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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第二十節 手紙 (SIDE:シュウ)

「間違いなくバカだよな」

 シュウは1人呟き、溜息をついた。

「何をやってんだろ、俺」

 そう言いながら、唇には笑みを浮かべる。

「報われねーよなぁ。好きなんだからしようがねぇけど。いい加減マゾくせぇよ。ヤバイな」

 ガリガリと頭を掻いた。フッと気配を感じて顔を上げると、目的の人物の姿が見えた。シュウは車のクラクションを軽く鳴らした。

 相手はこちらに気付き、驚いた顔をして急いで駆け寄って来る。それが嬉しくて、ますます顔がゆるんでしまった。

「ヤッホー、モモカチャン。スッゲー ラブリー、超キュート。いやぁ、イイモノ見ちゃった。デートしない?」

 シュウがそう言うとさすがに呆れた顔をした。

「所長。仕事サボって何をしてるんですか、こんなところで」

「アパートまで送るよ。あと、渡したい物がある」

「知ってたんですか?」

 それは神楽坂学園高校の正門前。赤い流線型の2シーターの派手なスポーツカー。実用というよりデート向き。学校へ迎えに来るには派手過ぎる車だ。

 しかも運転席に座る男は、アロハシャツに光沢のある黒いジャケットを羽織り、シルバーのネックレスと片耳ピアスをそれぞれ3連。手首にはバングル。キツネ色の肩先までの長髪は、無造作にセットされていて、日に灼けた肌と白い歯の対比が眩しい。

「田舎では浮く恰好ですね」

 百々加の正直な感想に、シュウはガックリした。

「イヤーン、超カッコイイって言ってよ、モモカチャン」

「冗談はともかく、何ですか、渡したい物って」

「助手席に乗ってくれるまでは、教えてあげない」

 シュウがそう言うと、百々加は溜息をついたが、助手席側に回って乗り込んで来た。

「乗りましたよ」

「じゃ、出発進行! シートベルトしてね、モモカチャン」

 そう言って車を発進させた。

「所長、反対方向です」

「喫茶店行こうよ、モモカチャン。どうせ君の部屋は珈琲とか置いてないでしょ」

「その通りですが……何ですか、教えてください」

「君が喜ぶモノだよ。考えてみて」

「私が?」

「そう」

 シュウがコクリと頷く。

「今の仕事に関係ある情報?」

「仕事は関係ナシ。プライベートで」

「……ますます見当がつきません」

「そんなに難しくないよ。君が探し屋になった原因は?」

「……まさか」

 百々加は表情を変えた。

「千尋、ですか」

 百々加の声が震えた。

「そういう事。なんと1週間前に投函された手紙で、差出人は村上千尋、リターンアドレス付き」

「どう……して」

 百々加の声がかすれた。

「受取人が死亡していたから未開封でゲット。開けるも捨てるも、君次第。どうする、百々加」

「どうやって手に入れたんですか?」

「ま、コネだけどね。時間外報酬で、ついでに貰ったヤツの1つだから、百々加にあげるよ」

 そう言ってシュウは笑った。

「なんで」

 驚きと戸惑いと喜びが入り混じった表情で、百々加はシュウを見つめた。視線を感じて、シュウは照れ臭そうに笑った。

「君が喜ぶと思って」

 その言葉に、百々加は不安げに顔を歪めた。

「あの、所長」

「二人きりの時は、シュウって呼んでよ」

「……シュウ」

 シュウは唇をゆるめた。

「何?」

「無理していませんか」

 百々加の言葉に、シュウは苦笑した。

「あのさ、百々加。男の仕事の半分は、女の前でカッコつけることなの。そういうワケだから、男の裏事情は聞いちゃダメ。カッコ悪いでしょ?」

「……ですが」

「敬語もやめて、モモカチャン。じゃないとキスしちゃうよ?」

「嫌だと言っても、あなたはどうせしたい時にするんでしょう」

「……誘ってるの?」

「え?」

 シュウの言葉に、百々加はキョトンとする。

「キスだよ」

 シュウの言葉に、慌てて百々加は首を振る。

「まさか」

 そう言うと、シュウは大仰に溜息をついた。

「他の男に惚れてる女に惚れるのって、切ないねぇ」

「ご冗談を」

 百々加は苦笑する。

「冗談じゃないよ、本気だよ?」

 シュウは笑って言った。

「誰にでも言ってるくせに」

「だからぁ、モモカチャンは特別なんだって、言ってるでしょ。他は全部、社交辞礼だってば」

「本当に質が悪いですね。本気と冗談の区別がつかない」

「どちらも本気だとは思わないワケ?」

 シュウの言葉に、百々加は笑う。

「あなたにはもっと素敵な女性が似合いますよ」

「俺は百々加がイイ」

 シュウが言うと、百々加は困った顔になった。

「嘘だよ」

 シュウは言った。

「そんな顔しないでよ、傷付くでしょ。男はナイーブなんだから」

「すみません」

 百々加は苦笑した。シュウは右にウィンカーを出した。

「ねぇ、百々加」

「はい」

「俺が、本気で百々加を欲しいって言ったらどうする? 千尋の身柄と交換で」

 百々加の方を見つめ、真顔でシュウは言った。

「あなたは、そんな事を言ったりしません」

 百々加も、シュウを見つめて答えた。

「……そんなに信じられると、信頼裏切りたくなっちゃうなぁ」

「シュウは、私のヒーローですから」

「ヒーローねぇ?」

 シュウは首を傾げた。

「そんなモノより恋人になりたいんだけどな」

「シュウはロマンチストですね」

「なんで?」

 シュウはキョトンとした。

「永遠の恋を探しているみたいに見えます」

 シュウは苦笑した。

「俺は恋の狩人だから、それをやめたら死んじゃうの。ってなワケだからモモカチャン、俺と永遠の愛を育もう。1時間でもイイから」

「勘弁してください、そういう冗談」

「本気なのに~」

「歌わないでください」

 シュウは喫茶店の駐車場に車を停めた。

「シュウ」

「何?」

「本当に無理はやめてください。本気で心配してるんですから」

 百々加が真剣な表情で言うと、シュウは柔らかく微笑んだ。

「うん、有り難う」

 穏やかな笑みは、しかしどこか苦しげに切なげに見えた。

「シュウ?」

 百々加が問いかけると、シュウはかすめるように、百々加の唇を奪った。

「!」

 百々加が息を呑むと、シュウは悪戯っぽく笑った。

「隙だらけだよ」

「だからって何故キスするんですか」

「それくらい考えなよ」

「……趣味と実益?」

「何ソレ」

「オーナーの迷言です」

「あー、恭一郎ね。彼なら言いそう。でも、俺は違うからね」

「違うんですか?」

「そ。だから、考えて。期限はつけないけど宿題ね」

 シュウはニッコリ笑った。百々加は戸惑う顔で見上げた。

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