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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第十三節 メディア・ライブラリ (Side:隆司)

 セントラルホール4階にあるメディア・ライブラリの室内は、殺風景一歩手前の、簡素なネットカフェのように見えた。

 授業中なので室内に人はいない。PCの電源は全て切られていたが、空調だけは機能していた。

 静かな部屋に、ファンの音がやけに響く。スチール製の棚に、分類毎にDVDやCDなどがズラリと並んでいる。

 レーザーディスクやビデオテープ、レコード等の棚もあった。しかし、それらの再生機は何故か見当たらない。

 隆司は注意深く歩を進めた。ほとんど無音だ。しかし、隆司は何かに脅えるように慎重だった。

「何やってんだ?」

 不意に聞こえた、揶愉するような男の声に、隆司はビクリと硬直した。

「見かけない顔だな」

 振り向くとアッシュブロンドがかった茶髪の男が、棚に右肘をついて、半分寄りかかるように立っている。やけに絵になる嫌味なくらい長身の色男だ。

 ニヤニヤ笑って隆司を見ている。多少日焼けしているが色が白い。目の色も薄い。良く見ると眉毛や睫毛も、髪の色とほぼ同じだった。

(……東条樹龍)

 昨日、吉良が教えてくれた男の名だ。

「もしかして転入生?」

 男は肘を外して真っ直ぐ立った。そうすると隆司より頭半分ほど背が高い。

「ふぅん」

 男は笑った。

「ま、どうでも良いけど、ここにはエロいやつや娯楽になるような物はねぇぞ。どっちかって言うと、文学とか、オカタイつまんないやつばっかりだ。アニメも○タルの墓とかだな」

「……PCで調べ物がしたくて来たんだ」

「学園のアイドルの3サイズとか? ま、冗談はさておき、今は授業中だぜ。判ってるか」

 隆司は無言で男を見つめた。

「俺はサボリだけど」

 堂々と言う。

「あんたは何故ここにいる?」

 隆司は困惑した。相手の意図が理解できない。

「だから調べ物を……」

 隆司が困惑しながら言いかけると、男はそれを遮るように、アッサリ言った。

「なら、いいや」

 そう言って男はスタスタと立ち去った。暫く隆司はその場に、立ち尽くした。

(な、何なんだ?)

 隆司は理解できなかった。判らなかったが、調べる内容が内容なので、人がいない方が都合が良かった。

 隆司はPCの前に座り、電源スイッチを入れた。OSの起動画面が表示される。HDDの情報を読み込み始め、それが終わって表示されたのは簡素な認証画面。

「え……っ」

 隆司は驚いた。慌てて周囲を見回した。当然ながら誰もいない。もう一度画面を見直した。IDとパスワードの認証をしないと、起動できないらしい。

 隆司は呆然とした。判らなかった。どうしたら良いのかも判らない。PCは人並みには操作できるが、知らないものはどうにもならない。

 IDとパスワードは何を入力すべきか判らない。隆司は挫折した。

(シュウならこういうの得意なんだろうけど)

 隆司がPCの扱い方を教わったのは、シュウである。事務所のシステム管理やサイト運営、サーバ管理などは、全てシュウが担当している。

 小中学生時代はハッキングとチャットにハマっていたらしい。隆司はシュウの正確な年齢を知らない。

 おそらく20歳は過ぎているだろうと思う。30歳は超えていない。中学以降の話をしないため、シュウが中卒なのか高卒なのか、はたまた大卒なのかも判らない。

 たぶん今でもシュウは、ハッキングをやっているのではないかと隆司は思う。時折シュウが、通常ならば知るはずのない情報をもたらす事があるからだ。

 しかし、シュウは情報源を口にしない。隆司も疑いつつも、尋ねた事はなかった。暗黙の了解。

 だが、本当にハッキングが必要なのだろうかと隆司は考えた。養護教諭の言い方では、誰でも自由に使える風だった。という事は、通常はそんなに難しい認証ではないという事だ。

 隆司はカウンターへ歩み寄り、中に入った。カウンターの内側の机にはいくつかのファイルが立て並べられていた。中にマニュアルと書かれた背表紙のファイルを見つけて、引き抜いた。

 インデックスにPCの起動についての説明があった。隆司は該当ページを開いた。そこにはこう書かれていた。

『PCを起動する際には、各自に支給される生徒IDカードのIDと、カード支給時に登録したパスワードを入力すること』

 隆司は愕然とした。

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