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The Searcher  作者: 深水晶
第二章 転入初日
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第一節 遅刻 (Side:隆司)

「うわ、まいった……」

 今日は神楽坂学園高校の転入初日。隆司は途方に暮れていた。

「おかしい。学校が何処にもない」

 しかも、同じ学校の制服を着た生徒の姿も見えない。左手の腕時計が示す時刻は8時20分。

 確か8時30分始業だと、渡された書類には書かれていた。手元には手書きの地図がある。それによれば、アパートからバイクで5分の距離だと書いてある。ちなみにアパートの鍵を閉めたのは1時間も前のこと。

「ここは何処だ?」

 現在地すら判らない。何故、学校が見えないのかは、考えたくはないし、理解したくもないが、明白だ。

 それは道を間違えたから。あるいは、通り過ぎてしまったから。だが、通り過ぎたわけではないだろうと思う。

 地図によれば、今まで走ってきた道の延長上または逆方向にある筈で、左折も右折もする必要がない。この状況で、道に迷うというのはどうかしていると自分でも思うが、迷ってしまったものは仕方ない。

 こうなったら確実な方法は二つ。1、学校に連絡して教えてもらう。2、百々加に泣き付いて、迎えに来て貰って、送って貰う。

「……いや、2は却下だな」

 やる気あるのか!と怒られて、殺されかねない。ゾッと身震いする。まずは現在地を突きとめなくては、どうにもならない。

 幹線道路らしく、車の交通量は多い。歩道にバイクを引き入れて、ため息をついた。それからゆっくりと、隆司は辺りを見回した。

 すると先程までの進行方向から、どこか見覚えのある制服を着た、茶髪のセミロングの少女が、つまらなさそうな顔で、こちらへ歩いて来る。

 この時間では遅刻か遅刻ギリギリではないかと思われるのに、少女は全く急がない。ふてくされているようにも見える。だが、遠目でも目立つ美少女だった。

(あ、神楽坂学園高校の制服だ……)

 ということに気付いた。隆司は慌てて少女に駆け寄った。

「ごめん、君……」

「ナンパは結構」

 少女はピシリと突き放す。

「私、忙しいの」

 しかし、隆司は必死だ。だからメゲない。少女の冷淡な反応など全く気にしない。

「俺も神楽坂学園高校生なんだ。学校へ行くには、どうしたら良い?」

 隆司の切迫した口調と言葉に、少女は怪訝な顔になる。

「は? この通りを真っ直ぐ行けば、左手だけど?」

 その言葉に、隆司は安堵する。

「なんだ、逆方向に来ただけか。良かったぁ……」

 隆司は嬉しさを声ににじませ、微笑んだ。

「…………」

 その顔を見て、暫し少女は無言で立ちつくす。

「有り難う」

 隆司がニッコリ子供のように笑うと、少女の頬が僅かに赤く染まった。だが、隆司は全く気付かない。

「じゃあ、俺はこれで」

 バイクのエンジンをかけ直し、車道に出ようとした隆司の腕を、少女が強く引いて引き留めた。

「……え?」

 キョトンとした隆司に、少女は言った。

「お礼に私も連れて行って」

 言われて、隆司は頷いた。

「ごめんね、気付かなくて」

 返事の代わりに少女は微笑み、隆司はその笑顔に、一瞬見惚れてしまった。

(うわ、すごく色っぽい女の子だな)

 隆司は思う。

(友香さんには負けるけど)

 永峯友香(ながみね ともか)は、サカキ・エージェンシーに勤めている。基本は事務員だが、時折『探し屋』――興信所などでいうところの調査員――になる。

 Fカップの胸の谷間を美しく見せる事にかけては、類を見ない。しかも美人で優しくて、可愛い。隆司にとって理想の女性だが、あまりにハードルが高すぎる高嶺の花だ。

 緊張しすぎて、会話一つ満足にできないくらいだ。目の前にいる少女は、美人で可愛くて色気がある。プロポーションも申し分ない。

 まるでアイドルかグラビアモデルだ。

「アイドルの五島愛(ごしまあい)に似てる……」

思わずそう呟いた隆司に、少女は、

「五島愛よ」

 と答えた。

「え、同姓同名?」

 驚く隆司に、少女は苦笑する。

「だから、本人」

「え……っ!?」

 動揺のあまり、隆司の声は裏返った。

「だから、同姓同名じゃないわ」

 隆司は真っ赤な顔になった。

「ご、ごめん」

 深々と頭を下げて謝る隆司に、愛は優しく微笑む。

「ううん、良いの。それより、早く行かなきゃ遅れちゃう」

 その言葉に、隆司は我に返った。

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