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第24話 必殺のさそり座 part【3】

 脱皮を経て第二形態へと進化したさそり座は、死神の鎌のような鋏を振り上げる。

 脚を折り曲げ、ほんの僅かに跳躍して身体を浮かせると、その場で一回転しながら鋏を横に薙ぎ払ってきた。


「伏せろ!」


 やや高めの攻撃なので地面に伏せることで間一髪で攻撃を避ける。

 鋭さを増した鋏は薙ぎ払いからは斬撃が真空波のように飛び広がる。

 辺り一帯の木々を薙ぎ倒す騒がしさが静まることで顔を上げると、周囲はスッキリとして奥の方には平原が見えてくる。


「こいつ今、鋏から斬撃飛ばしてなかった?」

「しかも速いね、さっき出来なかった動きが出来るように体が進化してる」


 第二形態となったさそり座は先程と同じ動きでは敵わないと判断し、分析のために距離を取る。

 すると、さそり座の目から赤いオーラがあふれ出し、今まで頑なに開けようとしなかった口が大きく開いた。中からは、鮫のようなギザギザで鋭い歯が口一杯に広がり、垂れた唾液で草が溶ける。


「左右に散って!」


 俺達が全力で走り出すと少し遅れたタイミングで轟音と共にさそり座の口から円柱状の衝撃波が発射される。衝撃波の射線上には地面がえぐられた後しか残っておらず、その破壊力が目に焼き付いていた。対してさそり座は追撃をせずにじっとしている。

 アイシャはその様子を見て、不思議に思い意見を求める。


「あれ、どう思う?こっちが近づくのを待っているのか、単純に燃費が悪くて連発出来ないのか」

「あの速度で連発出来たらもう負けだろ。今確かめてみる」


 そう言って俺は、弓を構えて矢を放つ。サソリは飛んでくる矢に対して動く様子はない。

 やはり、燃費が相当悪い武器らしい。そのまま、眼に命中するかと思っていると、硬い何かに矢がはじかれる。


(外れた!?)


 いや、確かに眼に当てたはず。狙いがズレて硬い殻に当たるわけがない。

 そもそもさそり座は反動で動けないはずなのに。


「はじかれた!なんで!」


 想定外に取り乱した俺を横の2人が落ち着かせる。


「落ち着いて、グレイ。確かに眼には当たってたよ」

「えぇ、当たってはいたわ。ただ眼の被膜を貫通できなかったの」


 (え、何?お前ら見えてんのかよ。何か一人でパニックになって恥ずかしくなってきた。単純に俺のステータス不足じゃん)


「眼に硬い被膜って、俺の攻撃はもう通用しないってことか?」

「まだわかんないよ、至近距離なら被膜を貫通するかもしれない。この様子だと、さっきまでとは全く別物と考えた方がいいね。毒状態だって回復しているかも」


 毒を再度入れ直す場合、さっきの狙撃では不安要素が残る。

 確実に入れるには至近距離での一撃が必要となる。


「俺も前衛参加か、かなりキツイな」

「2人とも!さそり座が動き出すわよ!構えて!」


 アイシャに言われてさそり座と向き合うと、敵は大地に脚を押し込んで姿勢を固定すると、長い槍尾を半分の長さまで縮ませる。


「あれ、絶対に伸びるやつだ。走って狙いを定まらないようにしろ!」


 3人バラバラの方向へ走り出すと、追いかけるようにさそり座も動き出す。最初の狙いは俺だった。


「マジか、さっき弓矢で攻撃したからヘイトがこっち来てるのか」


 先の衝撃波で開けてしまった土地から再度森の中に入り、草木の道をジグザグ走って少しでも狙いにくくする。

 追尾してくるさそり座は鎌鋏で射線を遮る木を切り倒す。


(しまっ‥射線が‥)


 リーチが伸びた分、鋏による伐採範囲は広がっており、俺とさそり座の間に射線が通る。

 空かさず、俺に向かってバネのように縮めた槍尾を爆発的加速力で発射する。


(このやろ‥賭けだ!右!)


 運を天に任せて回避すると、偶然にもそれは俺に当たる事はなかった。尻尾の先が地面に突き刺さりサソリはそれを打ち出した反動で引き戻す。


「やっぱり、直線上しか発射不可能の攻撃か。ならっ!」


 時計回りに走りつつ、俺は矢を弓に番えてさそり座の左下に滑りながら潜り込む。そして、腹部に向けて矢を放つ。その攻撃は案の定弾かれるが、さそり座俺を攻撃範囲に入れようと後ろに大きくバックジャンプする。


「いったぞ」

「おっけ〜」


 そう、その方向はシンが待っている場所だ。

シンは木の上で待機しており、さそり座が着地した瞬間に飛び降りて背中の部分に剣を刺し込む。

今度は弾かれることなくダメージとして入る。

そのまま背中を回転斬りしたシンは離脱する。


「やっぱり、一眼見て思ってたよ。今は、背中が弱点だ。さそり座はさっき攻撃されていた部分を重点的に硬くしているんだ」


 それを聞いた俺は、Lv5毒矢を番えて背中に向けて放つ。さそり座は左に大きくサイドステップしてそれをかわす。やはり背中を庇って行動している。まだ勝てる可能性はある、続けて『VENOM』の毒矢を命中させて、殺しにいく。


「シン!引き付けろ!」

「了解!」


 シンが正面からさそり座に突撃する。さそり座尻尾を縮ませ、右の大鎌鋏を横に薙ぎ払う。

 それをシンは足下に滑り込むようにスライディングして避ける。

 続いて発射される尻尾を難なく左に転がり避けて反撃に転じる。

 さそり座も学習したのか一度立て直そうとサイドステップで移動する。


 (そのサイドステップを待っていた)


 既に発射された『VENOM(ベノム)』はサソリの着地と同時に背中に突き刺さる。さそり座はまた怯みはしたが直ぐに追撃に来ていたシンに攻撃を再開する。

 俺はそこで異常に気づいた。


「こいつ、毒状態になってない?まさか耐性が付いたのか?」


 脱皮したのなら充分あり得る話だ。シンはそれを聞くと一度攻撃を抑えてこちら側に撤退してくる。


「まいったね、グレイ、ベノム・マンティスの使ったでしょ。残り1つは、獅子用に取っておきたいし、ここは普通の矢で援護してもらって僕がダメージ稼ぐしかないな~」


 気のせいか、彼の声色は弾んでいた。


「おい待て、なんでちょっと嬉しそうなんだよ。あれか?自分のMVPが確定だとか考えてるのか?」

「まっさか~グレイが攻撃に参加できないから仕方ないだけだなぁってだけだよ」

「うわっ、すげぇムカつく。おいアイシャ、こいつどう思うよ?‥‥アイシャ?」


 返答のないアイシャを捜すと、彼女は開かれた土地の隅で倒れて苦しんでいた。


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