出した。


「ねぇ、青海。あの日のことってさ、全部私のための陰山君の作戦だったの?」


 そう聞かれた青海は動揺し、口を開いては閉じてを繰り返し、言おうかどうか迷っている様子だったけど、でも最終的には口を開いてくれた。


「ごめんね、白乃。でも、そうだよ。あれは全部、白乃のための陰山君の作戦」


21を二十一と二一のどちらにするか迷った結果、二一にしました。

分かりづらいようでしたら、感想で言って下されば変更します。


ブクマと評価と感想をありがとうございます。

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