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死霊の歌〜偉大なる虚無の死〜   作者: Wallace F. Coyote
1/8

vol.1 『プロローグ、そしてエピローグ』

『偉大なる虚無の死』とは?


言語の枠組みに収まる人知・社会・秩序の境界線・防壁に片足を残し、


外縁に広がる言語化されず不可測なる地、


自由意志の鉱脈を辿りそこへ踏み込めば、


宇宙進化を推し進めるエネルギー、


『死霊の歌』を聞くことが叶う。




南国の十月、海外在住の私は帰りの予定を立てずに帰郷した。


父が亡くなる前夜、私は詩を書き上げた。


海辺に面した父の病室に通い、そこに漂う消毒液と微かな尿の匂い、室内に沈む静寂がささくれのように感じられた。


翌日、ラベンダーのロウソクを幾つかと小さなスピーカーを、意識なく眠り続ける父の枕元に置いた。夜、病棟が寝静まったあと、そのロウソクに火をともし、小さな音でジルベルトのドラリスを繰り返しかけた。すると室内には微かなラベンダーの匂いが満ち、ロウソクの灯りは温かな光を枕元で揺らし、ジルベルトは軽やかにそして惜しみなく生命の予感を響かせた。


そうすることで 初めて、意識のない父が私に声なき声で語りかける空間が立ち上がった。私は父の側で彼の輪郭を静かに素描した。


翌朝、日が昇るにはまだしばらくあったけれど、誰かに促されるように一人眼を覚ました。窓外には内湾を挟み黒々とした活火山があった。その頂きには綿雲が幾つか連なるようにかかっていて、私は守られていると感じた。


それから十年たち、

そこにとどまり続けた余熱もようやく消え、

私はこうしてその詩を読むことが出来るようになった。


 『こ の 世 界 に 新 し い も の が 出 現 す る』


私はそこにある自由意志を何のためらいもなくすくいあげた。

vol.2 『言語能力の限界は俗世界の境界線』へ続く

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