助けた仔犬は狂犬
2022年11月23日 午後8時20分
森で迷っていたらしい言語の通じない人々を自分の家へ泊め、
最初は奇妙なまでに静まりかえっていた。
今でこそ静かだが、表情などで大体意志が伝わるようになり、
少しは気が楽になったような気がする。
女性の方、名前は分からないが、凄く自分と似ているような気がしてならない。
瞳はグレーだが、透き通るように白い肌、細い指、
そして彼女の本物の黄金のよう金髪はショートヘアに切られており、自分も切って服を交換すれば分からないのではないかとさえ思えてくる。
気付くと、その女性は梳を使って自分の髪をといてくれていた。
無意識に髪を弄っていたのか。
女性「 Your hair,is very beautiful... 」
(あなたの髪、とても綺麗ね...)
なんと言っているのかは分からない。
でもきっと褒めてくれているのかもしれない。
男性「Ha, It seems like a sister. So beautiful Goddess.」
(まるで姉妹だな。綺麗な女神さんが舞い降りてきたぜ。)
右のほうで座っていた長身の男性が喋り掛けてきた。
女性「.....shut up, you messing around me?」
(...黙ってて。からかってるの?)
男性「No, With so beautiful too.」
(いや、あまりにも美しかったからつい。)
全く何を喋っているか分からないため、何もする事が出来ない。
まるで自分が人形の側になった気分。
男性「Hey,what the...」
気づくと男性は一冊の本を手に取っていた。魔理沙から借りた、
英吉利言語の翻訳本。
魔理沙がこんなものを読むとは思えないが。
女性「...What this?」
男性「...She might be able to talk if a little...Lemedy?」
(彼女、少しなら話せるかもな...レメディ)
女性「Ya...hey?」
女性がこちらへ話しかける。
女性「What, your, name?」
何?あなたの、名前。
理解出来る。あの本の言語を話す人物に出会えるなんて思いもよらなかった。
すぐに返事を返したい。
自分は言語の違う者同士の会話に期待を寄せていた。
アリス「まい、マイネーム...アリス、あ、アリス..マーガトロイドです」
女性「Margatroid...!?」
男性「really? Oh...come on!! jesus!!!」
アリス「えっ?な、何...!?」
何故か自分の名前を聞いて戸惑っている。
文法を間違えた?もしや何か不味いことを言ってしまった?
いきなりの応酬に最悪の結末がよぎる。
男性「You name is Margatroid,right?」
(お前の名前はマーガトロイド。そうだな?)
アリス「え、えっと...いぇす...」
男性「Oh,fuck crap, "Margatroid" is a UK first name!!
It is not in China and US and Russia!! it is UK!!!」
(糞が、"マーガトロイド"はイギリス姓だ!
中国でも欧米でもロシアでもない、紛れもなくイギリスだぜ!)
レメディ「Alice,My name is Lemedy Bell. I am British as you.」
(アリス、私はレメディ・ベル。あなたと同じイギリス人よ。)
アダム「My name is Adam Clinton. There are things you want to
hear a little.OK? 」
(俺の名はアダム・クリントンだ。あんたに少し聞きたい事がある。いいか?)
アリス「お、OK...」
実際にはOKしか聞き取れなかった。
一気に話を進められ、状況がどうなっているのか全く分からない。
アダム「 I drop this island. ...Where?」
(ワタシ 落チタ コノ島。 ドコ?)
レメディ「This location is the Sakhalin.」
(ここは樺太よ。)
アダム「Oh...thank you,bery much homie.」
レメディ「 Do you live, in this place, how, long?」
(アナタハ住ンデル、ココ、ドレクライ?)
アリス「 フロムザスタート ...(元々)」
アダム「What the fuck...」
二人が顔を見合わせる。何がそんなに疑問なのか。
アダム「One more question.」
(もうひとつ質問。)
アリス「はい?」
アダム「Outside live white monster. Who?」
(外 棲ンデル 白 怪物 誰?)
アリス「ホワイトモンス...白妖怪?うーん...?」
ガンガンガン!!
アリスサーン!!アケテクダサーイ!!!!!
玄関のドアが強引に叩かれ、急いだ様子で呼ぶ声がする。
アリス「ん...誰かしら?」
アリスサーン!!ダイジョウブデスカァ!!?ケイラノモノ デス!!
アリスサーン!!!!
白狼天狗の警羅隊だった。直ぐに立ち上がり、返事に向かう。
天狗ならこの人達の事で何か出来るかも知れないと考えたのだ。
と、その時。
アダム「Don't move.」
アリス「...え?」
動くな。確かにそう言った気がする。
振り向くと、男性、アダムは自分の顔に銀色の何かを向けていた。
レメディ「Adam! What the fuck are you doing!?」
(アダム!何やってんのよ!?)
アダム「Open the door. We, not here, speak.」
(ドアを開けて、私達、ココ居ナイ、話セ。)
態度が急に変わった所を見ると、追われていたのだろうか。
とすると、この二人は罪人?
逆らうと殺されるかもしれない?
小さく縦に首をふり、了解の意思を示す。
アーリスサーン!!イルンデシタラ!!!ヘンジシテクダサイ!!!!!
ドアを開ける。二人は居ないと伝えなければ、殺される?
アリス「あ、て、天狗ちゃんじゃない!久しぶり!!」
白狼1「あっ!!アリスさん!!!この家に誰かきてますよね!!?上がらせて頂きますよ!!!」
問答無用で押し入ろうとする。何か確信があるのかも知れない。
アリス「ちょ、ちょっと待って、誰も来ちゃいないわよ!」
白狼2「いえ、中に潜んでいる可能性もありますので」
アリス「潜んでるって、んな、何の話よ!?」
白狼2「先程、向こうの方で他の警羅の隊が全滅しました。
その罪人がこの辺りに潜伏しているんです」
アリス「何を根拠にそんな事言ってんのよ!!」
段々と心臓の鼓動が早まって行き、呂律も曖昧になる。
無意識に口調も荒くなり、段々とボロが出る。
白狼3「臭いです。特有の火薬の臭いでして、それを辿ってここに来た訳です。
その人物たちに仲間が大勢殺されました。お願いですから、協力してください。」
そう言いきって、家に押し入ろうとする。
最後の希望にと白狼を止め、必死に抵抗する。
アリス「お願い。今は部屋を片付けてる途中なの!後にしてくれない!?」
白狼3「...もしかして、匿ってるんですか?」
アリス「えっ......!?」
不意の図星に、言葉を返せなかった。
白狼2「中に入らせて頂きます。」
もう限界だと悟り、抵抗をやめた。
白狼が中へ入ろうとしたとき、いきなり後ろから襟を掴まれ、強引に引っ張られた。
アリス「あぅ!!」
首が瞬間的に絞められ、声が漏れる。
一気に腕で後ろへ引き寄せられ、頭に硬い何かが当てられた。
アリス「えぁ...!?ちょっと、何.....!!?」
アダム「Don't move mother fuckers!!!Or I'll shoot!!!!!」
(動くなクソッタレ共!!!さもねぇと撃つぞ!!!!!)
いきなり自分を盾にした男は英吉利語で乱暴に叫び、
持っていた"銀の物"を近くの花瓶に向けドーンと轟音を放った。
アリス「ひッ!?」
花瓶はいとも簡単に四散し、それを再び自分の頭に付けられた。
白狼3「貴様やはりここに潜んでたか!!!」
白狼1「アリスさん!!!今すぐ助けますから!!」
レメディ「Shut up!!! Calm down!!!」
(黙れ!!全員落ち着け!!!)
白狼1「武器を下げて!!!全員武器を下げろ!!!!!」
アダム「I'll kill everyone!!! Bitches!!!!!」
(全員ぶっ殺してやるこのメスブタどもがぁ!!!!!)
レメディ「Shut up Adam!! Shut up!!!!」
(黙ってアダム!!黙れ!!!!)
騒然とした場が一気に沈黙に包まれる。
全員の息が荒くなり、夜の闇に息を吐き出す音のみが聞こえる。
頭に当てられた物で強く押され、この状況に適切な言葉を喋れと
要求される。人形を操ろうにも、視界には一体もない。
第一、指を動かすなどという怪しげな行為は不可能な状況だった。
アリス「この人達の言う通りにして...」
白狼3「だけどそれじゃ、」
アリス「死にたくない...」
白狼2「............。」
白狼1「分かったわ。言う通りにする。」
アリス「Speak, "Ok. I follow orders"...」
("了解、命令に従う" 話した)
恐怖のあまりに涙が零れる。
しかし生きるため、必死で翻訳に努める。
アダム「nice. My order. "put the weapon"」
(よし。俺 注文。"武器を置け")
アリス「刀と盾を置いて...」
白狼2「くそぉ...」
白狼1「全員置け。従うの。」
白狼3「............。」
白狼全員が刀や盾を地面に置き、完全に無防備な状態になる。
何かしようとすれば目の前の人質が死んでしまう状況下、
仲間すら呼べない。
アダム「Okay,okay. Next my order." put hand on the head "
and "Toward the back"」
(オッケイオッケイ。次注文。"置手、頭上"と"後ろに向け")
アリス「っぐ...ひぐ、手...頭に置いて...後ろむいっ...てぇ...」
アダム「Don't cry.」
(泣くな。)
白狼3「この要求を飲めば、全員死ぬかもしれない...」
アダム「Hurry up!!!!!」
(早くしろ!!!!!)
アリス「はやっぐ...!!!」
白狼2「くそ...畜生!!」
白狼1「言う通りに...抵抗すればアリスさんは...」
全員が抵抗なく要求を飲んだ。
レメディ(ここからどうする気よ...!!!)
アダム「Alice,back.」
(アリス、後退だ。)
ゆっくりと暗い森の奥へと下がり始めた。
もしやこのまま人質として連れ回されるのか。どんどん目の前の味方から引き離されて行く。
まだ死にたくない。生きていたい。自由に。
そんな考えがよぎり、はち切れたように感情が溢れ出し、制御出来なくなる。
アリス「ひぐぅ、うっ、うええぇぇ...!!!」
レメディ「Don't cry Alice. you'll be free soon...」
(泣かないでアリス。もうすぐ自由になるわ)
レメディが慰めようと言葉を掛けようとした矢先、
アダムはアリスの頭から武器を離し、前にいる天狗へと向けた。
アダム「Die, fucking monsters...」
(死ね、化け物ども...)
レメディ「Adam?...Adam!!!! Don't shoot!!!!!」
振り向いた彼女が言い終わるよりも早く、
アダムは手に持っている"物"を3回打ち鳴らす。
アリス「............!!!!」
3人の白狼が全員、血飛沫を上げて目の前で倒れた。
アリスは全ての言葉を失い、打ちのめされ、絶望した。
アダム「Okay, enemy down. Let's go.」
倒れた白狼は全員、二度と動かなかった。