上の存在 日常?の始まり
上には上がいるものだ。
それは、全ての事に言える。
あくまで、私の考えでは…
ばんっ!
机が叩かれた。
時刻は、深夜。村結の屋敷にて。
机を挟んで、分子と分子を殺そうとした男が向かい合っている。
「さっさと喋りなよー。そうしないと、どんどん時間が過ぎてっちゃうよー。」
あくまで、優しく、ゆっくりと、分子は、喋った。
「誰が喋るか!お前、マジで怖いわ!どうやったら、自分を殺そうとした奴をわざわざ自宅に招いてるんだ!」
「いや。ここウチじゃないし。親友の家だし。」
「尚更、怖いわ!」
そこに、リビングに、花菜が入ってくる。
「あらあらあら。仲が良さそうでよかったよかった。…なんか夫婦喧嘩でもしてるみたいね。」
花菜がそういうのも無理はない。
男の前のテーブルには、豪華な和食が並んでいたのだから。
「だいたい、なんで食卓を囲んでんだ!俺たちは!?俺は、お前を殺そうとしたんだぞ。怖いとか、気持ち悪いとかないのか?」
「ない。」
即答だった。
男は、しぶしぶといった風に尋ねた。
「……お前、なんであの時、俺のこと殺さなかった?」
「悪い奴じゃないでしょ。君。」
これもまた、即答。
男は、もうこれは、どうしようもない奴だと諦めることにした。
「わかった。名前。くらいなら、教えてやろう。翼上だ。所属は、羽上の何処遠くのオフィスだ。得物は、まあ知っての通り弓矢だ。」
「また、嘘ばっかり。そんなに、羽上さんが好きなワケ?」
男は、自分の嘘がバレたことに驚愕した。
人は嘘をつく時、必ず何か兆候が現れる。
分子は、それをわきまえていた。だから、当てずっぽうで言ったのだが…
「お前には、全部バレたって訳か…」
見事に男は騙されていた。
「得物だよね。嘘言ったの。」
花菜が会話に入り込んでいた。
「え?」
「花菜?え?」
そこまで細かくは、分かっていない分子は、男と一緒に、おもわず驚愕してしまった。
危ない危ない。ちょっとだけ合わせてよね。
そう、耳打ちを分子にする花菜である。
「そ、そ、そうだね。ズバリアンタの得物は無いのかな?」
「すごいな?そこまで見抜かれていたとは。」
全然解ってなかったけど…
分子はそう思いながらも、なんとか話を合わせたのだった。
男こと上くん(がみくん)について分かったことは、こうだ。
羽上と言う人物の部下である。
得物が特に無い、器用貧乏であるということ。
そして、女ったらしであるということだ。
バカであった。その一言に尽きる。
のちにあんなことを起こすとは、分子も花菜も思っていなかったのだ。
それ以上に、この上くんが家族に成ろうとは……思いもしなかった…
イレギュラー続きの者たち。
それは、もう、大分前からわかっていたが、いやはや、とまどうなぁ。
あんな奴が、告村に入ろうとは…