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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第十節 セントラルホール (Side:百々加)

 食堂は無人で静かだった。ちなみに食堂は、中央公共合同学生交流会館(通称セントラルホール)という、学園敷地内のほぼ中央にある丸屋根の六角形状の建物の中にある。

 食堂は3階まで吹き抜けになっている。広い長テーブルがある1階か、4~6人掛けのテーブルがある眺めの良い中2階がある。

 なお、何故か見取図・階数表示に2階は存在しない。1階の次は3階だ。

 まるで方向音痴の生徒を迷わし、惑すために設計されたのではないかと、百々加は邪推し、小さな溜息をついた。

 ちなみに階段は、建物の外側の壁面側の北と南の二ヶ所にある。東は教室棟、西は部室棟へ繋がる通路だ。

 中2階が2階のかわりだと思えば良いのかもしれないが、中2階という表示もない。今更ながら、先行が不安だ。少なくとも現時点で既に、順風満帆とは言い難い。

 隆司と恭一郎の姿は、蛇に睨まれた蛙と蛇のようだと、百々加は思う。笑わない目で、唇を歪ませ笑う恭一郎は、何から言ってやろうかと、ほくそ笑んでいるように見えた。

「所長」

「なんだい、百々加」

 恭一郎は愛想笑いを浮かべて、百々加を振り返る。

「隆司には一度保健室へ行かせた方が良いと思います」

「へぇ、何故だい?」

 眉を上げて尋ねる恭一郎に、百々加は先程の話を簡潔に恭一郎に伝える。

「なるほど。ナンパで遅刻して、僕に恥をかかせてくれたわけだ。百々加は僕のために盛装してくれたのに。許し難いヤツだな」

 別に恭一郎が頼んだからではない。恭一郎の意向を承けた友香が百々加に頼んだからだ。

 だが、百々加はわざわざ否定しなかった。隆司が驚いた顔で、百々加と恭一郎を見つめる。

 その内心を読み解くとしたら、晴天の霹靂または鬼の霍乱だろう。

(いずれにせよろくな事は考えてないな)

 百々加は思う。

「判った。あまり待たせてはレディに失礼だしな。そういう事情なら早く言え。そうしたら何とかしてやったのに」

「はぁ?」

 隆司は怪訝そうに顔をしかめた。

「早く行って看病しろ。でも余計な事はするな。羨まし過ぎる」

「…………」

 隆司は恭一郎を見つめてから、溜息をついた。

「……行ってくる」

「彼女の3サイズ聞いてこれたら許してやる」

「絶対無理。そういうのはシュウの管轄だ」

「じゃあ、今夜一晩、僕とお前のいずれかの体力の限界まで説教してやる」

 恭一郎の言葉に、隆司は嫌そうな顔になる。渋々頷く。

「……可能な限りやってみる」

 そう言って、理事長室から食堂までより更に重い足取りで歩き去った。百々加と恭一郎はそれを無言で見送った。

「無理だと思いますよ」

「我ながら良い宿題だと思うんだがね」

「宿題にしては、難し過ぎると思います」

「鉄は熱い内に打てだよ、百々加。……ところで本題だ」

「追い払うための口実ですか」

「いや、趣味と実益だ。メアドと電話番号入手よりは、難易度が低いと思うが」

「……本当に悪質な冗談がお好きですね」

「冗談ではないんだが」

 恭一郎は真顔で言った。百々加は聞かなかった事にした。

「で、頼みたい事というのは何でしょうか」

「僕の個人的な依頼だ。出資者の身でこんな事を言うのはどうかと思うが、ポケットマネーで現金一括前払いするから、シュウを通さずにお願いしたい」

 百々加は眉をひそめた。

「まさか所長が関連した内容ですか?」

「話が早くて良いね、百々加。その通り、シュウに関係ある。だからシュウには知られたくない」

「身上調査ではないですよね」

「ああ。調べたいのは主に交遊関係だが、特定の人物だ」

「私には無理だと思います」

「何故?」

「警戒されているからです」

 百々加が言うと、恭一郎は苦笑した。

「いや、僕には一番気を許しているように見えるんだが、そう言われたら仕方ないな。依頼じゃなくて、友人としての頼みという事で聞いてくれないか?」

「頼み、ですか?」

「そうだ。シュウが無茶な事をしないように、暇な時で良いからたまに連絡してやってくれ」

「それでよろしいんですか?」

「ああ。何かおかしな様子があればすぐ連絡してくれ。頼む」

「了解いたしました」

 百々加は頷いた。

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