影響7 食料の確保
先日マンサクのガールフレンド、サクラ(18歳〉のもとに手紙が届いた。
彼女は自分の部屋に行くと、早速封筒を開けて手紙を読んだ。
マンサクが苦労しながらも、懸命に頑張って過ごしていることは、彼女にも伝わってきた。
サクラは一通り読み終えると、早速紙とシャープペンシルを取り出し、返事を書き始めた。
マンサク、手紙ありがとう。
外国での暮らしは色々大変でしょうね。
マッ君が手紙で書いたとおり、こちらは10月のはじめ頃まで最高気温が30℃を超えていましたよ。
さすがにこの時期になると、気温は28℃くらいまでとなりましたけどね。
今年は地球温暖化のせいで、太平洋上には超大型化した台風がいくつも発生しました。
もしその台風が、勢力を保ったまま日本を襲ったら、家や農作物は壊滅的な打撃を受け、交通は寸断され、人々は大混乱に陥ると思ったのでハラハラしましたが、今回はどうにかまぬがれたようです。
私自身、少しほっとしています。
しかし、台風シーズンはまだ続いているので決して油断は出来ません。
今日本では空き地があれば積極的に農地にして、少しでもたくさん食料を確保しようとする動きがあちこちであります。
この前は、3m×3mの広さしかない場所を耕している人もいました。
もしかしたら土のグランドの野球場も、状況によっては畑になってしまうかもしれません。
そうなったのも、マッ君が言っていたとおり、外国から輸入される食料がどんどん減ってきて、このままでは餓死者を出してしまうという危機感が出てきたからです。
ニュースを見ていると、政府は与党も野党も「もう外国を当てにするわけにはいかない。我々の国民は我々の手で養っていかなければ。」と口をそろえて言っています。
考え方の違いはあっても、こういうことに関しては共有出来るものなんですね。
ただ、品質はというと、お世辞にもいいとまでは言えません。
スーパーでは傷物の野菜が売られていたりもしますし、米も一粒一粒をよーく見ると、大きさがまちまちです。
質が良くなければ、それは当然値段にも響いてくるわけで、農家の人達は悲鳴を上げながら頑張っているのが現状です。
夏、40℃を越える暑さと必死に闘い、熱中症による犠牲者を出しながらも、彼らは死に物狂いで頑張っています。
それでも、豪雨や台風が来て辺りが水浸しになったら、彼らのこれまでの苦労は一瞬で無駄になってしまいます。
以前もニュースで、洪水のために手塩にかけて育てていた作物がみんな流されてしまい、涙を流しながらインタビューに答えている人の映像を見ました。
とても心が痛みましたよ。
政府の統計によると、今日本国内で栽培されている農作物は、理論上収穫出来る量を100とした場合、実際に収穫出来ている量は大体70くらいだそうです。
その理由は、日照りや洪水、台風や病気などのために3割ぐらいが収穫までこぎつけられないからだそうです。
都市によっては収穫ゼロというところもあるそうです。
そんな状況を少しでも何とかしたいということで、私が通っている高校でも、今年の運動部の夏の大会が終わってから、運動場を農地にしようという提案が出されました。
最初は(冗談でしょ?)と思い、耳を疑いましたが、地域の人達のために出来ることをやりたいという生徒会からの強い希望で、実行されることになりました。
今では運動場の大体3分の1くらいが畑に姿を変え、ジャガイモやサツマイモ、ダイズなどが成長しています。
日本史の時間で習ったことですが、100年以上前の戦時中では、このような光景が随所に見られたそうです。
当時のことを知っている人はもう日本中どこ捜してもいないので、あくまでも想像ですが、その時の人達の気持ちがどこか分かるような気がします。
マッ君は現地の人々に嫌がらせを受けたりして、悔しい思いをすることがあると思いますが、こちらでもそのようなことはあります。
日本人と、日本に住んでいる外国人との間で犯罪やいざこざなどは結構起こりますし、心無い言葉の浴びせ合いもあります。
私も街を歩いていると、時々耳にします。
温暖化による影響というのは、地球環境だけでなく、人間関係にも暗い影を落とすものなんですね。
だけど、私はみんなと仲良く接していますし、今のところ私が外国人から嫌がらせを受けたことはないので、私のことは心配しないで下さい。
本当に大変な世の中になってしまいましたけれど、お互いがんばろうね。
辛くなったら、いつでも帰って来ていいよ。
ファイト!
サクラより