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カースト最底辺ぼっちの俺が、カースト最上位の彼女に嫌われた結果  作者: 男子校でも恋がしたい!
第二章 陰山黒人は犠牲を払う
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第五話 「転落」


 日付は変わって火曜日。


 既に時間は十二時を過ぎている。昼飯も食べ終わり、他にやることが一つもなくなった俺は、ただ周りをぼーっと見回し、取り留めのないことを考えていた。


 あいつの名前はなんだろうな、とか名前がわからないあいつとあいつは何してんだろうな、とかを考える。

 俺は、大半の人間の名前は知らないため、自分で渾名を作ったりするのだが、それがあまりにも被りすぎていて自分でもよく分からなかったりする。


 ふと、ある席が視界に入った。


 その席は、普段ならば大勢の人間が集まり、大層賑やかでムカつく所である。

 しかし、今日、その席には一人の少女が座るだけで、周りには誰もいなかった。


 そこら中で当たり前に起こる光景であるのに、なぜかその席だけ、周りに誰もいないと違和感を感じる。


 勿論、その席に座る人物とは陽川白乃だ。

 昨日中上が勝ったと言っていた、陽川白乃である。彼女が今孤立している大体の原因は俺にもわかっている。


 第一に、彼女自身の問題だろう。

 彼女には、これまで作ってきた大きな人脈があるため、彼女が積極的になれば、また今までの騒がしい光景が戻ってくることだろう。

 しかし、それは彼女が積極的になれば、の話なのである。中上の説明通りであれば、彼女は自分から行動せず、他の人間の言いなりになることを良しとしているのだ。


 そして、もう一つは周りの問題。

 これについては中上から聞いていないし、俺も固まった人間がどう行動するのか知らないため、周りが何を考えているのかは俺にはよく分からない。

 しかし、嫌いではないのに、何となく触れてはいけない、という空気があるのだ。


 そんな二つの問題により、今日も彼女は孤立しているのだ。


 と、突然目の前に誰かがやって来て、陽川が見えなくなる。


 誰だ?と思い、顔を見れば、そこには最近見慣れてきた彼女だった。

 中野は、少し首を傾げ、俺を見下ろしていた。


「黒人君、さっきから何をしているの?ずっと陽川さんの方を見ているけれど、それではまるでストーカーよ?まるでではなく、もしや本当のストーカーなのかしら?」


「いや、別にストーカーをしていたわけじゃない。それに、あいつ個人に興味があるわけでもない。ただ、少し気になることがあってな……」


「気になることって?」


 正直に言うべきだろうか。いや、言うことは全然構わないと思うのだが、それをリア充にでも聞かれたらと思うと、少し怖いのだ。

 しかし、幸いにもリア充は自分のグループに夢中であるか、それとも外に出て行っている。

 今一人でいて、リア充と呼べる人物は、それこそ陽川くらいなものだろう。まあ、陽川に聞かれるのが一番まずいのだが。


「いやな、あんなやつでもここまで転落するんだなって、そう思っただけだ」


「考えてることが最低ね……」


「いや、でも実際そうだろ?あれだけ友人が多くて、先生からの人望だってある。そんな奴がたった一つのことをきっかけに落ちた。途中に何があったかは詳しく知らないが、本当に恐ろしいこった」


「えぇ、そうね。恐ろしい、ということに関しては同感よ。本当に、人というのは簡単に掌を返す。これまでいじめられていたあなたが今は普通にしていて、これまでクラスの中心だった彼女が、今は隅に追いやられている……」


 そこで一度中野は言葉を区切り、顔を陰らせた。

「だから、人間関係は怖いのよ……」

 そして、やけに実感のこもった声でそう続けたのだった。


「なんだ?昔に何かあったのか?」

 彼女のその思わせぶりな言い方に、俺は思わずそう聞いていた。


「まあ、少しね。昔、色々あったから……」


「ほーん」


 気のない返事をしたが、少し気になる。だが、こういうことはあまり踏み込まない方がいいのだろう。

 深い所に踏み込めば、帰ってこれなくなる。


「それにしても、黒人君、あなた昨日のあれはないわよ」


「あ?」


 中野が露骨に話題を変えてくる。しかし、これ以上こんな話をしていても、正直気が滅入るし、正直ありがたい。

 ここは、中野に乗った方がいいだろう。そう思った。それにしても、昨日のことと言えば、あれだろうか。


「昨日、俺が紹介した美味いラーメン屋のことか。不味いというのは私の間違いでした。本当は美味しかったですってか?」


「違うわよっ!どう勘違いしたらそう思えるの?普通、あんなに辛い物を人に食べさせる?」


 昨日、お母さんと陰山さんが一足先に帰り、俺と中野は二人で夕食に行ったのだ。


 俺は、キッチンに入れないため、夕食は基本お母さんに作ってもらう。しかし、それだと飽きたり、お母さんがおらず食べれなかったりすることがあるのだ。

 そんな時、俺は外へ行きたくないと主張する自身の『引きこもり精神』を押しのけて、夕食を食べに夜の町に繰り出す。


 そんな生活が三年も続けば、ここら辺の飯屋には自然と詳しくなる。

 だから、俺はそんな中でもオススメなラーメン屋を中野と二人で行ったのだ。

 しかし、店を出た瞬間から、非難の嵐である。


「お前にはあの美味しさが分からないのか。ハッ。まだまだだな」


「あのねぇ、美味しさがどうとかじゃなくて、辛い物には向き不向きがあるでしょう!?そこら辺、気遣いなさいよ!」


「俺も辛い物が得意なわけじゃない。でも、あれは辛いのが苦手でも美味しいだろ。それがわからないとはまだ子供だな」


 その後も、売り言葉に買い言葉で、俺たちは二人でギャイギャイ言い合っていた。

 その姿は傍からみれば、なぜか集まると調子に乗ってうるさくなる、よくいる隠キャに見えるだろう。


 しかし、そんか最中俺はふと気付いてしまった。彼女の視線に。

 悲しげでありながら、優しそう。そして、安心しているようにも、羨ましがっているようにも見える目でこちらを見つめている、陽川白乃に。


 それを見て、俺は急に胸が苦しくなった。



◇◇◇



 時刻は既に放課後。

 俺は、珍しくまだ学校に残っていた。


 特に目的という目的もなかったわけだが、ただ帰るのが面倒だと、そう感じたのだ。

 全てに対して無気力、というのは典型的な引きこもりぼっちの症状である。


 しかし、俺はこうして学校に来ているのだから、まだ引きこもりぼっちではない。

 だって、引きこもると陰山さんにボコされるからね!


 と、お得意の意味のない脳内会話を繰り広げながら、俺はドアを開けた。


 その中にいたのは、陽川白乃ただ一人。

 俺が気まずくなってトイレに行く原因を作った陽キャどもは帰ったらしい。


 だが、このまま陽川と二人きり、というのは更に気まずいわけだし、ここは帰ろう、と俺は自分の鞄を持ち、いそいそと教室から出て行こうとした。


 しかしドアに手をかけたその時、陽川の後ろ姿が視界に入る。いつもなら、背中が見えない程に周りに人が集っているのに、今は何も隔てるものがなく、彼女の後ろ姿が見えた。


 そして、それがあの忘れもしない、彼女のあの光景に重なる……。

 それと同時に、昼に見た彼女の視線を思い出す。


「おい、陽川」


 俺は、自分でも知らない内に、陽川にそう話しかけていたのだった。


ブクマ、感想、評価ありがとうございます。


最近ゆっくりめで進んでいるこの作品ですが、次回から話を動かしていきます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 母と妹の影響か、主人公の精神年齢がすごく幼く見える。 小学生が高校生の振りをしているような。 物語の中で精神的に成長すると良いんだけど。
2020/01/22 01:42 退会済み
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