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第19話 受験

休日も開け

学校が始まる

休日の間はいろいろあったが

なんだかんだで姉弟仲が深めれた気がして

良い休日になったんじゃないかと個人的には思っているのである

私自身も姉のことを以前よりよく知ることができ、いいきっかけになったのではないかと思う

てかなぜこんな口調なの?

と思う方もいるかもしれないが

なぜなら今日は

銘城の試験日なのである

そして試験には小論文という言葉遣いに気をつけなければならない試験もある

そのために心の中でも練習しているのである


「しんくんどうしたの?」

「え?何でもない

ちょっと精神の統一を……」

「なにじじくさいこと言ってるの?

本番前なんだから

気楽に気楽に!

逆にいつもと違うことすると余計緊張しちゃうよ!」


それもそうだ

香奈お姉ちゃんの言うことは理にかなっている

さすがというべき


「まぁ本番前って緊張するよね!

でも緊張してても

自分の中の判断力をどれだけ保てるかが勝負だよ!」


なんか今日の香奈お姉ちゃんは

一味違う

いつもと違う意味でいい姉と言える


「大丈夫大丈夫!

私の特製お守りがあるんだから!

みんなしんくんのこと応援してるから!」

「お兄ちゃんがんばれぇ!!」

「うん

頑張ってくる!」

「おじゃましまーす!」

「真矢まだいるかー?」


そう言って入ってきたのは

友哉と美結だった


「俺ら2人だけなんか先合格しちゃってごめんな」

「別にいいよ

大丈夫」

「昨日友哉と2人で

神社に鉛筆買いに行ったよ!」


鉛筆には交通安全と書かれていた

ここでいうと2人が気にするからあえて秘密にしておこう


「ありがと!

僕頑張るから!」

「友哉くんも美結ちゃんもしんくんのためにありがとっ!」

「いえいえ!」

「私達親友ですから!

当たり前です!」


本当いい友達に恵まれたと思う


「真矢頑張ってね!」


そう言って美結は僕を抱きしめる


「みみみ美結ちゃん……

お姉さまの前で何やってるのかなぁ?」

「え?いつも学校でやってることですよ!」

「……」

「香奈お姉ちゃん

嘘だから大丈夫だよ」

「よかったぁー!」


美結はお姉ちゃんの前で僕に絡むのが好きである

それに対しお姉ちゃんが嫉妬

何時もの流れながら

受験前には緊張がほぐれて助かる


「みんなとにかくありがと

行ってきます」

「忘れ物ない?

ハンカチ持った?

受験票は?」


お姉ちゃん心配しすぎ

でもすごくありがたい


「お姉ちゃんありがと

大丈夫だよ」

「お姉ちゃんが途中まで一緒に行かなくて大丈夫?」

「香奈さんあいかわらずのブラコンぶり!」

「心配なだけだよぉ!」


みんなとこうして話していたいけど

もう行かなきゃ


「じゃあ本当に行ってくるね」

「しんくん頑張ってね!」

「お兄ちゃんがんばって!」

「銘城で待ってるぜ!」

「真矢行ってらっしゃい!」


こうして僕は自宅を後にした


試験会場

張り詰めた空気

さっきまでそこまで感じてなかった緊張が一気の膨れ上がってきた

見たことのない単語帳

明らかにハイレベルな学生達

僕は本当に合格できるのだろうか……


受験番号の書いてある席に座る

隣は女の子だった

黒淵のメガネをかけた物静かそうな女の子

まぁ隣と言っても

カンニング防止用に1席分のスペースがとられているため

実際に関わることはないと思うが


「あ」


僕は単語帳に入っていたしおりを落としてしまう

その昔お姉ちゃんが作ってくれたしおりである

拾おうとすると

女の子が拾ってくれた


「これ落としま……」


え?

どうかしたの?


「?」

「お、落としましたよ……」


頬が赤くなっている

どうしたのだろうか?


「ありがとうございます……」

「……」


その後この女の子と再び話すわけもなく

試験の幕は開けた


……

結果は良くも悪くもないというか

一言で言えば後味が悪い

合格点が450点だとすれば

440〜460あたりをさまよっている感じ

落ちている不安が多く残る結果となってしまった

正直家に帰りたくなかった

だが今日は

香奈お姉ちゃんがごちそうをすると言っていたので

帰らないわけにはいかない

僕は重い足取りで家に向かった


パァーン!!

「おつかれさまぁ!」

「お兄ちゃんおかえりぃ!!」


家に着くと

香奈お姉ちゃんと大我に

クラッカーで迎えられた


「早く上がって上がって!

美味しいご飯作ってるから」

「うん」


正直その日のご飯は

あまり食欲が湧かなかった

でもせっかく僕のためにここまでしてくれた香奈お姉ちゃんと大我に

心配はかけたくなかった

僕は食べれるだけ食べ

美味しいと何回も言い

できるだけ心配をかけないようにした


そしてその日の夜

「はぁ……」

「しんくんはいるよー」


お姉ちゃんが部屋に来た

どうしたのだろう?


「しんくんお姉ちゃんに隠し事してるでしょー?」

「え?」

「お姉ちゃんしんくんのことなら何でもわかっちゃうんだからね」


ばれていた

動揺してきた


「何にもないよ……」

「しんくん

辛い時は

その辛いことを人に話すのが一番なんだよ?」


……

僕は話した

試験合格してないかもしれないこと

から元気で振舞っていたこと


「ありがと

辛かったのによく話せたね

しんくんはいい子だね」


と言って

ベッドで隣に座っているお姉ちゃんが

僕の頭を胸にそっと抱き寄せた

そのまま頭を撫でる


「でもしんくんは頑張ったよ

お姉ちゃんずっと見てたよ

しんくんの頑張ってるところ」


そうお姉ちゃんが言った瞬間

僕はもう感情を抑えることができなくなった


「おねえちゃあん……」


僕は泣いた

いつもの泣くのとは全然違った

声をあげて子供みたいにわんわん泣いた


「しんくんまたえーんえーんしちゃったの?

しんくん最近よく泣いちゃうね

赤ちゃんにもどっちゃったのかな?」


そう言いながら香奈お姉ちゃんは僕の頭を優しく撫でる


「しんくん大丈夫?

しょうがないなぁ」


そう言うと香奈お姉ちゃんは僕の体を持ち上げた

体がふわぁっっと宙に浮く

そして椅子まで移動し

椅子に座り

僕を膝の上に乗せ

そのまま抱っこした


「しんくん昔からね

泣いてる時はこうやってお姉ちゃん膝の上で抱っこしてあげると

泣き止んでたんだよ!」


不思議な感覚に包まれた

悲しみがさぁっと引いていき

至福で満たされるような

そんな感覚だった


「ほら泣き止んできた!

しんくん昔と変わってないね!」


香奈お姉ちゃんはやっぱりすごい

僕の事なら何でも知ってる


「もういいでしょ?

そろそろ降りよっか?」


嫌だった

僕は香奈お姉ちゃんにぎゅっとしがみつく


「しんくん?

まだ抱っこがいいの?

しんくんは甘えん坊さんだねぇ」


もうなに言われてもいい

恥ずかしさもない

ずっとこうしてたかった


「もししんくんが銘城落ちたら

私も銘城やめる!

転校して

しんくんが行く高校に行く!

一緒に高校行こっ!

それなら大丈夫でしょ?」


いつもなら

ダメだよって否定するけど

この日は

力なくうなづいた

そして


「あれれ?

しんくんねんねしちゃった?

本当に赤ちゃんみたい……

私の可愛い可愛い赤ちゃん」


寝てしまったらしい

香奈お姉ちゃんは

そのあとしばらく僕を抱っこしていた


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