影響12 生命維持装置の発明
この時期の日本では、地球温暖化がもたらした、過酷なまでの異常気象に人々は苦しんでいた。
世界終末時計は11時59分を指してから、もはや分単位では足りないということになり、ついに秒針が取り付けられることになった。
「こんな世界にはもうとても住めない。」
「何とか逃れる方法があれば教えてくれ。」
「お願いだから、誰か何とかして世界終末時計を戻して!」
もはや熱中症か、自然災害か、あるいは人と人の争いに巻き込まれるかして、死を待つしかないのか。
人々の我慢はとうに限界を超えており、1秒ずつ確実に近づいてくるその時におびえながら毎日を過ごしていた。
そんなある日、ニュースで生命維持装置が一般公開されたという報道がされた。
内容は次のとおりであった。
生命維持装置に入る方を募集します。
この装置は人々を生きたまま半永久的に保存しておくことが出来ます。
最低でも500年は保障しますのでご安心ください。
料金: 1人200万円
定員: 先着200名様
定員になり次第、締め切ります。申し込みはお早めにお願いします。
※生命維持装置のある場所に関しては機密情報とさせていただきます。装置に確実に入る方のみお知らせいたします。
このような情報を手に入れて、喜ぶ人が続出した。
「すばらしい発明だ!ぜひ入れてくれ!」
「地球温暖化のためにこんな貧しい世界に住むのは嫌だったの。」
「そうね、いつかまた豊かになって、住みやすい世の中になったら起きたいわね。」
「値段は高いけれど、命には代えられない。行こう!」
彼らは続々と申し込みをしていった。そのため、結果的にたった1日で定員に達してしまった。
その裏で、入りたくても入れなかった人達は必死に技術者達に訴えた。
「いやあっ!!死にたくない!!お願い!どうか装置の中に私を入れて!」
「気持ちは分かるが、それはみんな同じなんだ。どうか分かってくれ。」
「早く次の装置を作って提供してほしい!」
「分かった。あと2年はかかると思うが、何とか我慢してくれ。」
「もうこんな夏は耐えられない!どうか来年の夏までに作って!」
「…何とかして努力は…してみます。」
技術者は、何とかして少しでもたくさんの人達を助けることを約束してくれた。
しかし、その一方で怒って反対する人達も大勢いた。
「現実から逃げるな!卑怯だぞ!」
「お前らだって二酸化炭素輩出してきたんだろうが!」
「あんた達は地球を救う気がないの?」
「最後まで地球温暖化防止のために協力しろ!」
「結局お金のある人しか生き残れないってことなの?」
このような賛否両論の声がある中で、申し込みを済ませた人達は、次々と装置の中に入っていった。
それから1年後。
機密情報であった場所は、ついに反対派の人によって密かに発見されてしまった。
その後、その場所にはいくつもの落書きや貼り紙が残されていた。
「未来の人達へ
ここに眠っている人達は、私達の世界を裏切って、自分達だけ助かろうとした人達です。」
「多分、この人達は豊かな世の中でなければ生きていく意志がない連中です。」
「もし辛くなったらその度に『来たくてこんな世界に来たわけじゃないんだ!もっと豊かになってから目覚めたかったよ!』と言って、この装置の中に入っていってしまうと思います。」
「絶対にこんな人達を起こしちゃやーよ。」
…結局、私達は地球温暖化という問題からは逃げられない運命にあることを認識させられる結果になった。
…世界終末時計が12時を指すまで、あと50秒…。
…あと49秒…。
…あと48秒…。