第二十四節 シャワー (SIDE: 百々加)
心臓がまだおかしい。百々加は混乱したまま部屋へと戻り、すぐに服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びた。
湯が沸くのを待ち切れずに、水の状態から頭に被ると、さすがに少し肌寒かった。しまったと思いつつも、そのまま浴び続けた。
お陰で冷静さを取り戻してくる。
(あれ? 結局受け取ってない)
「……忘れてた」
百々加は赤面した。今更ながら、自分がいかに動揺していたかを自覚した。
「本当に冗談キツイんだから……」
愚痴っぽくなってしまう。シュウの事は好きだ。しかし、決して恋愛感情ではない。
恋愛は苦手だと思う。男と女の関係など面倒だと思う。女に生まれて良かったと思った事は一度もない。正直なところ、自分の身体に劣等感すら抱いている。
女も鍛えればある程度は強くなれる。だが、体格差や体力差、筋力差を埋めるのは、努力だけでは難しい。
結局のところ、持って生まれたものによって、最終的な限界はほぼ確定している。それを超えた限界など現実にはそうそう拝めない。
だが、人と人との闘いならば、肉体的な強さだけで勝負は決まらない。そもそも勝つ必要がなければ尚更だ。
人は自分の心を殺すことはできない。だから戦術や策略は、人の心に隙を作らせ、そこを狙うために用いるのだと百々加は思う。
時代や文化は変わるが、人の心や機能はさほど変わらない。誰かが誰かに、恋や愛を語ろうと自由だ。
しかしそれは自分には関係がないと百々加は思っていた。そう思い込んでいるから自分に対する好意や秋波にも気付かない。
だからシュウが本気で言っているとは露程にも考えなかったし、他の誰かに好かれる可能性も全く考えていなかった。
自分が誰かに恋する可能性すらも。
最初から否定している可能性について、人は容易に想像できない。シャワーは結局お湯が出る前に、浴びるのをやめた。風邪を引きそうだった。慌てて水を拭い、衣服を身にまとう。帰りは銭湯へ寄ろうと考えた。
とりあえず暫くは外で聞き込みだ。念のためカイロを貼って、外に出た。




