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The Searcher  作者: 深水晶
第一章 真夜中の放浪者
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第七節 凶眼 (Side:百々加)

「何の真似ですか?」

 百々加は、ほぼ同じ目線の男の腕の中で、冷淡に言った。

「挨拶だよ、モモカチャン」

 にっこり笑ってシュウは答える。

「隆司がいましたね」

「うん、いたね。カワイイ女の子と一緒だったね」

「あれは何か妙な誤解してたと思われますが」

「誤解じゃないよ~。俺は本気だってば」

「挨拶じゃないんですか?」

「挨拶だけど、俺の愛情表現なの。だから俺の愛を受け止めてよ、モモカチャン」

 本気とも冗談ともつかないシュウの口調に、百々加は冷めた口調で言う。

「所長、大事な人に告げ口しますよ」

「別にイイよ」

 シュウはにっこり笑う。

「どうせ俺は全然相手にされてないから。気にしてくれたらラッキーみたいな?」

「……ヤケですね」

「俺、クールビューティーが好みなの。ツレなくされるとすっごくモエるの。だからモモカチャンもサイコーに好みでラブ。だから今すぐしよ? 大丈夫、モモカチャンもすぐ俺を好きになるから」

「そこまで言うとセクハラです、所長」

「え、でも、イヤがってないでしょ、モモカチャン」

 シュウの言葉に、百々加の全身からユラリと殺気が立ち上る。

「…………」

「……ゴメン、調子に乗りました」

 そう言ってシュウはニコリと笑った。百々加は無言で見つめる。

「しかし、本当に《暗示》だとしたら、和豊の手口に似てるんだけど?」

「問題なのは、実行犯のほとんどが、無関係な人間である可能性です。実際連中は何も知らないようでしたし」

 尋問は既に終えている。

「まぁ、仮に《凶眼》の持ち主が黒幕だとしても、何とかなるって。俺もバックアップするし、和豊絡みならオーナーも動いているだろう」

「…………」

「百々加」

 シュウは百々加の頬をそっと撫で、もう一方の手で頭を抱え込むように引き寄せた。

「あまり無茶な事はするな」

「…………」

「千尋は喜ばないぞ」

「……一言余計です」

 百々加が堅い口調で言うと、シュウは百々加を解放した。

「そういうカタクナなトコロがソソラレるんだよね!」

 シュウは軽い口調で茶化すように言った。百々加はそんなシュウをチラリと見たが、何も言わずにクルリと背を向けた。

「何処へ行くの?」

「仕事に戻ります」

「夕食奢るよ?」

「あなたと一緒では目立ち過ぎます」

「ムリヤリ口説かないって」

「お調子者の仮面は必要ありません」

「君には《察知》能力があるし?」

 百々加は振り返り、無表情で言う。

「恋人にフラレて淋しいと言うなら、話は別ですが」

「……恋人じゃないよ」

 シュウは淋しげに笑った。

「人恋しいのは、間違いないけどね」

「所長は」

 百々加は少し呆れたような顔になる。

「本気と冗談を入り混ぜてくるから、非常に読みづらいです」

「何が言いたい?」

「あなたが企みや冗談でなく私に弱音を吐く筈がありませんから」

「……うーわ、バレてる?」

 シュウは肩をすくめた。百々加はため息をついた。

「ま、でも身体の関係から始まる恋もあるから、一度だけでもトライ……」

「社交辞令は必要ありませんから」

「いや、かなり本気だけど?」

「付き合えません」

 百々加はキッパリ言う。

「ヤケになってるだけでしょう。無意味です」

「慰めてよ?」

「仕事を始めたばかりですから」

 百々加はまた背を向ける。

「ツレないね?」

「失礼します」

 百々加はそう言って、シュウをその場に残して歩き去る。その背中を見送り、シュウは肩をすくめた。

「本当に恋人じゃないんだけどな」

 一人ごちる。その時、携帯メールの着信音が鳴る。ゆるゆるとそれを確認して、シュウはため息をつく。

「……特別報酬は出ないんだろうな」

 もう一度、シュウはため息をついた。

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