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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第三節 モーニングセット (Side:シュウ)

 シュウは目の下に隈を作り、喫茶店の片隅で、イライラと煙草を吸っていた。

「やぁ、お待たせ」

 ニッコリ穏和に品良く笑って現れた黒髪の小柄な男に、シュウは舌打ちした。

「テメェから呼び出しといて、遅刻してんじゃねぇよ、ナリ」

「ふふ、ごめん、シュウイチくん」

 シュウはギロリと男を睨んだ。

「テメェにその名で呼ばれたかねぇんだよ」

 ナリと呼ばれた男はクスクスと笑った。

「荒れてるね、シュウ。ナツが来なかったから?」

「別にそんなんじゃねぇよ。クソ忙しいのに、急ぎの仕事ブチ込みやがって」

「で? 手に入ったの?」

 ニッコリ微笑むナリに、シュウは無言で小脇に抱えていたバッグから小箱を取り出す。それは一見、アクセサリでも入っているかのようなサイズと包装。クルクルとカールしたリボンが、デイジーを型どっていて愛らしい。

「偽装はシュウがしてくれたの? 相変わらずマメだね」

「お望みなら、簡易包装もナシに持ってきてやっても良かったぞ」

「別にどっちだって良いよ。どうせ素人には何か判らないし。バレて困るのは僕よりシュウだと思うけど?」

 あくまで穏和なおっとりとした口調のナリに、シュウは舌打ちした。

「テメェ、本当に性格悪ぃな」

 ナリはふふふ、と笑う。

「報酬は?」

「はい」

 コインロッカーの鍵を渡す。

「……今度は一体何をするつもりだ?」

 眉をひそめ、シュウは言った。

「近々花火を打ち上げようと思って」

 のんびりとした口調で言うナリに、シュウは嫌そうな顔になる。

「花火? オイオイ、随分物騒な花火だな」

「作った本人に言われたくないけどね」

 笑いながら言われて、シュウは苦虫を噛みつぶした顔になる。

「用途を決めるのは俺じゃない」

「そうやって逃げるんだよね、シュウは」

「俺が?」

 不服そうに睨む。

「案外ナイーブだよね、天才シュウくんは。そういうところは嫌いじゃないけど」

「俺にケンカ売ってるのか?」

 剣呑なシュウを見て、ナリはクスクス笑う。

「ナツからの伝言。『近い内にまた頼むよ』って」

 その言葉にシュウは呪咀のような唸り声を上げた。

「テメェ、一回死ね!」

「何故僕に言うの? ナツが君に頼んでるんだよ?」

「……俺はテメェが大嫌いなんだよ」

「知っているよ」

 唸るように言ったシュウに、ナリはニッコリ穏やかに微笑む。

「だから僕は君が好きなんだ」

「……クソ気味悪ィ、このムッツリ自虐ナルシスト」

「じゃあ、用事は済んだから行くね」

「待てよ」

 立ち去ろうとするナリを呼び止める。

「何? デートのお誘いかな」

「朝から気色悪ィこと言うな! ここの支払いはテメェがしろ」

 シュウの言葉にナリはテーブルに目を落とす。そこにはモーニングセットの空の器があった。

「可哀想に」

「あ?」

「余程薄給なんだね」

 シュウはムッとした顔になるが、抗弁する代わりに、

「なら材料費だけでなく、人件費やサービス料も上乗せさせろ」

 と言った。

「それは別。仕事紹介してるからチャラでしょう?」

 ナリの言葉にシュウはケッとばかりに吐き捨てる。

「それも人に言えない非合法のばっかりな。しかもチャッカリ仲介料取ってるだろう、この守銭奴」

「それくらいのメリットがないとね」

 ニコニコ笑いながらあっさり認められ、シュウは歯噛みした。

「クソ、やっぱ殺す」

「君がそうしたければそうすれば良いけど、ナツは悲しむだろうね」

 その言葉にシュウは鼻白み痛そうな顔になる。

「……キタねぇんだよ、いちいち」

「それが僕のスタイルだから」

「テメェのそれこそ逃げじゃねぇの?」

 すると、ずっと笑みを浮かべていたナリが急に真顔になる。

「本気の僕と遣り合いたいの?」

 瞬時に辺りの空気が凍った。

「お望みなら、今すぐでも構わないけど」

 どうする、と言いたげに冷笑するナリに、シュウは一瞬息を呑んだ。

「ま、君にはまだ無理だろうけど」

 悔しいが言い返せない自分に気付いて、シュウは舌打ちする。またナリは元の穏やかな微笑を浮かべ、財布から千円札を一枚取り出し、テーブルに置く。

「じゃあ、また」

 そう言って立ち去る背中を見送り、シュウはボソリと呟いた。

「微妙に足りてねぇんだよ、クソ野郎」

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