現在の女傑
さあさあ皆様、いよいよ戦いの場でございます。一族間抗争の始まりだ。
ヒューーーン!
何かが飛ぶ音がした。
それは、隕石のような大きな音ではなく、しかしながら、小さな音でもない。
ただ、夜道を歩く少女には、恐怖心を抱かせたに違いない。
神奈川県横浜市。とある、公園。
少女は、見てはいけない、ものを目撃した。
空から、矢が降ってきたのである。
しゅんっ!しゅーーんっ!
次々と、弓矢が少女に向かって降ってくる。
「チッ。面倒だな。弓矢使いなんて、あたしの知る限りでは、居ないはずなんだけど。」
少女は、後退しながら、携帯を取り出した。
「もしもし!突然、奇襲っぽいの受けてるんですけど!?」
ツーツーツー。
留守電かよ!
誰もが少女を見捨てたようだった。
弓矢使いが遂に口を開いた。
「お前は、ここで倒す。半殺し程度で許してやる。さっさとでてくる気は無いのか?」
「ふんっだ!あたしのことをどこの誰だと思ってる訳?まあ、知らないのも無理はないか。君、いかにも下っ端構成員っぽいし。」
刹那。
少女の体が跳ねた。
五メートルは跳躍しただろう。助走なしで。
ヒュン!
弓矢使いは、反応する間も無く、少女に馬乗りになられる。その間は、まるで時を止めたかのようだった。
結締。そんな言葉を聞いていた。
全ての事象を繋ぐ、最強の一族式秘術。
「まさか、お前。告村分子か?!」
弓を折られて、戦意を削がれた弓矢使いは、苦し紛れに呟いた。
「うん。そうともいうねー。しっかし、レディを奇襲とは、羽上さんの所もセッパ詰まってるんだねぇ。」
あくまで冷静に。弓矢使いを完璧に無力化していく分子である。
「君、名前は?所属は?得物は?全部、正直に言わないと、消すよ?さあ、答えて。」
男の体をぐるぐる巻きにしたところで、分子は、問い詰めた。
「いう訳、ないだろうが。言ったら、裏切り者。言わないと、お前に殺される。
随分、無茶苦茶なことをいうな?それが、現在の女傑、とやらの真の顔か?まったくもって残念だ。」
瞬間。男の耳が消えた。
「ぐあ!?ぎいい!いってえーー!!」
「言え。………今度は、外さないよ。」
結締。応用によっては、生命体の仕組みをつなぎ、合わせることができる。
「絶対に言わない。羽上は俺の恩人だ。俺はアイツを裏切らない。」
「そっか。じゃっねっ。結締[ゼロ]」
男の体は、グチャグチャになった。
(その後)
分子は男の弓矢に刻印された文字列を見つけた。
[上翼]
がみつばさ。
その弓矢をもって、分子は公園を後にした。
はてさて、どうしたものか?
でも、これだけは分かる。
この一族間抗争の黒幕が。
全ての元凶が…