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カースト最底辺ぼっちの俺が、カースト最上位の彼女に嫌われた結果  作者: 男子校でも恋がしたい!
第一章 陰山黒人はスタートラインに立つ
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第十五話 「ぼっちだってたまには勝つ」


「君は、陰山赤音……。と、いうことは……もしかして、君は陰山君の……!」

 入ってきた陰山さんの方を見て、上沢は驚きを露わにした。やはりトップカースト、陰山さんのことは知っていたらしい。


「そう、妹。不本意だけど」


「なら、君も僕のことを嵌めたのか……?」


「まあ、そうなるかなー。ま、私は私に被害がでないようにしただけだけどねー」


「それよりも、その手に持ってるのは……」


 上沢は、陰山さんが手に持つ物を指差した。それは、マイクである。


「あ、これ?みど……じゃなくて、中野先輩に頼まれたから、言われた通りにしただけ。まあ、私放送部の部長なわけで、多少の融通はきくし?」


「な!て、ていうことは、つまり……」


「今までの会話は、全て全校放送で流されたわけよ、上沢君。陽川さんも、他のあなたの友達も、全員が全てを聞いていたわ」

 中野が、陰山さんと上沢の会話に割って入る。それは、まさしく愛する人からの死刑宣告である。


「そ、そんなわけない!だって、ここには聞こえていないからな。嘘なんだろ?脅しているだけなんだろ?」


「ここは、旧校舎だから聞こえないだけよ。黒人君、窓を開けて」

 従わない理由もないわけだし、俺は中野に言われたままに窓を開けた。


「あなたの悪事は、学校中が知ったわ」

 『あなたの悪事は、学校中が知ったわ』


 校庭を挟んでいるため微かだが、新校舎で放送される声が、少し遅れて聞こえてくる。


 それを聞いた上沢は、ハハハ、と自嘲げに乾いた笑い声を溢した。


「その通りみたいだね。僕は終わったってわけか」

 『その通りみたいだね。僕は終わったってわけか』


「えぇ、そういうことになるわね」

 『えぇ、そういうことになるわね』


「まあ、自業自得かな」

 『まあ、自業自得かな』


「そうね。って、黒人くん、うるさいから窓閉めて」

 『そうね。って、黒人くん、うるさいから』


 ピシャリと、俺は窓を閉めた。


「というより、赤音ちゃん、放送止めて」


「わかった」

 陰山さんは教室の外に出て行った。中野に言われた通りに、放送を止めに行ったのだろう。

 なぜだろう。陰山さんは、中野には従順なようだ。


「僕は教室に戻るよ」

 上沢は、重い足取りで歩き出し、陰山さんの後を追うように教室を出ようとした。


「おい。でも、今戻れば……」

 今戻れば、上沢は大変なことになる。

 そう、元々ぼっちだった俺とは比べ物にならないような、苦痛を受けることになるだろう。


 少し前ならばそうなっても、ざまぁみろ程度にしか思わなかっただろうが、真犯人が別にいると分かった今は、同情くらいする。


「君は優しいんだな。でもな、俺は元々こうなるべきだったからいいんだ。それと、同情なんかするなよ。同情されるのが君は嫌いなんだろ?それなのに、同情するのは矛盾しているぞ?」


「確かにそうだが……」

 自分でも、おかしなことを言っていることは分かっている。だが、少し前の俺と今の上沢の状況は、とても似通っている。だからこそ、見て見ぬ振りはできない。


「僕を嵌めた犯人は確かに別にいる。でも、君を嵌めたのは他ならぬ僕だ。僕は、報いを受けるべきなんだよ」


「ああ、それもそうだな。なら、存分に報いを受けてくればいいさ」

 上沢自身が、そうしたいと言うならば、そうすればいいのだろう。さっきの懺悔を聞いて分かったことだが、彼自身は俺を嵌めたことを深く後悔している。


 上沢は、その重い足取りのままで、自分の居場所へと帰って行った。もう消えてしまっているかもしれない、自分の居場所へと……。


「それじゃ、放送は止めたから」

 と、そう言いながら、陰山さんがこの教室に戻ってくる。


「そう。やっと終わったのね」

 中野は、大きく伸びをして、そう感慨深げに呟いた。


「考えてみれば、あの陽川に嫌われた日から丁度一週間か。長いようで短かったな」


 俺は、そう言って床に座り込んだ。今日は緊張のしすぎで疲れた。もう、家に帰って休みたい。

 この後の、五、六時間目は、今の出来事でとても注目されるだろう。その事を考えただけで憂鬱だった。


「あ、ごめん。私、そういうの言わないから。なんか、振り返る的なそういうやつ?パスで」

 陰山さんは、スマホ片手に興味なさそうにそう言ってくる。


「あっそ。ああ、そう言えばさ、中野」

 さっきの流れで、軽くスルーされていたが、少し気になったことがあったのだ。


「何?」


「さっきの、本当か?」


「さっきのって?」


「だ、だからさ。あ、あれだよ」


「あれって?」

 中野は、キョトンとした顔で、首を傾げる。


「お前が告白したのが、俺だったっていう、あれ」


 恥ずかしいことを言っていることは分かっている。自分でも言ってて、なんだこいつ、と思っている。

 しかし、それでも聞かずにはいられなかった。中野は確かに言ったのだ。あの告白は、上沢にしたのではなく、俺に向けてしたのだと。


「え、あ!あのことね。あ、あれはね!あれは……嘘に決まってるでしょ!ほら、上沢もファンがそれなりにいるらしいでしょ?」

 中野は、突然慌てだし、よく分からないことをまくし立てる。


「お、おう。だから?」


「だ、だからね!だから、私が偽の告白をして、彼の心を弄んだことになったら、私がいじめられるわけ。だから、元々彼に告白していないことにしたのよ。そこで、丁度近くにいたあなたを使っただけよ」


「あ、ああ。なんだ、それだけか」

 ということは、結局あの時の中野は、誰にも告白をしていなかったわけだ。そりゃそうだ。これは上沢を嵌める作戦なのだから。

 それにしても、あの告白が演技なのだから、大したものだな。


「えぇ、それだけよ」


「はぁー。緑姉(みどりねぇ)のバカ」


「あ?陰山さん、何か言ったか?」

 陰山さんがボソッと呟いたのを聞きつけ、俺はそう聞き返した。


「何も言ってないし。てか、勝手に喋んなし。あんたのせいでどれだけ私が迷惑を受けたと思ってんの?こんな放送部の機材まで使わせて。顧問に絶対怒られるんだけど!」


「わ、悪かった、陰山さん」


「は?ごめんで済んだらポリ公はいらないし!」


 いや、そこは警察でいいだろ。ポリ公にしても文字数変わらないんだし。大体、ポリ公っていつの時代のヤンキーだよ。


「ま、まあまあ、赤音ちゃん。機材を使うように頼んだのは、私なのだし、許してくれると助かるわ」

 甘いな、中野。陰山さんはこれくらいで、許してくれるほどいい人じゃないんだ。


「みど……中野先輩がそういうならいいけど」

 あれ?陰山さんが中野にデレたぞー?


「それにしても、今日がまだ月曜日というのがまた災難よね。これから一週間、色々なことを聞かれるわよ、私たち」


「まあ、俺からしたらクラスの奴らにいじめられるよりは、そっちの方が楽だからな。月曜日で丁度よかった」


 中野は告白の件もあり、色々と面倒なことに巻き込まれるだろう。だが、俺の場合は別だ。

 元々、あいつらは俺をいじめるためだけに近づいたわけで、俺とは関わりがなかったのだし、それにあいつらも多少の罪悪感を俺に抱えているだろう。


 しかし、プライドが無駄に高いリア充共は、俺に謝ることもできない。だから、勝手に気まずい思いをして、勝手に距離を取るのだろう。

 経緯は少し違うが、結局は元通りだ。俺の目標は、灰色の高校生活に戻ることである。その目標は、十分達成できたと言えよう。


「なら、俺は戻るぞ。昼飯も食わないとだしな」


「あ、それなら私も」


「私も戻るわー」


 と、三人共それぞれ動き出そうとしたその時、


『高校一年A組陰山赤音さん、高校二年D組陰山黒人さん、中野緑さん、校長先生がお呼びです。至急、校長室まで来て下さい』


 と、呼び出しがかかったのだ。


 それを聞いた途端、俺は顔を青ざめ、陰山さんはなぜか浮かれだし、中野はといえば、深く深くため息をついたのだった。




 その後、校長室に呼び出された俺たちが、校長直々に勝手に学校の物を利用したことで、これから四日間の停学になると言い渡されるとは、その時の俺は知る由もなかったのである。


第一章の本編はこれで終わりです。

次回から二話続けて、中野が主人公のおまけ話をいたします。

その後、第二章が始まりますので、お楽しみに。


ブクマと評価ありがとうございます!昨日から今日にかけて凄く増えてました!感想もありがとうございます!

これからも、どうか読み続けて下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2章も楽しみです(≧∇≦)b
[良い点] なかなかの落ちでした?しかし中野さん告白は無かったことにしても良いのですか? [気になる点] これが主人公をさらに虐める布石なのではないですか? [一言] なにか良からぬ方にばかり考えてし…
[気になる点] え!? 停学ではなく休学ですか?
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