11/16
11
振りほどこうとしたが、男の力が強くて駄目だった。
――いや、ちょっと、いくらなんでも……
苦しい。
本当に苦しい。
なんとかしようと考えたが、苦しみとあせりで頭が思うように動かなかった。
すると。
ゴン
と大きな音がした。
首を絞める力が無くなっている。
見れば男が白目をむいて立っていたが、やがて前のめりにゆっくりと倒れてきた。
私は慌てて避けた。
うつぶせの男の後頭部が見えた。
それはばっくりと割れていた。
気付けば小太り女がそこにいた。
その手に金属バットを持っている。
夕食後に男が素振りをしていたのを見たが、そのときに使っていたバットのようだ。
私は助かったことは助かったが、男が死んでしまった。
この女は私を助けるために自分の彼氏を殺したというのか。
私は女を見た。
女はそのバットを再び振り上げた。