第二十七節 聞き込み (SIDE:百々加)
四人の襲撃者達の身元で、死んだ少女の名は判明したが、襲撃者達と一緒にいた男の名はまだ判明していない。
公園にいた八名と、人質になっていた少女については、名前すら判らない。百々加は、隆司には必要な情報以外は与えないつもりでいた。
不確定な情報を与えても、適切な分析や情報の取捨選択ができないからだ。隆司に端末になれと言うのは、そのためでもある。
隆司が非情になりきれない事は、2年の付き合いで良く判っている。それなのに情を殺せと言うのは、感情移入しすぎた隆司が暴走しないためと、隆司自身が傷付かないためにだ。普段から制御して深入りしなければ、傷も浅く済むのではないかと考えた。
本当ならば役割を代わりたいくらいだ。しかし、百々加が高校生になりすますのは無理があった。
また、隆司が冷静な広い視点で、地道で根気のいる、入念な聞き込み調査ができるとも思わなかった。
調査の最初は、できるだけ多くの玉石混淆の情報を集める事である。玉石混淆という事は、使える情報と使えない情報が、入り混じっているという事だ。
使えるか使えないかの判断は、それらの情報の真偽や正確さなどを、一つずつ確認してからになる。
調査期限は三週間。依頼者はそんなにかかるのかと青ざめたが、相手の名前も身元もろくにない状態では、1、2週間ではかなりきびしい。
百々加が地道な聞き込みをしていると、シュウから電話がかかった。
『ゴメン、百々加。肝心の手紙渡すの忘れた』
「あ、いえ。私も忘れていましたから」
『夜か夕方は、予定どう? 良ければ夕飯がてら渡すよ』
「今のところ予定は大丈夫です」
『良かった。じゃあ、七時に迎えに行くよ。それと、昨日の定時報告目を通したんだけど、神無大学は俺か友香が回ろうか?』
「宜しいんですか?」
百々加は尋ねた。
『今のところ、新しい依頼は入ってないから大丈夫。とりあえず俺が行くよ。その方が合流しやすいしね』
「すみません、所長」
『謝らないで、モモカチャン』
シュウは笑いながら言った。
『身体を動かしたい気分なんだ。俺も大学生だった事があるし、そう年食ってるわけじゃないから、たぶんそんなに浮いたりしないでしょ。ま、車はいつものヤツはやめておくけど』
シュウの言葉に百々加は苦笑した。確かに、あの派手な外車は浮くだろうと思った。
「そうですか。助かります」
『なんか笑ってない? モモカチャン』
「気のせいですよ、所長」
百々加はとぼけて言った。
『まぁ、どっちだって良いけど。何かあったり応援必要なら連絡して』
「はい、了解しました」
『ところで、隆司の携帯繋がらないんだけど、アイツちゃんと仕事してるの?』
シュウの言葉に、百々加は眉間に皺を寄せた。
「え? 連絡取れないんですか」
『いや、携帯の電波が届かないか、電源入ってないってアナウンスが流れるんだよね』
百々加は眉間の縦皺を深くした。
「すぐに確認しておきます。学校の事務室にかけて、呼び出しかけてみて、駄目だったら行ってみます。有り難うございます、所長」
『いや。ただ、本当にヤバそうだったら、連絡して。頼むから』
シュウの必死さを押し殺すような声に、百々加は苦笑した。
(本当に隆司は愛されているなぁ)
「大丈夫です。安心してください」
百々加は答えた。




