第十四節 不安 (SIDE: 百々加)
「賭けをしないか、百々加」
恭一郎が言った。
「隆司は3サイズを聞き出せると思うかい」
「それは賭けになりませんよ、オーナー」
百々加は言った。
「そうかい?」
「オーナーは隆司が聞き出せると信じてるんですか?」
「まさか。聞くだけ聞いて、失敗するのがオチだろう。直球で聞いたりしないだけのデリカシーはあると信じたいがな」
恭一郎は苦笑した。
「私もそう思います」
「だけど、それくらいの積極性や食い付きは、見せて欲しいんだ。あいつは根性がなさすぎる」
「それは同感ですが、オーナーがそこまで気にする必要はないと思います」
「あいつは元々タフなタイプじゃないけど、昔からああだったわけじゃない」
「…………」
「俺がこき使って引きずり回してやらないと、引きこもりかねなかったからな」
「だけど、あいつは全くあなたに感謝していませんよ?」
「感謝される気なんか更々ないよ。可愛い女の子ならともかく、あんなむさ苦しいのに」「それも同感ですが」
百々加は苦笑した。
「見ていて苛々しますよ。もどかしくて」
「僕はこれから予定があるから帰るよ、百々加。隆司が戻って来たら、休み時間内に職員室で担任教師に挨拶して、教室へ向かうこと。それから昼休みに生徒会室へ行くように、指示してくれ」
「生徒会室?」
「神楽坂学園高校の中央公共合同学生交流会館、つまりここセントラルホールは、生徒会執行部が代々管理しているんだ」
「え? まさか……」
「自販機以外の施設やサービスを、生徒および教職員が利用するには、生徒会が発行しているIDカードが必要なんだ」
「それは……購買も、食堂もですか?」
百々加は嫌な予感がした。
「施設やサービスを利用すると、利用ポイントがカードに計上される。購買や食堂での支払い金額や、学園への貢献度によって、各施設を利用できるポイントの上限が変わるらしい」
「貢献度ってまさか……」
「寄付金の額や成績だ。学業だけでなく、部活や公式大会での成績、学外活動も含む。怪しくて胡散臭いだろう、百々加」
「……それは、調べてもよろしいんですか」
「ああ。責任や事後処理は僕に任せてくれ」
恭一郎は笑った。
「今日のところは盗聴器を少々故障させておいた」
百々加は無言で恭一郎を見つめた。
「この席は監視カメラの死角だ。もしかすると疑いを持たれる可能性はあるが、ここの連中が、和豊と繋がっているなら、既にバレてるだろう」
「それで隆司一人で大丈夫でしょうか」
「和豊はなんだかんだ言って、隆司が可愛いみたいだからね」
恭一郎は曖昧に笑った。
「殺すなら、自分の手で殺したいと思っているさ」
「……オーナー」
百々加は眉間に皺を寄せた。
「大丈夫。百々加には、なるべく負担をかけないよう考慮するから」
「……ますます不安になって来ました」
百々加は溜息をついた。




