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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第四節 女装 (Side:恭一郎)

 恭一郎は友香と共に百々加のいるアパートへ、運転手付きの車で向かった。

「朝早くから悪いね」

 眼鏡を外しニッコリ微笑む恭一郎に、友香は絶品の笑顔を返す。

「いいえ、結構ですわ。私、楽しんでますもの」

「それは良かった」

「それよりオーナー、所長の事ですが」

「たぶん今日の昼過ぎには『寝過ごした』とか言って現れると思うよ」

「……そうでしょうか」

「バレてると知っても言わないさ、シュウは。元々無理矢理脅して引き込んだしね。大事な幼なじみのためじゃなければ、絶対僕に協力してくれなかったよ」

「今は楽しんでいるように見えますわ」

「どうかな」

 恭一郎は苦笑する。

「そうだとしても、アイツを飼いならすのは無理だ」

「ならそうなんて思ってらっしゃらないくせに」

 友香はクスクスと笑う。

「野生の猫に首輪なんて付けられないよ」

 恭一郎は首を左右に振りながら言った。

「引っかかれるだけならマシだが、噛み殺されかねないしね。ま、仕事をサボっても、戻ってくる内は問題ない」

「では、お咎めなしで?」

「咎めるとかそういう関係じゃないから。むしろ僕が彼に無理を言ってお願いしているしね」

「オーナーは所長が大切なんですね」

「そうじゃないんだ。これは最初から僕の我儘で、粋狂でしかないのさ。協力してくれる人が欠ければ、あっという間に壊れてしまう」

 恭一郎は独り言のように呟いた。

(まあ、元はたった一人を救うためだったけど。今となっては、動機なんてどうだって良いってのが、本音だな)

「元々、僕の発案じゃないんだよ」

「そうなんですか」

「ああ、オリジナルはシュウが作った」

「所長が?」

「そのシステムには負けるけど、似たような事がやりたかったんだ。幻ではなくリアルに」

「リアル、ですか」

「現実的な窓口というか、実体があるものの方が、普通一般には利用しやすいからね。クチコミや紹介制よりは、手遅れになりにくいんじゃないかと思った」

 恭一郎は苦笑を浮かべる。

「それはともかく、友香、百々加を綺麗にしてやってくれないか」

「こういう機会は滅多にありませんもの。張り切ってますわ」

 友香の言葉に恭一郎は思わず笑った。

「百々加が嫌がりそうだ」

「あの子はもっとオシャレするべきなんです」

 友香は言う。

「本当にうちは、不器用な子達ばかりで心配ですわ」

「全くだ」

 恭一郎が言うと、友香は艶やかに笑う。

「オーナーもですよ」

「え?」

「それに所長も。全員です」

「……それは世話をかけて申し訳ない」

 恭一郎は苦笑した。

「もっと甘えて良いんですよ」

「友香が恋人だったら考えても良いかな」

 恭一郎が微笑すると、

「そういう冗談はやめてくださいね」

 とやんわり拒絶される。

「やっぱり本当は恋人いるでしょう、友香」

「いません。仕事が恋人です」

「そういう事言ってると、いき遅れるよ」

「そういうのもセクハラですよ、オーナー」

 たしなめるように言われ、恭一郎は肩をすくめる。

(全くかなわないな)

 そう思って苦笑する。百々加がいるアパートに到着した。

「時間がかかると思うが、このまま待っていてくれ」

 そう運転手に声をかけると、荷物を持って恭一郎と友香は、百々加の部屋へ向かった。



 恭一郎がスーツを見せた途端、百々加は固まった。

「……それ……」

 胸元が大きくあいた上衣と、大きなスリット入りのタイトスカート。

「百々加が嫌がるだろうと思って、ミニはやめておいたよ」

「絶対嫌です」

「メイクもして綺麗にしようね」

「だから嫌です」

「ヒールとセミロングのカツラも用意したよ」

「だから絶対嫌……」

「オーナー命令だ。僕の知り合いに、見苦しいところは見せないでくれないか、頼むから」

 恭一郎の言葉に、百々加は絶句した。

「神楽坂学園高校の理事長は、古めかしい考え方をする人でね。普段の君の姿では驚かせてしまう」

「…………」

「というわけだから、頼む」

「……女装、ですか」

 百々加はがっくりしたように呟いた。

「女装じゃない」

 恭一郎は言った。

「君は女性なんだから。むしろ盛装というべきでは?」

「……あまりフォローになっていません」

 百々加がぼやくように言う。

「じゃあ、僕のためにお願いする。君の美しい姿を見せて欲しい」

 真顔で言った恭一郎に、

「……私に言わないでください」

 百々加は言った。すると、友香が、

「私、百々加ちゃんをドレスアップさせたいな。ダメかな?」

 とニッコリ笑って言った。

「……仕方ありませんね」

 百々加がため息つきながら、そう言った。恭一郎は撫然とした。

「……何が違うというんだ」

 すると友香が言った。

「人徳です」

 恭一郎は納得いかない顔をした。

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