6、パパ!ごめんなさい!
書き終わったにもかかわらず、2日ほどログインできなくて焦りまくったりしちゃいました。
ガチャ!
「失礼します。」
スタスタと歩いて行った先には、特に豪華な扉があった。
躊躇することなく腹黒少年は私を抱きかかえたまま扉を開ける。
腹黒だと思うのは理由がある。
どれだけ私が暴れても、いい笑顔で抱っこしたまま離さなかったんだから、間違いない。
「おや?レオン、どうした?
…そっちの子供は?」
部屋の中にいたお兄さん(とは言っても、20代後半は越えてるように見えるけど…パパと同じぐらいに見える)は、レオンを見てすこし驚いたように目を見張ったけど、彼の腕に抱きかかえられてる私を見て、さらに目を丸くして、そのあと穏やかに笑って問いかけた。
「迷子になっていたようなので、拾いました。」
「まいごじゃない…」
むすっとして、ぽろりと出た言葉に反応したのは、お兄さんと話していた…
「…!ティア!?大人しく待っていると約束しただろう?」
パパっ!…や、やばい。
「…ご、ごめんなしゃい
…よーしぇーしゃんにさしょわれたのー!」
うるうるとした目で、上目使いで素直に謝る。
「…そうか
……仕方がないな。次からは気をつけなさい」
…思った以上に効果があったようです。
「あい!」
素直は大事だからね!
「…ウィル、そっちは末の子か?」
「ええ、うちの愛らしい娘ですよ。
さあ、ティア、王にご挨拶なさい。」
はっ?!王って言った?!まじで!?
…と、とりあえずあいさつしなきゃ!
「うぃりあむ・ぶらんどれいくのじじょのれてぃーつぃあ・ぶらんどれいくです!
はじめまして、おーしゃま!」
きらきらした目で、子供スマイルで自己紹介しました!
微笑ましそうに見つめてくる王様。ちゃんと言えたし、よかったよかった。
「ああ、初めまして、俺はエドワード・フェアファクス・アーバントレイル。
この国の王様をしているよ。」
お辞儀をして、ピョコンと顔をあげると、ようやくどんな顔をしているかが見えてきた。
落ち着いた髪は、森の深緑のストレートで、長く伸ばしていて後ろで三つ編みにして垂らしていた。
微笑ましそうに細められた涼しげな目は海の蒼だった。
…どこかで見たことがある目だな……
…ん?!
ぱちぱちと瞬きを繰り返して、ばっと振り返る。
……………
「…どうした?」
私の視線に応えるように首をかしげたレオンの目は、完全にさっきの王様の目と同じだった。
最初に見てすぐ気付かなかったのは、目に宿っている光が違うからだと気付く。
王様は、温かい見守るような瞳をしているけど、レオンは悪戯好きそうな瞳をしている。
同じ目をしていても、こうも違うんだなぁ。
…あ、そっか。だから王様の居るところに入っても止められなかったんだ。
「くっくっく…気づいたのか?」
レオンは私の目に理解の色が浮かぶのを見て、おもしろそうに笑う。
ほんと腹黒だな…
「あ、殿下!娘を連れてきていただいてありがとうございます。」
やっぱり!王様の息子か!
「ああ、迷子になっていたところを偶然見かけたからな。」
むぅ…迷子じゃないもんね…
ちゃんと妖精さんたちに連れて帰ってもらえたもんね!
「ほら、ティアも殿下に感謝なさい。」
お礼を言う必要性は全く感じないけど、パパの印象が悪くなるのも困るし…
「…ありがとーございましゅ」
早口に言うと、ぱっとパパの後ろに隠れる。
「すみません、殿下。普段はほとんど人見知りをしない子なんですが…」
「いや、気にする必要はない。」
苦笑しながら謝るパパに鷹揚に頷くレオン。
むうぅ…
「では、俺はもう行く。」
「はい。ありがとうございました、殿下。」
レオンは手を軽く上げ答えると、最後に私を振り向いて笑った。
「じゃあな、レティーツィア。」
扉の方に向き直ってから放たれた誰にも聞こえないような呟きは、まるで真横から言われたかのようにはっきりと届いた。
理由は簡単。妖精(それもおそらくシルフ)が声を届けたから。
…妖精使いなのかな……?
そんなことを考えていると、ひょいと抱き上げられた。
「パパも用事が終わったことだし、帰ろうか、レティーツィア。」
…フルネーム呼びは激オコですね。
笑顔だけど、目が笑ってないよ、パパ。
目線を合わせるために抱き上げたんですね。怒ってるってことをわからせるために。
と、一回下ろされる。
「それでは失礼いたします。」
「ああ、またよろしくたのむ。
それではな、レティーツィア。」
「あい!さよーなら!」
なるほど、不敬になっちゃうからね。
パパは怖いけど、とりあえずにっこり笑顔でさよならをする。
そのままパパの後を追って廊下に出る。
パパはくるりと私に向き直ると、もう一度ひょいと抱き上げられた。
「レティーツィア、どうして約束を守れなかったんだい?」
「たのしーよ、ってさそわれて…」
条件反射的に涙が出てくる。
怒られるとちっちゃいからどうしても泣いてしまうんだよね。
「…まぁ、とりあえずノアの所に行こうか。」
パパは私の涙に弱い。
だけど、きっちり怒るところは怒れる人だ。
…ママと合流するってことは……ヤバイですね。
―そんなこんなで、初めてのお出かけは、いろいろなハプニングがありながらも興味深いところがたくさんありました!
また王宮に行ったときは、妖精さんたちがまた案内してくれるって。
…え?お説教?
……ガッツリされました。お家に帰るまでの1時間ちょっとの間、休む間もなくずぅっとされました。
特にママが恐い…
絶対にママを怒らせてはダメだ。と、気づかされた日です。
ようやくルビの振り方がわかってきた今日この頃です。