第二十六節 最低の反応 (SIDE:シュウ)
「ところでシュウ、少し聞きたいんですが、今回楠木成明経由で四条棗の依頼を受けた理由は、千尋の手紙を入手するためだったのですか?」
恭一郎の言葉に、シュウは嫌そうに顔をしかめた。
「恭一郎、俺をハメた時もそうだったけど、本当にやり方がヤラシイ上に、エグイよな」
「そうですか?」
「逃げ道をちゃんと作らないと、窮鼠猫を噛むって事になりかねないって」
「返事になってませんよ」
「君の反応はオッサンくさ過ぎるよ。シュウチャン泣いちゃうッ」
「……話をそらさないでください、シュウ」
「ってか、あのさ」
シュウは剣呑な目つきで恭一郎を睨む。
「言いたい事があるなら、はっきり言えば? そういう遠回しで大仰な、持って回ったやり方が、本当イヤラシイんだけど」
「何はともあれ、彼らはあなたの友達だから、付き合いをやめろと言う筋合いは、僕にはないんですが、それによって、あなたがトラブルや犯罪に巻き込まれるというなら、話は別です」
「で? 何が言いたいの」
「まさか、またやったわけじゃないですよね、The Searcher」
恭一郎の言葉にシュウは笑った。
「アレは代替わりしたんだよ。もうやめろって君に約束させられたからね」
「……まさか」
恭一郎が蒼白になる。
「別に俺が指示したわけじゃない。そこは勘違いしないで欲しい。ただ、電脳世界に潜伏する神の網は、あれからも成長し続けてるってわけだ。1人2人潰しても、また次が現れる。キリがないんだよ」
「知っていたんですか」
「知らなかったよ。連絡が来るまでは。ただ、こんな事になったのは、君が、The Searcherの正体は俺だと、ナツに教えたからだ。それで自動的に情報がナリに流れた。あの2人は一緒に住んでいるから」
「僕の……せいですか」
恭一郎がかすれた声を上げた。シュウはゆっくり左右に首を振る。
「そうとは言わねぇよ。俺は一度、無秩序と無自覚が、どんな混沌を引き起こすか、経験している。だが、最初から、善意を悪用するつもりでいるヤツに利用されたら、もっと悲惨な事になる。ならば、介入はできなかったとしても、最低でも現状把握くらいはしておかないと、ヤバイって事は判るよな?」
「つまり、連絡を絶たれないために、取引せざるを得ないと言いたいんですか」
「不本意ながらな。恭一郎が、アイツを俺の代わりに倒してくれるっていうなら、話は別だ。俺だって好きで相手してるわけじゃない。始末できるもんなら、とっくの昔にやってる。アレは俺の天敵なんだ」
「シュウ」
恭一郎は神妙な顔つきで言った。
「そのナリこと楠木成明が、和豊と繋がっている可能性があるという事は、知ってますか?」
「和豊と?」
恭一郎は眉を上げた。
「和豊の潜伏先は、まだ掴めていません。しかし、先日あなたをつけていて偶然、密会現場を目撃しました」
「まさか……和豊とナリが、か?」
シュウの眉間に皺が寄った。
「はい、そうです」
「それは……」
シュウは痛そうな表情になる。
「それはいくらなんでもマズイだろ」
シュウが言うと、恭一郎はホッとした表情になった。
「良かった」
「何が良かったんだよ」
「ここであなたが敵に回ったら、どうしようかと思っていました」
「……どうする気だったんだよ」
「それは勿論、この場ですぐに拘束して、最悪は殺さなくてはならないかと覚悟しました」
真顔で言った恭一郎に、シュウは本気で嫌そうな顔をした。
「やっぱりリアクション最低ッ。っていうか恭一郎、本気でやる気マンマンだったでしょ!!」
「すみません」
恭一郎はニッコリ微笑んだ。
「用意周到すぎて、隙のない金持ちの素人って、本当に最悪。手加減しない辺り余計に最低。だからカワイクないっての!」
「自信がイマイチなかったので。しかし、監視は護衛を兼ねて、付けたままにしておきます」
「護衛相手を殴る事もあるボディガードなんかいらねぇよ。本ッ当、最低の反応だよ、恭一郎」
シュウはぼやいた。
「予告無しに、黙って殴られる方が良かったですか?」
「真顔で聞くなよ。頼むから」
溜息ついてシュウは言った。




