大義は完成
-1:露幻-
2022年11月21日:アメリカ合衆国-国防総省
『20日には偵察任務に着いたF-15が1機撃墜され、
先ほど救助部隊も全滅したとの連絡が入りました』
ペンタゴンでは、樺太での一連の緊急事態を受け、
臨時でブリーフィングが開かれていた。
中佐『...北朝鮮はどさくさ紛れに樺太まで狙っているのか?』
大尉『いえ、そうとは限らない様です。』
そう言い、説明を行っていた大尉官はノートパソコンを弄って
プロジェクターへ画像を映し出し、指揮棒でトントンと指し示した。
大尉『この衛星画像は救助チームからの要請により撮影した物です。
ここに町らしき物が見えます。...それだけでは有りません。』
再びパソコンを使い、別の衛星画像を表示する。
大尉『今出した衛星画像は1週間前の樺太の画像です。地形がこの画像とは変わっています』
2つの画像は良く見なくても分かるほどに違っていた。
森が有るところ、山が有るところ、竹林が有るところ...
中佐『....つまり何が言いたい?』
大尉『軍事的問題だけでなく、何か地理的な異変が起こっている可能性が』
中佐『ここはどの辺りなんだ?このエリアは人が住んでいない筈だが』
大尉『ユジノ・サハリンスクから南南西84km、ラペルーズ海峡の近くです』
『あり得ん...』
『どうなってる?』
場内は騒然とし始める。
するとその中から、腕に金の鷹のバッジを着けた人物、大佐が発言した。
大佐『大統領へ報告し、軍事作戦の展開を宣言してもらおう。
民間のメディアと周辺国には北朝鮮に占拠された島を奪還する、という方向で固めるんだ』
会議は一気に賛成の流れへと雪崩れ込んだ。
...
所変わって繭のパーツを運んでいた少女達は、
やっとの思いで目的地、香霖堂までたどり着いていた。
もう外は夜になり、風が吹いている。
射命丸は余程疲れたのか、膝を抱えて眠っている。
魔理沙「...燃料を運ぶ道具ゥ?」
霊夢「じゃあ、これ只の入れ物...?」
「いや、これは対になる道具を持っていれば、繋げて長く使えるようになる。
一々給油するのが面倒ならなお便利だ」
白髪で眼鏡を掛けた、かといって老けている様子の微塵のない青年は
もとより知っていたような口ぶりで話す。
彼の名は霖之助。道具の能力を的確に当てる不可解な力を持った人物であった。
霊夢「霖之助さん、これは河童達が造ったんじゃ無いらしいの。
河童は人間には作れないって断言してたんだけど、霖之助さんは...誰が作ったと思う?」
霖之助「是非とも答えておきたかった質問だ...
僕が思うに、これはやっぱり人間の物なんじゃないかなあ」
魔理沙「...人間がこんな物を?悔しいけど、にとりの言った通り
人間がこんな物を作るなんて私は考えられないぜ」
霖之助「そうかな?これは何時の日かに僕が見た外の世界の夢だが、
ひとりでに走る沢山の籠、大きな音を鳴らして大空高くに飛ぶ人工の鳥...
今でもあの感覚は夢じゃ無いんじゃあないか、なんて考えてる。
こいつもそれの感覚に良く似てる。」
霊夢「音を鳴らす人工の鳥...」
霊夢は何かが引っ掛かっていた。
霖之助の夢の中の人工の鳥、
射命丸が出会ったという轟音を吐き出す怪鳥、
そしてこの人工的な落下物...
霖之助「ん、どうしたんだい、霊夢?」
霊夢「...やっぱりこれは異変よ。」
魔理沙「え...?じゃあ...まさか本当に...?」
霊夢「ええ...」
人間が外から入って来てるわ。