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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第八節 真面目 (Side:百々加)

 隆司は呆然としたように百々加を見ている。百々加は舌打ちする。

「百々加……さん……?」

 信じられない、という声。その素直過ぎる反応がいちいち気に障る。

(どうせ似合わない事くらい知っている)

  だから黙らせる。それ以上は言わせない。隆司が決して嘘を言わない事を知っているから。気遣ってお世辞を言う事など有り得ない。

「黙れ」

 そう言うと、隆司は青くなった。

「す……すみません、お、俺、間違えて反対行っちゃって……」

「お前を信用した私が悪かった」

「え?」

「迎えに行くべきだった。後悔している」

「……す、すみません……」

「私に謝るな。謝るなら、オーナーとここの理事長に言え」

「えっ、ま、まさか恭一郎が!?」

「オーナーと呼べ」

「いや、それ無理だから!!」

 隆司の言葉に百々加は眉をひそめる。

「恭一郎は恭一郎だし、絶対無理だ」

「…………」

 百々加が睨むと、いつもなら青くなる筈の隆司の顔が、何故か赤くなった。

(何だ?)

 百々加は怪訝に思った。

「隆司?」

 呼びかけるとビクリと肩を震わせ、耳まで真っ赤に染まった。

「どうした」

 そう言ってからふと、具合でも悪いのかと心配になる。近付くと、隆司は慌てふためきながら、後退さる。

「隆司?」

 更に隆司は、よろめきながら後退して、背中を壁にぶつけて慌てたように後ろを見て、百々加から距離を置こうとするかのように、壁伝いに移動する。

「あ……っ、いや、その……っ」

「熱でもあるのか?」

 更に近付くと、焦ったように首を振る。

「いっ、いや、ないですっ!!」

 近付くと、額に汗の粒が浮いている事に気付いた。

「顔に汗かいているぞ」

「いや、あの、なんか暑くて! は、走りましたし!!」

「……そうか」

 納得はしていなかったが、これ以上聞くなと隆司の顔に書いてある。百々加はため息をついた。

「お前の方向音痴と、道に迷っての遅刻は今更だが、何故連絡を怠った? 最低限の義務だろう」

「ごめん。連れがいて色々あったら、つい忘れてしまって」

「連れ? どういう意味だ」

 隆司は愛と遭遇したこと、交わしたやり取りや、彼女を保健室に運んだ事などを簡単に説明した。百々加は眉間に微かな皺を寄せた。

「じゃあ、案内してやるからジュースを買って保健室に行け」

「え?」

「折角得た縁だ。何か後日、役立つ事があるかもしれない。とりあえず失礼のないよう、相手の機嫌を損ねないよう振る舞っておけ。ただし、深入りはするな。会話が出来る顔見知りの付き合いに留めておけ」

「了解」

 隆司は生真面目に頷いた。

(……真面目なのは良いが、つくづく融通の利かないヤツだな)

 百々加は思う。悪くはないが、若いくせに一体何を考えているのだろうと思う。

(小学生だって、自我や欲求はあるだろうに。何が楽しくて生きてるんだ?)

「しかし、先に理事長への挨拶だけは済ませよう。これ以上待たせる訳にはいかないからな」

「了解」

 百々加の言葉に、隆司が再度頷く。それを確認する前に百々加は背を向け、スタスタと歩き出す。百々加の数歩後に隆司がつき従う。百々加は理事長室のドアをノックした。

 秘書の女性が出てくる。

「申し訳ありません。大変遅くなりましたが、弟が到着しました」

「かしこまりました、どうぞ奥へお入りください」

 笑顔を浮かべて、ドアを開けて、奥のドアを示して、会釈する。

「すみません」

 隆司は言って、頭を下げる。百々加は目線で来いと促し、奥のドアをノックする。

「どうぞ」

「……失礼します」

 百々加は隆司の腕を掴み、ドアを開け、中へ連れ込み、ドアを閉めてから、腕を離した。

「申し訳ありませんでした」

 百々加は深々と頭を下げる。それに習い、隆司も隣で慌てて無言で頭を下げる。恭一郎は隆司の姿を確認すると同時に立ち上がり、

「本当に申し訳ありません」

 と、礼をする。

「いやぁ、別に構いませんよ。それより、お姉さん、一緒に今夜、飲みに行きませんかな」

「申し訳ありませんが」

 百々加は言う。

「残念ながら二十歳未満ですから、アルコールはまだ飲めません」

 理事長は軽い渋面を作ったが、

「僕も未成年でなければ、お供するのですが。父に申して、後日埋め合わせいたします」 恭一郎がフォローすると、黙り込んだ。

「……ふむ、そうですな」

 理事長は暫し考えてから、勿体ぶった口調で頷いた。

「申し訳ありません」

 恭一郎は笑みを浮かべて、満足そうに頷いた。

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