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カースト最底辺ぼっちの俺が、カースト最上位の彼女に嫌われた結果  作者: 男子校でも恋がしたい!
第一章 陰山黒人はスタートラインに立つ
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第一話 「絶交宣言」


 陰山(かげやま)黒人(くろと)

 これを我が子につけるか?と、親のセンスを疑いたくなるような名前。

 なんだ、俺にどうなって欲しかったんだ?忍?


 うん、だとしたらかなり親の期待通りに育ったと言える。

 だって、忍って言うのはあれでしょ?誰にも気づかれずに任務を遂行して、誰にも名前を知られない者のことだろ?

 それならば、俺と忍の違いなんて言ったら忍をやっていないことくらいなものだ。


 え?それなら全く違うだろって?うん、俺もそう思った。


 いやいや、時代が数百年違えば多分俺は忍になって学校の教科書とかに載って、現代にはファンとかがいたに違いない……。

 有り得ない?知ってる。大体、俺は忍として優秀すぎて名前を誰にも知られない気がする。優秀すぎて!


 とか何とか下らないことを考えながら、廊下を歩く。


 長年ぼっち生活をしていると、脳内での独り言が上手くなるものだ。

 脳内でだったら、素早く流暢(りゅうちょう)に話ができる。もう、自分の脳内で繰り広げられるボケとツッコミに自分で笑えるレベル。そして、現実でも一人でクスッと笑ってしまうレベル。

 そのおかげで、いきなり笑いだすキモい奴と完全に認識されてしまっているんだが。


 他にも弊害はある。

 一番大きなもので言うと、脳内での独り言が上手くなるにつれて、それに慣れてしまい、リアルでの会話がどんどん下手になっていくということだ。

 吃るし、キョドるし、話が続かないし。


「はぁーー」


 思わず、溜息が漏れる。

 いつもぼっちでいると、考え事の大半が自分についてのこととなる。しかし、俺に長所があるかといえば、ほとんどない。だから、必然的に考え事の内容の大概が欠点だ。

 そうなると、こんな風に自分の独り言に自分が傷つくなんてことが多々ある。


 もういいかな?

 二年D組の後ろの扉の前に立つ。少し教室の中を見て、ほっと胸を撫で下ろした。


 俺の席の周りに気持ち悪くてキャピキャピうるさいリア充共が集っていたので、居心地が悪くなって教室を出てきたのだ。

 出ても、行く場所なんてないから行きたくもないトイレに行ったりもした。


 しかし、もう安全だ。見たところ、気持ち悪いリア充共は消えたらしい。


 後ろの扉を開ける。もちろん、音を立てないように最大限の注意を払う。リア充なんかに見られて、汚されたくないからな、俺は。


 そして、下を向きながら、俺の席を目指して歩く。これもリア充を視界に入れて俺自身が汚れたくないからだ。

 え?本当だよ?嘘だろ、とか言わないで!目が合うとキョドるからだろ、とか言わないで!


 心なしか早歩きになる。と、目の前に誰かが立ち塞がった。勿論、俺はその程度で顔を上げない。


 リア充が目の前に来た時の対処法その一。


 えー、ここからテストに出ますよー。ぼっち検定五級に出ますね。


 わざわざ俺のようなぼっちになりたい奴なんかいないか……。いや、忍を目指してるなら、なるべきだ。

 友人、家族から離れ、世界を守る。そんな俺のような忍になりたいのなら!

 え?お前が世界守ってるのかって?嘘です。ただのぼっちです。てか、守るどころか、世界から切り離されています。


 大体、ぼっち検定を受けた訳じゃないのに、何で俺はぼっちなんだろう……。ぐすん。


 で、話は戻るが対処法だ。

 そう。唯一にして、絶対の対処法……!それは!


 避けよう。俺は、右に一歩動き、そのまま俺の席に向かおうとする。が、


 そいつも俺に合わせて、俺の前に移動した。不審に思いながらも、今度は左に移動。すると、奴もまた俺の前に移動する。


 これを十五回位繰り返して、ようやく俺は顔を上げる。もちろん、目は極限まで閉じ、額にシワを寄せ、小さな音の舌打ちつきだ。


 そこには!俺が校内で名前を覚えているたった三人の女子の中の一人がいた!


 俺が覚えている三大女子のコーナーです!


 エントリーナンバー1!

 二年D組担任の、後藤先生!イェーーイ。


 いや、まだ、二十八らしいし、まだギリギリ女子としてセーフでしょ。


 よし、次行ってみよう!

 エントリーナンバー2!

 校長の、中野先生!イェーーイ。


 うーん、こちらは五十過ぎ。か、か、彼女も女子に分類され……るのかな……?

 まあ、されるとしておこう。じゃないと、知っている女子が二人だけになるからな。


 エントリーナンバー3!

 二年D組の、陽川(ひかわ)白乃(しろの)


 校内一の美少女!勿論、トップカーストの中のトップ!その可愛らしさに、惚れない男子はいない!……らしい。

 勿論、俺は話す相手なんかいないので、全部か全部周りが話しているのを聞いただけの受け売りだ。


 それでも、名前が俺こと陰山黒人と正反対すぎるから、印象に残っていたのだ。

 陽川白乃。俺が忍になるために生まれたというなら、彼女は電球にでもなるために生まれてきたのだろう。


 それにしても、俺が校内で唯一名前を覚えている三大女子。その中でも、生徒枠としては、本当に一人だけの彼女。

 そんな人が一体どうして俺の進路を塞ぐ。


 もう一度、小さく舌打ちしながら、陽川白乃を睨みつける。


 陽川は、すぅーーと大きく息を吸う。その頬は、ほんのりと赤らんでいる。


 おお!おお!

 このシーン、百回以上見てきた俺には分かる!これは告白だ!


 え?百回以上見たのって実体験かって?そんなわけないだろ、漫画とアニメだよ!それくらいは察して!


 バッと振り向く。……誰もいない。つまり!


 やはり告白の相手は俺!?俺の忍の如き格好よさに惚れ、この孤高の存在に恋をしてしまったのか!?

 もしやこいつ、分かる女!?


 ドキドキと陽川の返事を待っていると……


「あなたが、私のリコーダーを盗んだことは知っているわ!もう、あなたとは絶交よ!」


 え?


 廊下まで聞こえる大きな声でされた絶交宣言に、俺は思った……。







 俺、こいつと絶つほどの関わりあったっけ?


 




これから出来る限り毎日投稿をしていきたいと思っています。慣れないジャンルですが、頑張っていきます。

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