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第13話 格下が格上に勝つためには

 こうやって3人で作戦会議を行うのは、MBO以来で当時はよくイベント時にやっていたことである。

 基本的にアイシャが立案し、シンが色々無茶を付け足し、俺がそれによる問題点を指摘して、3人で最後にまとめ上げていた。


 今回の議題はシンが遭遇した獅子座に関する対抗策についてだろう。

 初めにアイシャがシンを労う。


「とりあえずシン。あなただけでも無事でよかったわ」

「ありがとう。でも、本当に運が良かっただけなんだ。あの時、正体不明の誰かがテレポートをして助けてくれたから」

「そこが、謎なのよね。テレポートのスキルは、開放されている魔導士のスキルツリー欄になかったはず。まだ未発見スキルなのよ。何か特別な条件達成で得られるスキル?もしくは正体が特別なNPC?」


 スキルツリーシステムは、その名の通り最初は1つのスキルから始まり、レベルを上げることで、様々なスキルが枝状に広がり解放されるシステムである。基本レベルアップ時に手に入るスキルポイントを使うことで、新たなスキルを解禁出来る。

 ゲームによっては、隠しスキルが実装されていることがあるため、アイシャはそこが気になっているようだ。

 テレポート持ちの正体は気になるが、先に俺たちは解決しなければならない問題があった。


「それよりも、まずは、獅子座への対処法が先だろ。現状、通用する攻撃手段がないのがまずいんじゃないか?」


 すると、アイシャはそれを待っていましたとばかりに答える。


「それは、提案があるわ。今はまだ不確定要素が多いけど」


 興味深々の俺とシンを相手に彼女は話を続ける。


「ここが『()()()』で、これが『()()()()』である以上攻略法は、存在しているはず。聞いた限りだと、このクエストは特別なNPCまたはアイテムが必要な相手か、何か致命的な弱点があるかの2つよ。前者は、街で情報収集が必要だから、明日から解放戦線のプレイヤー達にやらせる予定。後者は‥不確定要素が大きすぎて、他のプレイヤーには話しにくいのよ」


 シンはその考えに同調する。


「それは、僕も考えていた。いくら何でも最初のボスが無条件で無敵は有り得ない」


 実際そんなボスが居たとしたら誰も倒せない。

 管理者ユノに少しでもクリアさせるつもりが有るならそんなことをするはずがない。

 さらに、シンはアイシャの考えも察しが付いていた。


「後者については、大体検討はついてる。だから、グレイも呼んだんでしょ?」


 これが、俺を呼んだ最大の理由。

 シンの話を踏まえた上で俺が必要になる対抗策は一つ。

 開始初期から存在だけは確認されるも実物は誰も手に入れていない究極の兵器。


「えぇ。対抗策は毒。スリップダメージによる持久戦よ」


 ◇◇◇◇


 この世界での毒は付与するにしても解除するにしても一苦労である。付与するための方法は幾つか考えられる。一つは毒属性の武器。しかし、このような属性武器の存在は現在確認されていない。次に、毒にする魔法。こちらも現在のスキルツリーには確認されていない。そして、付与アイテムを利用すること。いわば、毒を武器に塗ることで一時的に属性付与を行う。


「考えられる毒の方法でも唯一存在が確認されているのは付与アイテム『毒ポーション』よ。錬金術師に作ってもらい、物理系の武器に使用すれば相手を毒状態に出来る」

「毒についてはヒロイズムユートピアのヘルプに書かれてた。一度付与すれば一定時間は付与した当人のレベル準拠のダメージを与える。防御力に関係ないのが強みだ」


 ただ、俺は獅子座の話で気になることがあった。


「なぁ、シン。本当に全部の攻撃が通用しなかったのか?実際は極僅かでも効いているんじゃないのか?ステータス閲覧不可でダメージ値は見れなかったんだろ?」


 シンの話ではHPの減少すら不明だったことになる。

 そんな相手では毒が効いているか確認できない、勿論、良く捉えれば攻撃手段によっては確実に効くことも考えられる。

 そんな俺の疑問に対して、シンは悩みつつ答えた。


「それは‥あるかもしれないね。あの時の攻撃手段は、剣による斬撃、弓矢、魔導士の炎魔法だけだったから。手当たり次第に試したわけじゃないし‥」


 話を聞いていたアイシャは、残された攻撃手段を挙げる。


「なら、試していないのは打撃系統かしら。でも、格闘家のプレイヤーはあの時の5パーティに居たはずだけど」


 シンは、その疑問に対して苦虫を嚙み潰したようになる。


「最初にやられたパーティが唯一格闘家の人が居た所なんだ。効いていたかどうかは、彼らの戦闘を見てない僕には分からない」


 喜ばしくない返答にアイシャは難しい顔へ戻る。


「やっぱり、今回の件は分からない事が多すぎるわね。毒アイテムだって、未だに原材料の毒草系が見つかっていないから作れないんだし、そもそもどうやって刃が通らない獅子座を毒状態にするかも不明だし」


 剣で斬ったら火花が散るような硬質皮膚を相手にどうすれば毒を付与できるのか。

 弾かれても付与は可能なら問題ないが、このゲームでは確認していない。


「獅子座を毒状態にする方法なら、実際戦ってた時に思いついた方法があるよ」


 そう言ってシンが語りだした方法は、あまりにも非現実的で俺は呆れていた。


「あり得ない‥でも、お前なら‥多分できるな」


 この方法には、アイシャも同じ感想を抱いていた。


「普通はあり得ないけど‥まぁ、貴方なら狙って出来るでしょ。となると、問題は‥」

「あぁ、毒ポーションの必須アイテムである『毒草』の入手方法だ」


 必要な毒草は未だに北エリアでは発見されていない。だが、製作自体にレベル制限がない以上材料があれば、作れるポーションの1つである。広大な世界とはいえ、仮にも北エリア全体で見ればこの近くで取れてもおかしくないはずである。


 そして、まだ誰も探してないエリアが一つある。


「やっぱり、毒草の群生地は西の森林地帯の奥地にありそうね」


 そう言ったアイシャが笑顔でこちらに向かって笑顔のまま提案する。


「そこで、グレイとシンの2人に提案なんだけど、明日3人で、ちょっと()()()()()に毒草採りに行かない?」

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