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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第十八節 油断 (SIDE: 百々加)

 百々加は安堵した。

(これで隆司の事は忘れて、自分の仕事に専念できる)

 百々加にとって、一番頭が痛い問題は、隆司のあまりにも酷い方向音痴である。

(この校舎は隆司でなくても、迷いそうな構造だからな)

 常に誰かがそばにいるという状況は、探索には不自由や不都合もあるだろう。だが、隆司が迷子になって仕事に全く取り掛かれない状況よりは、マシなはずだと百々加は思う。

「どうしてですか、百々加さん」

 玄関までついて来た隆司が、情けない顔で百々加を睨む。

「今更、信用できると思っているのか?」

 百々加は言った。隆司は言葉に詰まる。

「今朝、学校へ来るまでは、信用していたよ」

 百々加は冷たく言った。

「まさかこんな日に、遅刻するはずがないと思ったからな。だから、オーナーがお前の遅刻を心配した時も、大丈夫だと言ってしまった」

「あ……っ」

「おかげでいらぬ恥をかいた。別にそれは済んだ事だから、気にはしないが、今後ずっとそれじゃ困る。私も自分の仕事がしたい」

「……すみません」

 意気消沈した声で、隆司はうなだれた。

「とにかくお前は、自分のできる事をしろ。無理はするな。報告を忘れない事。自己判断は決してしない事」

「判りました、百々加さん」

 落ち込む隆司に、百々加は笑った。

「では、私はもう行く。頑張れ、弟」

「……百々加さん」

 殊勝な声だ。

「何だ?」

「呆れましたか、俺のこと」

「呆れたよ。失望した」

 百々加の言葉に隆司は痛そうに顔を歪めた。百々加は苦笑した。

「だけどまぁ、そんなに使えない事もない。たまに偶然かもしれないが、面白い情報も拾ってくるし。私には出来ない事を、お前はやれる。だから愛想を尽かすところまでは、いってないから安心しろ」

「本当……ですか」

 隆司の顔が嬉しそうに紅潮した。百々加は自分の顔が、ゆるんでいる事に気付いていたが、その顔があまりにも嬉しそうで幸せそうだったので、表情をゆるめたまま言った。

「世辞は言わない。調子に乗られたくないからな」

 百々加の言葉に隆司は苦笑する。

「百々加さん、すみませんでした」

 頭を下げた隆司に、百々加は少し困ってしまった。何となくモヤモヤするものを感じたが、原因は良く判らなかった。自分で自分の気持ちが理解できず困惑しながら、百々加は言った。

「謝るな」

 百々加は言った。

「悪いと思うなら、仕事で返せ」

 いつものように、冷たく突き放す。

「判りました」

 隆司はニッコリ笑った。百々加もつられて笑ってしまった。

「じゃあ、またな」

 百々加は隆司に背を向け、外に出た。

 後になって、百々加はこの日の事を後悔する事になるのだが、この時はそんな事は夢にも思わなかった。

 百々加はこの時、たいした事はなく、さほど時間はかからないと思っていた。油断していたのだという事に、気付かずにいた。

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