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東方大官軍  作者: 味噌太郎
本編
7/16

ラージスケール・ランディング

2022年11月23日

日本時間午後12時03分:宗谷海峡-樺太沿岸から南方200m地点


外の人間は目の前に居るだけでなく、強大な軍隊を引き連れていた。


米軍第七艦隊、第76任務部隊。

この星の半分を統治する圧倒的な兵力を持つ艦隊の一部が、

既に目と鼻の位置で上陸しようとしていた。

10隻程の艦船が海岸すぐ近くで漂っている様は、とてつもない威圧感を覚える。


妖精「何あれぇ...?」

チルノ「おおぉー!?やべぇー!!!」


皆が驚嘆の声を上げている中、

一人だけ恐怖を抱いている者がいた。


白狼「た...大変だ...妖の逆鱗に触れた...!?」


御用天狗である白狼は事の頓末を知っている。

怒らせた。そう、完全に怒らせた。

あいつは今にもこちらを睨んでいるのではないか?とさえ感じる。

青い顔の白狼は急いで山へ知らせに飛んでいった。




第七艦隊CTF-76,旗艦「ボノム・リシャール」強襲揚陸艦ドック内


ウェルドック内では上陸の為、整備を終えた兵士達は続々と車両へと搭乗していた。


『よし、M2は装填したぞ。さっさとやっちまおう。』


その中の一人、ジョン・バートレットは、装輪装甲車の機銃装備を装填していた。

程なくして装填し終わり、車上から飛び降りる。


ドックマスター《『これよりドックゲートを解放する。各員は所定の車両へと搭乗しろ。』》


艦内放送が流れ、ゲートが開かれて行く。

バートレットが車内へ入ると、

周りのボートを吊り上げたクレーンも動き始めた。


『遂に初仕事だぜ、心臓バクバクだな』


隣の黒人の男が話しかける。

ジェイク・ジョンソンだ。

同期で入隊したのだが、暴力沙汰を起こしバートレットとは3つも階級が離れている。

バートレットは一等軍曹、ジェイクは伍長だ。


バート『今のうちにバクバクさせとけよ。

    もう後どれくらいこの心臓が動けるかわからないんだぜ』


ジェイク『相変わらず悲観が好きなこった。

     揚がったら片っ端から撃ってくだけじゃねぇか。バキュンバキューン、ってな』


ジェイク随分な余裕を見せて笑い飛ばした後、拳銃のトリガーを引いて遊び始めた。


ジェイク『バート、お前は一等軍曹なんだぜ?もっとどっしりとした態度で挑めよ』


バート『そいつは百も承知だぜ。ただ、

    敵がどんな兵器をあの島に運び込んでいるかって情報が全く無いのが不安なんだ』


ドック内に水が流入し、他の兵士達が乗ったボートが水面に落下する。


兵士1『ウォーイ!!』

兵士2『マジでビビったぁ!』



ジェイク『だから今言ったろ。片っ端から撃ってくだけだ。見えた敵が何だってな。』


ジェイクはそう言い射手席に着き、モニターの電源を入れた。

エンジンを掛け、前の二隻に続いて発進する。

周りの車輌も次々にエンジンを掛け、ドックの外へと進んでいく。


バート『よーし!海岸線を制圧しろ!!前哨陣地を確保するんだ!!』


無線で自分の小隊へと指示をする。

他の揚陸艦からも、ボートやヘリコプター、戦車を運ぶLCACなど

が我先にと突入していた。


ジェイク『うおっ!!LCACってあんな速いのかよ!?』


ホバークラフトであるLCACは50tはあろう歩兵戦闘車を積んでいながら、

自分たちの乗っている装甲車両を抜き去って一番に辿り着こうとしていた。

後部プロペラの爆音と暴風で周りの声が聞き取れなくなる。




「ん?な、なんかこっち来たぞぉー?」


妖精1「これ...絶対危ないよ...!!」


妖精2「とりあえず逃げよう!!」


「じゃあ、あたいは気になるからちょっとだけここに居る」


目の前の異常な事態を全く危険と見なさず、観察したいと言い出す少女が一人。

周りとは違う青い色をした妖精、チルノ。


妖精1「チ、チルノちゃん、ダメだよ!」


チルノ「あたいはさいきょーだから、これくらいは大丈夫よ」


妖精2「でも...」


何か言おうとした時、上空をアパッチ攻撃ヘリが通り過ぎる。

轟音がより一層大きくなり、暴風で髪が乱れる。


妖精1「と、とにかく行こう!!チルノちゃん、絶対気を付けてね!!」


妖精がもう一人の腕を引いて去っていく。チルノは腰に手を当て、腕を振って見送る。

見送り終わったところで木陰に隠れ、振り返って目前の事態をまじまじと見つめていた。

まだどの車輌も上陸しておらず、200mほど離れたところで水しぶきを上げながら迫っている。


チルノ「全員相手にして、あたいがひねり潰してやろうかしら」


自信にあふれた笑みを浮かべながらそう呟いている時、相手にも動きがあった。


アパッチガンナー《『こちらドッジ1-1、IR映像からの敵影は皆無。』》


チルノはIR、つまり熱感知映像には写らない。

熱を放射していないからだ。


指揮官《『サーマルカモフラージュされた車両が潜んでいる可能性がある。

     地上部隊は数発TOWミサイル及び40mmを発射しろ。』》


バート『こちらチャーリー、了解した。制圧射撃を開始!!』


バートレットの合図と共に、周辺の車輌が一斉に海岸線に向けて掃射を開始した。

別の部隊車輌も同様である。

砂浜、そしてその先の森の木へミサイルやグレネードが雨の様に降り注ぐ。


チルノ「うわ!!弾幕...!?じゃ...ない...!?」


目には見える。地面や木にも命中している。

しかし、普通の弾幕と違い、白い尾を引いて飛んでくる。着弾時に爆発だって起きている。

訳の分からない状況に目を回す。変な汗も出る。

その時、目の前に一瞬だけ、飛んできた物が見えた気がする。


ボゴオオォォッッ!!!


チルノ「あーーーーーーーーー!!!!!」


アムトラックの40mmグレネードが見事に顔面に命中し、

文字どうり吹っ飛んだ。いや、蒸発したと言う方が正しいかも知れない。


ジェイク『ヴィーーーーー!!!くたばれ糞野郎どもォーー!!!』


副射手『ぶはは!! まだ糞野郎は見えてねぇぞー!!』


バカスカと同軸機銃を撃ちながら、

モニター相手に叫ぶアドレナリン全開のジェイク。

当の本人は敵が見えなくても撃ちまくっているが。


ほどなくして上陸し、先に揚がっていた複数のLCACから歩兵戦闘車やハンヴィー、

さらにはM1A3主力戦車までもが出現してきた。


ベノム汎用ヘリやアムトラックから大量の兵士が降車し、

短時間で海岸には500の兵士に25以上の車輌が上陸。

ここで拠点を作り、北上して南樺太へ「救出」しに向かう流れになる。



...................................


同時刻:魔法の森の外れ


レメディとアダムは未だに雪と氷で凍てつく森をさまよっていた。

20日の襲撃から3日も経ち、弾薬、食料共に残り僅かとなっており、

これ以上の襲撃にはもう対応出来ない状況となっていた。

特にレメディはスコットや他の仲間を失い、既に生気など消え失せていた。


アダム『そういやさぁ』


アダムが沈黙に堪えかねたのか、レメディの背中に向かって会話を持ちかける。


アダム『前から気になってたんだが、お前のその銃、45口径だろ?

    ...ヘリコプター乗りが何でそんなもん持ってんだよ?』


問い掛けるも、レメディは振り向かない。再び沈黙が始まる。

アダムは機嫌を損ねまいと色々試行錯誤している様だ。


アダム『んだよコイツ...。いや、別に俺がベレッタなのにお前はガバなんておかしいとか、

    そういうのじゃなくて純粋に気になったんだ』


相変わらずアダムには顔を見せず、レメディが口を開く。

アダムに聞こえないよう、小さくため息を吐いてから答える。


レメディ『...別に。ただ使い易かったから持ってるだけよ。』


アダム『...ま、身を守るなら使いなれた銃が一番だしな。

    特にあんたは女だから、ハンディキャップを埋め合わせないと持たないだろ?』


レメディ『...女だからとか、そういうのは止めて。それは偏見よ』


蔑むような口調で指摘する。


アダム『おっと...すまんすまん』


レメディ『... ...。』


アダム『..........。』


再び、沈黙。アダムはもう何度目かとうんざりしていた。

また何か話題を出そうと考えていると、


レメディ『私さぁ』


アダム『ん??』


なんと初めてレメディの方から話しかけてきた。

アダムが何の話題かと期待し、注視する。


レメディ『喋りながら行動するの面倒なのよね』


あー、そっちですか。そうですか。アダムはそんな顔になり、

ばつが悪そうに後ろ頭を掻く。


そんなやり取りの最中、少し遠くに何かが立っているのが見えた。

やけに派手な色の服。こちらに気付いたらしく、手を額にあててこっちを見ている。

二人は一気に脂汗をかきはじめ、立っている何かから目を離せなかった。


レメディ『でた...?』


アダム『あ...ああ。でもまだ撃つなよ...構えてろ...』


銃口を向けたまま、動けない。

今まで散々訳の分からない物に出会ってきたため、

得体の知れない者はモンスターだと思う様になってしまった。

だからこそ、銃を持っていても目の前の"何か"に怯えて、全く動けなくなったのだ。


アダム『...誰だぁ!!!!!!!!』


痺れを切らしたアダムがその"何か"に向かって叫ぶ。

しかし分かりきっているように、その相手に英語は通じない。

レメディは動じず、何時でも撃てるよう銃口をずらさず、見据えている。

相手はまだ動きを見せない。


アダム『レメディ、ゆっくり近付くぞ...』


レメディ『ええ...ええ...』


アダム『フザけやがって...頭を吹っ飛ばしてやる』


恐る恐る近寄っていく。敵はこの一人だけでは無いのは分かっているが、他に全く注意を保てない。

少し近寄ったところで、その相手は向こうの方へ駆けていってしまった。

思わず安堵し、力が抜けて行く。


アダム『今のはなんだってんだよ...?』


レメディ『もしかして、ただの民間人だったとか...?』


アダム『何寝惚けてんだ、このエリアには人は住んでねぇ筈なんだ...工作員か何かか?』


レメディ『工作員かって...一寸前の奴も工作員だっての!?

     あんな...魔法使いみたいな攻撃をする奴が!!?』


アダム『姉ちゃんよぉ、落ち着け。現実を見ろ。

    あり得ねぇもん見ても、その後の物はなるべく自然な物として見ろ。

    感化されてっと、頭がおかしい奴みたいだぜ』


レメディ『でも...あれは』


「あの...」


いきなり聞いたことのない言語で背後から囁かれ、

二人の背中に戦慄が走る。


アダム『うがああぁぁぁぁ!!』

レメディ『!!!!!!』


「ひゃっ.....!!!?」


二人が物凄い勢いで振り向き、銃口を向けた先の人物--女性が頭を屈めている。

いつの間に後ろに回り込んだのか。


その頭を屈めた状態の女性を見た二人は、銃口を逸らし中立だと判断した。

見た感じでは武器は持っていないようだが、やけに服が派手だ。


攻撃されないと気付いた女性は、屈めた頭を上げ、口を開いた。


「あの...もしかして、迷ってますか?ここで」


レメディとアダムは横目で顔を見合わせる。

何せ何処の言語かも分からない言葉で話しかけられたのだ。

現時点で敵ではないにしても、対応できない。


レメディ『えと...うーん...(Well...aah...)』


女性「うぇる...?」


アダム「...미안 해요. 나는 한국어를 할 수가 없습니다.」

   (すみません、私は朝鮮語が話せません)


アダムが朝鮮語で伝えようと試みると、

レメディは目を丸くして見つめていた。


レメディ『え、何よ、あんた中国語なんて話せるの?』


アダム『いや朝鮮語、それに俺はこれ以外喋れん。...だが朝鮮人じゃないな、通じてない』


聞いたことも無い言語で話す目の前の二人を見ていた女性は少し混乱している様で、

全く介入することも出来なかった。

が、意を決した様に目つきが変わる。


女性「あ、あの」


二人『?』


二人の視線が女性の方へ集中する。

女性は手で招き、白く雪で染まった森の中をゆっくり歩いてゆく。


アダム『シッシッって...んだよアイツ、失せろってか?』


レメディ『いや、ついて来てって言ってんのよ。行きましょ』


アダム『ハァ?何でそんな事が分かる?』


レメディ『あのねぇ、私は日本に駐留してたのよ!?こっちの文化くらい判るわよ!!!』


あまりに鬱陶しくなったのか、強く主張する。


アダム『お、OK。じゃあ文化担当、任せるぜ』

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