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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第三十節 協力 (SIDE: シュウ)

「何だって?」

 恭一郎は、受けた電話の内容に、眉間に深い皺を寄せ、気色ばんだ。そんな恭一郎の様子に、ただ事ではないものを感じて、シュウは眉を微かにひそめ、注視する。

「判った。それでどうした?」

 恭一郎の顔から表情が消える。

「……そうか。とりあえず処置はそれで良い。僕もすぐにそちらに急行する。病院には、誰が連れて行った?」

 病院という言葉に、シュウは、誰か恭一郎の知人か親戚が、入院したのだろうかと思った。だが、次に恭一郎が浮かべた表情を見て、そうではないと気付いた。恭一郎は激しい怒りと憎悪を湛えた顔で、中空を睨みつけた。

「……恭一郎」

 シュウが声をかけると、表情を隠すように背を向け、うつむいた。

「判った。報告有難う。悪いが……暫く付き添って、怪我が軽くても、おそらくショックを受けているだろうから、カウンセリングを受けさせてくれ。入院の必要がない場合には、僕の実家の方へ連れ帰って欲しい。ああ、彼女に身内はいないから。頼む。僕は……最悪帰れないと思う。詳しい指示はまた後で」

 そう言って通話を切る。

「……恭一郎、まさか友香か?」

 シュウが眉をひそめて尋ねる。

「事務所が襲撃されたそうです」

 恭一郎は硬い声で言った。恭一郎はシュウが口を開こうとする前に、更に言葉を重ねる。

「百々加と隆司にはまだ言わないでください」

 恭一郎の言葉に、シュウは顔をしかめた。

「なんでだよ」

「……襲ったのは、楠木成明です」

 恭一郎の言葉に、シュウは顔を歪めて、口の中で罵った。

「事務所に張り付けてあった部下は、全員倒されて病院行きです。友香は打撲傷以外の外傷は、とりあえず見当たらないようですが、気を失っています。一対一じゃ到底敵わないから、百々加にガードを張り付かせる事にします。百々加は嫌がるでしょうが」

「おい、それじゃ百々加の仕事に支障が出るんじゃないか」

 シュウは顔をしかめた。

「だが、シュウでも敵わない相手に、百々加一人で勝てますか?」

「百々加は戦闘能力だけでいえば、俺より強いよ。だけど楠木成明は、強さ云々よりも相性が悪すぎる。アイツは戦闘能力も高いが、近接戦闘時に、相手の力を利用して攻撃するのが得意なんだ。複数で対峙しても、必ずといって良いほど個別で潰される。戦術は変則的で、手段選ばずで、心理戦が得意だ。身体は守れても、心は容易に守れない」

「心理戦? だけど、百々加は容易く挑発されたり、心乱されるタイプじゃないでしょう?」

「判ってないな、恭一郎。成明は自分に対してはMなのに、他人の一番弱いところを、えぐって追い詰めるのが好きな、超ドS野郎なんだよ。他人の過去を調べて、トラウマを引きずり出してえぐるのなんか、お得意だ。普通に勝てる相手にも容赦しない。俺なんか、何度アイツに血ヘド吐かされたか」

「……シュウ」

 恭一郎はシュウを案じるように見つめた。

「百々加はそんなに強くないよ」

「シュウ、あなたはまさか……」

「恭一郎はどうするつもりだ?」

 シュウは、はぐらかすようにニヤリと笑った。

「僕の心は決まっています。彼は敵です。しかも、僕の大事なものに手を出しました。僕は泣き寝入りしません。全力で、徹底的に叩きのめします」

 恭一郎は真顔で宣言した。

「じゃあさ」

 シュウはイタズラを企むような、含みのある笑顔を浮かべる。

「暫く事務所閉めてもイイ? 臨時休業ってことで」

「何を企んでいるんですか?」

 真顔で尋ねる恭一郎に、シュウはチェシャ猫じみた笑顔で答える。

「恭一郎の心配するような事はしないって。昔のコネは利用するけど、悪用しない。人間の無知の恐さは、学習したからな。恭一郎が、全面的なバックアップして貰えるなら、鬼に金棒だ」

「昔のコネって、The Searcher時代のですか?」


「使えるモノなら、小学生時代からの全てのコネを利用するさ。俺の取り柄はソレだからな」

「……やはり、昔の仲間との連絡は、絶ってなかったんですね」

「うん、悪ィ」

 シュウがニコッと笑うと、恭一郎は溜息をついた。

「本当は悪いなんて思ってないでしょう」

「ゴメン」

 アッサリ言うシュウに、恭一郎は長い溜息をついた。

「……まぁ、ある程度は把握していましたから、今更ショック受けはしませんけど。だけど、今回の件とは関係なく、これまでも、非合法な物や情報を入手したりするのに、使っていたでしょう。何故、正直に告白する気になったんですか?」

「決まってるだろ、恭一郎。全面協力して貰うためだ。こちらの手の内を見せるから、お前のも見せろ、な?」

 ニヤッと笑うシュウに、恭一郎は呆れた顔で肩をすくめた。

「……勝手な言い分ですね」

 しかし、何か諦めたような顔で言う。

「でも、あなたが協力的になってくださるのは、とても有難く思います。僕とシュウが組めば、おそらく最強ですから。敵の支援者次第ですが」

 恭一郎の言葉に、シュウは眉を上げた。

「珍しく自信ないのか、恭一郎。お前の最大の武器は、裏を見せない度胸と、ハッタリと強引さと傲慢さだろう」

「褒め言葉には聞こえないですね」

 恭一郎は苦笑する。

「僕はしがない高校生なので、大人の度量と能力に、甘えてみたくなる事もあるんですよ」

「俺に甘えたいのか? 今だけ特別サービスで胸に飛び込ませてやってもイイよ、恭一郎クン」

 シュウはニヤニヤ笑う。

「シュウに甘えるくらいなら、親父に頭を下げた方がマシですね。でも、シュウが味方でいてくれて、本当に良かったと思っていますよ」

「良いのか、そんなに信頼して。俺はお前をハメようとしてるかもしれないぞ?」

「その時は僕に問題があったと思って、諦めます」

「何故そう言える?」

「シュウは慎重な質だから、沈みそうな泥舟からは真っ先に逃げ出すでしょう。だけど長いものには巻かれる質だから、底が抜けそうにない間は約束を守っていてくれます。シュウはいわば、幸運みたいなものですよ。縛りつけようと思って、引き留められない。僕の器量や能力が足りなければ、去っていくでしょう。シュウはそれで良いんです。元々僕のわがままですからね。そばにいて、協力して欲しいというのは」

「……恭一郎」

 シュウは真顔になって恭一郎を見た。

「なんですか?」

 恭一郎は微笑する。

「お前、本当に質が悪いガキだよ」

「どういう意味ですか」

「素で言ってるなら天性のタラシだ。始末に終えない」

 シュウはぼやくように言った。

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