表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カースト最底辺ぼっちの俺が、カースト最上位の彼女に嫌われた結果  作者: 男子校でも恋がしたい!
第一章 陰山黒人はスタートラインに立つ
12/53

第十二話 「リア充の聖地」


 そして、時計がまた一周回り、時刻は午後一時。


 俺は、駅前のスタバの前で、立ち尽くしていた。

 もちろん一人だ。家にいなかったから、陰山さんは既に行ったと思うが、外から覗いてもその姿は見えない。

 大体、同じ家に住んでるなら、普通は一緒に行くよね?この家が普通じゃないのは知ってるけどさ。


 スタバ。

 つまり、リア充の聖地。


 陰山さんに、無理矢理集合場所に指定された所だ。しかし、俺のような陰キャぼっちが、リア充の聖地に一人で入れるはずもなく、スタバの前を歩き回り、中を覗いて陰山さんの姿が見えないか探していた。


 ん?あれ、陰山さんっぽい!


 俺は、店内に陰山さんらしき人物を見つけ、本人か確認しようとガラスに更に顔を近づけて覗き込む。

 しかし、よく顔が見えない。


 こっちに動けばよく見えるかなー、と思い、横に動いて再び覗き込もうと……


「キモい」


 後ろから声がかかった。


 振り向くと、そこには怖がるように肩を抱いて、こちらを見ている中野の姿があった。

 白のワンピースに身を包み、顔にはナチュラルメイクが施され、その緑がかった髪は、後ろで纏められている。彼女は、肩を抱いているその姿勢も相まって、男ならば必ず二度見をしてしまう程の可愛らしさを纏っていた。


 俺も惚れていたかもしれない。もし、彼女の汚物を見ているかのような目が俺に向けられていなければ、の話だが。

 そして、中野を見ている途中に気付く。汚物を見るかのような目で俺を見ているのが、中野だけではないことに。


 ここは、駅前のスタバ。しかも、日曜日の午後一時である。無論、かなりの人通りがある。

 しかも、このスタバ、かなり目立つ所に建てられている。流石リア充の聖地である。

 そんな店を、ガラスに顔をくっつけて覗き込んでいる俺は、注目の的であった。


「うっわ、キモい」

「なにあれ?ストーカー?」

「死ねばいいのに」


 キモいのはそうだとしても、ストーカーじゃないし、『死ねばいいのに』は酷くないですか?ねぇ、中野さん、良くないよ、そういうこと言うの。

 本当に死にたくなるから。


「とりあえず入りなさい」


 中野は、俺の脇を通る時にそう言って、自らも先に店の中に入っていった。

 しばらく固まって、羞恥に顔を赤く染めていた俺は、何とか立ち直り、周囲の視線を一身に浴びながら店内へと入っていった。


 中野は、迷わずに陰山さんの座る席へと歩いて行き、陰山さんの隣に座る。

 俺は、少しして中野の後を追い、二人の正面の席に腰掛けた。


 こちらを責めるように見てくる二人の視線から目を逸らし、周りを見渡した。

 流石リア充の聖地である。リア充だらけだ。そこら中から、男と女の笑い声が聞こえてくる。

 とりあえず、ウザいから爆発しろ。


「あんた、遅れた理由は?」

「それで?黒人くん、言い訳を聞かせてくれるわよね?」


 陰山さんは俺が数分遅れた理由を、中野は俺があんな奇行をしていた理由を、それぞれ聞いているのだろう。

 なんだ、このSコンビ。まだリコーダーの話にも入っていないのに、既に心が折れそう……



◇◇◇



 その後、適当な言い訳をし、適当に十五分程の説教を聞き流し、ようやく本題に入った。


「上沢を潰す方法……よね」

 中野は、顎に手を当て、首を捻る。


「無理なんじゃなーい?上沢ってかなり人気あるし、トップカーストだし、ね?」


「おい、陰山さん?誰が俺と中野をここに呼んだか覚えてますか?あなたですよ、あなた」


「話しかけてないのに喋んなし」


「はい……」


「まあまあ、赤音ちゃん……」


 こんな感じの会話が続くこと、一時間。既に二時半になっているが、何も打開策は出てきていない。


 陰山さんは段々とイライラし始め、なぜか中野はそれを見てニコニコし、俺はその笑顔に更に怒る陰山さんを見てオロオロしていた。


「大体、なんで上沢は陽川さんのリコーダーを盗んだっての?上沢に何か得がある?」


「それ、陽川にも聞かれたが、上沢が陽川のことを好きだからじゃないのか?」


「え?あんた、本気で言ってる?そんなことも知らなかったの?」


「え?何を?」


「上沢の好きな人のこと。中野先輩は、勿論知ってるよね?」


「知らないわね、私も」


「え!そうなの?知ってる人の方が少ないのかな?」


「早く教えろよ、上沢の好きな人」


「あんたは喋んなし」


「はぃ……」


「赤音ちゃん、教えてくれる?」


「上沢の好きな人はね……」

 そう言って、陰山さんは、中野の耳に口を近づけて、何かを言った。

 陰山さんに何かを言われた後、中野は、目を見開き、驚きを露わにした。


 誰だったのだろうか?まさか、俺だろうか。

 上沢は、ホモなのだろうか。そして、俺に近づきたくて、リコーダーを俺の席に隠したのだろうか……。

 え?何かめっちゃありそうな展開で怖いんだけど。これが真実だったりしないよね!?


 陰山さんから上沢の想い人を聞かされた中野は、しばらく黙り込んでしまった。周りの席ではリア充がうるさく喋っているが、この席の周りだけ静寂が流れている。

 中野、黙るなよ!怖いだろ!なんだか本当に上沢が俺のこと好きなんじゃないのって気がしてきたよ!?


「私に案があるわ。任せてくれる?」


「私は、どうでもいいけど。取り敢えず、私がこれ以上あいつのせいで変な目で見られないようになれば、私はいいの。好きにすれば?」


「赤音ちゃんにも頼みたいことがあるんだけど……、やってくれる?」

 中野が、潤んだ目で上目遣いに陰山さんの方を見ている。


「し、仕方がないわね。やればいいんでしょ?」

 陰山さんは見つめられて照れたのか、目を逸らした。俺が見つめると、目潰しするくせに。


「ありがとう、赤音ちゃん。それで?黒人君は、やるわよね?当たり前よね、だってあなたのことだものね」


 知ってる。知ってるよ。俺が当事者だってこと。だから、俺は勿論やるけどさぁ。

 陰山さんとの扱いの差が大きすぎない?何で陰山さんには上目遣いで頼み込むのに、俺の場合上から目線で命令すんの?

 もう、どうでもいいけど。


「やるよ。それで?その案ってのは?」


「それはね…………



◇◇◇



 その後、俺たちは明日月曜日に何をすればいいのかを命令された後、解散した。


 正直、中野の案には成功するのかどうか疑わしい点も多い。大体、俺は詳しく計画について話されていないのだ。

 しかし、どこから湧いてくるのかは知らないが、必ず上手くいくという自信が俺にはあった。


 俺は、明日きっと見られるであろう上沢の土下座を思い浮かべ、一人ほくそ笑むのであった。





今日も一時台投稿ができませんでしたが、明日からはもっと無理そうです。

なので、明日からは投稿時間は変わるかと思います。


ブクマや評価、感想ありがとうございます。

いただけると、本当にありがたいです。モチベーションが上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ