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第23話 南科若葉

翌日

お父さんは活動が忙しいため

朝早くに家を出て行った

大我は泣きそうな様子だった

この辺が大我もまだ子供だな

僕はというと

今日はお姉ちゃんの部活の見学に行くため

制服に着替えていた


「なんでしんくん制服に着替えてるのー?」

「だっていちよう部活見学だし

私服じゃまずいかなぁって」

「ふーん

まぁしんくんの中学校の制服姿ももう見納めだしいいや!

高校からはお姉ちゃんと一緒に女の子の着るセーラー……」

「男子の着る制服着るよ」

「しんくんのばぁーか……」

「お姉ちゃんズボン脱ぐから……

部屋から……」

「んー?

お姉ちゃんいたら脱ぎ脱ぎできない?」


そりゃそうでしょ……

できるわけがない


「じゃあ着替えたら教えてねー!

お姉ちゃん準備できてるからー!」

「うん」


そう言ってお姉ちゃんは部屋から出て行く


「ふぅ……」


僕は制服に着替えお姉ちゃんを呼び、学校に向かった


「あっ!真矢くん!」

「あ……えーと……」

「若葉だよ!

名字は知らないよね?

南科若葉!(みなみしなわかば)

今日はゆっくり見てってね!」

「若葉ちゃん元気いいねー!」

「だって真矢くんが来てくれたんですから!

張り切っちゃいますよ!」

「なら部室行くよ!

しんくんもこっち!」

「うん」


そう言って僕らは部室に向かった


「今日は来週の文化会館でのコンサートに向けての最終的なリハーサルだからみんな張り切って行くよー!」

「はいっ!」


部活でのお姉ちゃんはいつもの姉とは違った

そこにいたのは西崎家の長女ではなく

名門高校吹奏楽部の部長としての顔をしてた


「あと今日は私の可愛い弟も来てるけどみんな欲情しておそったりしちゃダメだからねっ!」

「はぁーい!」


一気に場が和む

やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだな

そう思った瞬間だった


「……」


さっきの言葉とは裏腹に部活中はみんな真剣だ

一切の無駄話はない

いつもは僕にデレデレのお姉ちゃんでさえ、自分のパートに集中していて、僕の方を見ることさえ少なかった

なんか少し寂しいけど、これが学校での、いや、部活での顔なのかなと思い、ちょっとお姉ちゃんのことがカッコ良く見えた


「しーんーやーくん!」

「え?」


若葉さんだ


「練習中チラチラと香奈先輩の方見てたでしょー?

若葉お姉ちゃん見てたよー!」


わ、若葉お姉ちゃん!?


「べ、別に見てません……」

「そうやって赤くして顔そらしちゃうところとか若葉お姉ちゃん好きだなぁ……

男の子でもこんなに可愛い子もいるんだなぁ……」


若葉さんのその言葉になぜか僕は背筋が震えた


「こら若葉ちゃん!

しんくんに何してるの!?」

「何もしてないですよー!

じゃあしんくんまたね!」


そう言って若葉さんはさっていく

さっきの寒気は何だったんだろう

このことが気になりつつも、僕はそのあとも練習を静かに見ていた


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