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The Searcher  作者: 深水晶
第一章 真夜中の放浪者
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第二節 学園潜入 (Side:隆司)

 隆司はまず暫く自分の拠点となるアパートへ向かった。

「意外といい感じだな。風呂はユニットだけど、家のより広いし、使いやすそう」

 そんなに長居するつもりはないのだが。その時、連絡用の携帯電話のコール音が鳴る。知らない番号だが、すぐに出る。

「はい」

『私だ』

「百々加さん」

『一応確認だ。アパートへは無事辿り着けたか』

「ええ。判りやすいところでしたから」

『当然だ。方向音痴のお前のために考慮した』

「容赦ないですね」

『本当のことだ。落ち着いたら、周辺を探索がてら散歩しろ。一夕一朝に、土地勘は身につかないだろうが、仕事なのだから、アパートにはこもらず、なるべく外出しろ。

 あと友人知人は可能な限り作れ。ナンパも良い。ハーレムを作れ。だが、秘密厳守で、こちらの意図は気付かれない言動しろ』

「ナンパ推奨されるとは思いませんでしたよ、百々加さん」

『言っておくが、付き合いはしても遊ぶなよ。あくまで仕事だ。ただ漫然と付き合うな。情報収集しろ。それが、目的だ』

「はぁい」

『金が足りなかったら、連絡しろ。だが、無駄遣いはするな』

「了解」

「それにしても、百々加さん」

『何だ?』

「本当に現役の高校生が、それも私立の名門の生徒が、援交だの恐喝だのやりますかね?」

『それを調べるのが仕事だ』

 それは全くその通りだ。しかし、隆司は納得できないし、理解したくない。

「俺、この仕事、何か嫌です」

 ぽつりと言った。

「何か嫌な予感がします」

 それは予兆というほど、はっきりしたものではなかった。漠然とした不安。得体の知れない恐怖。

『なら、今すぐ辞めろ』

 百々加は容赦なかった。

『足手まといは必要ない』

 そう言われることなど、隆司は最初から判っていたはずなのだが、それでも、慰めまたは激励の言葉を期待していた。

「……本当に、容赦ないですね」

 ちょっと泣きそうになりながら言うと、

『終わったら慰めてやる』

 という答えが返ってきた。一瞬、聞き違いかと思った。

「……え?」

『大サービスだ。終わったら慰めてやる。何か食事でも奢ってやろう』

「ほ……本当に?」

 隆司は驚いた。

『ああ。お前が失敗したら、私も面倒だからな。くれぐれも気を付けろ。私がお前の代わりに潜入するわけにはいかないからな。まあ、頑張れ』

 百々加とのつきあいはもう二年くらいになるが、その間一度も褒められたり、慰められたりした事がない。隆司は驚き息を呑んだ。

『今回は連帯責任だからな。失敗されたり、無闇矢鱈に凹まれても困る』

「…………」

 どうせそういうことか、と隆司は脱力した。

「や、もう頑張りますよ。ナンパでもなんでもして」

『そうしてくれ』

 淡々とした口調で、百々加が言った。

(たぶん化粧して女装してかつらかぶれば美人だと思うけどなぁ)

 そんなことを言えば、殺されかねないので、とてもいえない。

「可能な限り頑張ります」

『死ぬ気でやれ』

 隆司はとほほな気分で頷いた。

「死なない程度に頑張ります」

 百々加はそれ以上は言わなかった。

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